こう色々なものを見聞きしながら生きていると,脳の片隅に妙にこびりついてるものがあります。
今朝新聞の番組欄を見ていて…… あ,深夜アニメに見逃しはないかというチェック笑ですが,テレビ東京の深夜枠に「ファイヤーフォックス」の名を見て脳の辺縁系がピクリと反応,次の瞬間にはあのテーマソングが脳内に鳴り響いておりました。
日本版の映画ポスターはセンス最悪なので洋モノで。
小説「ファイアフォックス」が原作の映画です。1982年,主演・監督・制作クリント・イーストウッド。一時銀幕から遠ざかっていたイーストウッドの復帰第一作で,彼の映画では最高の収益を上げたそうな。
あらすじはまあ一言です。ソ連が開発した超高性能の新型戦闘機を盗み出す,ただそれだけ。冷戦時代を知る皆さんからはこれだけでツッコみが入るでしょう。
冒頭,心に傷を負って隠棲生活をする主人公の元に使者が来ます。これ! このワンパターンが肝要なのだ。すでにしてイーストウッドのおなかはタプついていましたが,誰がどう言おうがヒーローは迎えられねばなりません。
以後映画前半のスパイサスペンスなシーンは,申し訳ないけど何ひとつ憶えちゃあいない。数十年経っているから許して。この作品の見どころは,後半の飛行シーンなのです。
主役メカ,ミグ31・コードネーム「ファイヤーフォックス」。最高速度マッハ6,完全なステルス性,武器管制は思考制御。盛りまくった設定はフィクションならでは。原作者は当時世界最高性能と騒がれたミグ25が函館空港に強行着陸した事件に着想を得て書いたそうで,作中のデザインもその発展型のようなものでした。ところが映画ではSR-71のようなデルタ翼に先尾翼を付けて各所をステルス風にアレンジした独創的なものになりました。これがカッコいい。
…… 間違えた。これはミグ29とプーチン。
公開当時も飛行機マニアからは否定的な意見がありました。でも原作のままでは少なくともステルス性能が説明できません。当時はまだステルスという概念がよく理解されていなかったにも関わらず,それが正しく反映されたデザインだと私は考えます。何より実に未来的,言い方を変えればフィクション性が素晴らしい。そのまま特撮の地球防衛隊の戦闘機になると思う。じっさいにマットアロー1号はこれを参考にしたそうです。でもこっちのほうが何倍もカッコいい。
で,これが飛んじゃうわけです。澄み切った北極海を。飛行機映画はたくさん見たけど,このファイヤーフォックスの飛行シーンの空ほど美しいものを見たことはありません。青空と雲とが織り成す壮大で奥行きのある,それだけでひとつのドラマが生まれそうな空。天界を駆け抜けるような神秘性すら,映画館の大画面を見ながら感じてました。
埋め込みの画面で迫力はないけど
最高収益と先ほど申し上げましたが,実はこの飛行シーンの空撮と合成におカネが掛かり過ぎて,もうけはあまりないんだそうです。漢オトコだぜイーストウッド。ツッコみどころも色々とありますよ。おカネ掛けた割にはこの合成,見た当時ですらいまいちだなあと日本の特撮を見慣れた目には感じられました。ファイヤーフォックス(の実物大模型)が氷原を滑走するシーンでは先尾翼が振動でビヨンビヨンと上下するし。
でもとにかく他の凡百を超えて,私の記憶に残る映画です。今夜の放送,もちろん録画します。イーストウッドの声は,おおお山田康夫! 私の世代にはイーストウッドと言ったら山田康夫。あの声で見るこの映画,どんな感想になるでしょう。
感想は,記事にしません。ソコは大切にしたい部分です。
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