雨の日曜日。
結構な降りでしたが,午後には収まるとの予報を信じて午後二時過ぎに出だします。
雲湧く山越えの道から
遠い西空の黎明が見えてきました。雨もみるみる小降りに。
ここは御岩神社。いつもの鳥居下のコーヒーを楽しみに来たら,今日は回向祭えこうさいの日で,昔からのテキヤさんが店を出すので新参のワゴン売りは無しだって。あうう。せっかくなのでお参りだけして行きます。ちなみに回向祭というのは,明治以前の神仏混淆時代からの伝統行事で,宗教・宗派を問わずに祖霊を供養するんだそうです。
雨雲の下,陽も傾いた刻限で境内は暗く,参道の灯が明るく見えます。
雨を含んで鮮やかさを増すコケのまにまに,埋もれるようにわずかな他の植物たち。
その中に,小さな小さな花を咲かせているものがありました。キク科のキッコウハグマです。亀甲白熊と書きます。普通はもっと大きな草姿なのですが,暗い緑陰の小径で十分に育つことができませんでした。
十円玉と比較。哀れなほど貧相。花の直径も1センチに満ちません。
それでも必死で花を付けました。他のキッコウハグマはしずく降る中で花を閉じたままです。この株だけ開花。本当に必死なのでしょう。
「テルーの唄」に,雨の降りかかる岩陰で誰にも愛でられることなく咲く花の哀しさが唄われていました。「討匪行」という,雨の中で過酷な任務に就く兵の哀しさを描いた古い歌でも,秋霖に濡れる秋草の花に兵の心情を託していました。冷たさを増す雨に打たれながら,それでも日々の営みを続けるしかない哀しさ。植物だろうがヒトだろうが,過酷な運命を生きねばならぬ者がいるんです。
水戸に帰り着いた時がちょうど日没でした。明日は晴れそうです。
…… ずいぶんと風が冷たくなったことに気付きました。
皆に幸あれ。
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