まず最初に。検索で初めて私のブログにおいで下さったお客様,早々ににお立ち去り下さいませ。あなたの望む情報は一切ありません。むしろ大変なモノを見る羽目になりますぜひっひっひ。
というわけで,先日の巡検で撮った写真の残りから,適当にピックアップしてこのネタを終えようと思います。久しぶりの遠出だったし,たまたま涼しい期間だったので気分よく撮りまくって参りました。
甲斐の山々,見事でございました。3000メートルクラスの山が筑波山レベルの山々の後ろにどかんどかんとそびえる光景は,茨城では考えられません。これだけでああ眼福眼福。
鳳凰三山だそうです。走る車中からとていい写真は撮り損ないましたが,地蔵岳のオベリスクがちょこんと見えてます。
甲斐駒ヶ岳。照葉樹林帯から高山帯までの植生変化が一目で見えるアングルもありました。こんな山があるんだなあ。
櫛形山。低い山じゃのう,と思ったら2000メートル。だめだ,茨城県とは尺度が違いすぎる。ちなみにこれも,太平洋の彼方からやってた「海山」です。丹沢や伊豆半島と同じ。こいつらがぶつかってきた衝撃が日本アルプスを作りました。
八ヶ岳! 大好きです。いわゆる南八ヶ岳の名峰たち。右の尖っているのが赤岳,真ん中の崩れ気味なのが権現岳,左の丸いのが編笠山。こんなのを毎日見ながら生活できるなんて。
そして……もちろん霊峰富士。甲府盆地からの,しかも夏の姿はいまいち感がぬぐえませんが,富士が見えるだけでありがたい。
初日の山登り。山の人には珍しくないでしょうが,こんな谷渡りもスリルでした。
糸静線の東側の火成岩。フラッシュ焚いたらこんな色に写ってしまった。
向かい側の台地,実は大昔の八ヶ岳からの火砕流,もしくは岩屑なだれの堆積物です。山からの距離は50キロあるのですが,数十メートルの厚みで堆積してます。もし人の町があったなら大変なことになっていたでしょうね。日本各地に,これからそうなる場所があります。忘れてはいけません。私たちは,とてつもないスリルと危険に満ちた大地に暮らしているんです。
貝化石の露頭。ここは採集禁止。もっとも,このレベルなら茨城でも採れるんじゃないかな。
イタヤガイ。
ツノガイ。こんなものたちが大昔のどんな海でどんな暮らしをしていたのか,考えるだけで楽しくなります。
富士川の河床で地層の観察。級化構造,火炎構造,岩体貫入,斜交層理などなど,教科書にあるような構造が一通り見られました。
四万十帯の粘板岩。層理があまりに美しくて,おみやげに拾ってきました。
2泊目の夜,アゲハモドキが灯りに惹かれて来てました。これで蛾なんです。いやそれも人間の身勝手か。
熊が。
ほぼ埋まってしまった西山ダム。南アルプス周辺は山の崩壊が激しく,ダムはみるみる埋まっていくそうです。なんでかというと,南アルプスは今でも隆起を続けているから。年間3ミリほど。たかが3ミリと笑うなかれ。千年で3メートル。地質学的には驚異的な数字です。日本列島は今でも活動を続けているのです。この長く継続する営為の前に,人間はなんと無力なことでしょう。
そのダムにできた中島に,なんとも美麗なシラカバ。人のなしたものを軽く笑い飛ばしてます。
それでも人の経済活動は続く。「地図に残る仕事」……実はこれ,リニア新線の工事。愚かしくも醜くも政治が絡んだ結果として秘密主義が徹底しているのですが,実は先進導坑だか斜坑だかの工事はもう進んでます。リニアは南アルプスをトンネルで越えていきます。というかその路線のほとんどが地下。斜坑工事だけでもう膨大な土砂が掘り出されていて,処理しきれずあちこちの河原に野積みになってました。それでも坑口のある市町村は大いにうるおっているのだとか。なんか嫌ですね,といっては大人げないですか。
技術の粋を凝らしたリニア超特急です。願わくばこんな野の花に笑われる羽目にならぬことを。
すっかり寂れた十谷の町のお寺の観音様。人の世の盛衰を見つめておられます。
十谷の町の立派な門構えの家。早朝で入ることはかないませんでした。再訪を期して。
十谷の空き家の庭先に朝顔。人の世が終わった後には,こんな風景が広がるのでしょう。
最後に,初日に受けた駿河の国の洗礼の話を。
新露頭に登っていく途中でした。足元の岩屑が動いたように見えたので除けてみたら……
で,出たあ。ヤツワクガビル。生まれて初めて,動いてるのを見ました。茨城には生息せず,とてもテレビで放送できる代物でもありません。10センチ以上ありましたが,一説には30センチクラスもいるとか。ぐええ,気持ち悪い。かなり素早く動き,力も強い。人間とは一切干渉せず,ミミズを食べて暮らしているのだそうですが,もうその存在自体が脅威です。そうか他国にはこんな生き物もいるんだ。
早川いくを大先生が名著「へんないきもの」で「C級怪奇映画で主役を張れる」と絶賛された怪生物です。いつか見たいものだとは思っておりましたが,まさか地学巡検で遭遇するとは。せっかくなので早川先生の名調子を少しだけ。
このヒルの実際の主食はミミズ。でかい管が細い管をのたうちながら呑み込んでいくという,胃袋のあたりが酸っぱくなってくる食事風景だ。ラブラブなカップルが手をつなぎ,ランラランとハイキングに行ってこんなものを見た日にゃ2人の恋も終わりだろう。
早川いくを「へんないきもの」バジリコ株式会社2004より
おまけ。
ネットでクガビルを調べようとしたら,「クガビル根付(捕食中)」の通販を見つけました。これ作った人,絶対気が触れてます。大好き。