今年も水戸のニッコウキスゲの無事を確認いたしました。
高地や北方の冷涼で湿り気のある草原に群生し、初夏に大輪の黄色花を開く。一つの花は1日でしぼむが次々とつぼみが開くので花期は長い。三国沼、霧降高原、雄国沼の群落は有名。
北方型のエゾゼンテイカ、日本海の離島に分布する島嶼型のトビシマカンゾウ、東京都西部の一か所に隔離分布するムサシノキスゲなどの変種がある。
これが茨城県では、県北山地の高所に点々と分布するほか、水戸市や東海村の低地にも生きてます。低地のはたぶんムサシノキスゲ同様、北に去った一族から取り残され、温暖な気候に適応して生き延びた遺存的な一群です。県内でこういう分布をするのはサクラスミレやザゼンソウ、ナガハシスミレなど。ムサシノに関してはDNA解析で高地のものと差異があることがわかってますが、水戸のゼンテイカについては知りません。
↑ これね。
さてその水戸の。西部の丘陵地に一か所、生育地があります。何とはなしにそぞろ歩いて、偶然に一面黄色の群生地にまろび出たときの驚きったら。私にはよくこういうフィールド運があって、そのたびに「呼ばれた」と考えます。ただし新発見ではなく、植物関係者には知られた場所でした。地主の方の話では、以前にこれはニッコウキスゲですよと告げていった人がいたそうです。
近年、著しくその数が減りました。盗掘されたのだと思います。このまま絶滅してしまうのではと不安になって周辺を探し歩いたことを記事にしたのが一昨年。
今年も、群生地の斜面では無事開花していました。私有地ゆえ盗掘を免れてます。良かった。
嬉しいことに、一時姿が消えていた他の場所にも開花個体がありました。盗掘を免れた小さな個体が力を蓄え、開花にこぎつけたのでしょう。自然って案外ヤワじゃない。見守っていこうと考えます。
先日は、関東の県庁所在地が軒並み25℃越えの夏日でしたが水戸は21℃。海からの東風が心地良かった。水戸や東海村に遺存植物が多いのはこういう気候のおかげかも知れません。
ゼンテイカが生きるこの地は他の野の花も元気です。
ハンショウヅル。野生のクレマチス。
たぶん野生種の、アヤメ。
この地域は、かつては純農村の里山でした。しかしまがいなりにも水戸市内。都市化、開発の手が迫ります。非力なこの身ですが、せめて記録だけはしっかり残したいと思います。
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