しばらく花の写真を撮りに行ってないなあ,と過去の写真フォルダを見ていて気付きました。つい数年前までは,この季節にもう少し心の余裕があったのでしょう,けっこう山を歩いてます。
その中でちょうど5月末の今頃,大子だいご方面で出会ったものを2つだけご紹介します。
カザグルマ。日本の野生の草本の花としては最大級の大きさ。こんな大きな花が野に咲くのかと外国の人が驚く日本の誇りです。ホントでかい。目立ちすぎるのがアダとなっておっさんおばさんに乱獲され,レッドデータになってしまいました。これと中国産のテッセンを主な母種として,クレマチスと呼ばれる一連の園芸種が作られています。
実は水戸にも東海村にも自生があります。タチの悪い人に見つかったら最後です。この大子のも含めて,どうか誰の眼にも触れませんように。
別の場所で紫花のも。
こんな花を咲かせる株がありました。カザグルマはがく片(花びらに見えるもの)が8枚,テッセンは6枚……のはずなのですが,はてこれは。天然の変わりダネだとすると,園芸種の母種にしたら面白そう。
ニッコウキスゲ。「ゼンテイカ」が正しい名ですがこの方が通りが良いもので。本県最高峰,八溝山の山頂付近に群生しています。ただし誰かの手による植栽です,残念ながら。
これまた水戸と東海村に自生地があります。もっとも,浅薄な分類学者が流行りのDNA解析で低地のこれは別種であるなんていつ言い出さないとも限りません。困ったものです。
茨城県民でも,実は八溝山に来たことのない人がたくさんいます。とにかく道のりが遠いんです。本当に春の花が美しい山で,茨城で一番安全にたくさんのニッコウキスゲが見られる場所なのですが……人が多いのは嫌いなので,まあいいか。
おまけに,アヤメの花。ハナショウブやカキツバタと混同して湿地の植物と思っている人が多いけど,実は乾いた草原の花です。県内各所で,雑草のようにというか本当に雑草として生えてます。こんなに美しいのに,というのは「雑草」への偏見ですね。
春の花はみな花期が短くて,最近は見逃すことが増えました。他県でも見に行きたいものはたくさんあるのですが,ただ慌ただしい日々ばかりが過ぎていきます。
いつか。
2月末の九州南端に立つ私がいます。太陽を背に首を巡らせて,水色に光る北東の空を目指して旅が始まります。少しずつ,少しずつ。浅い春を追って,春の儚い花々を追って。それぞれの土地で移り行く季節をカメラに収めながら,ゆっくり,ゆっくり。そして3か月後,オホーツク海を望む浜辺に立ったとき,私は何を想うのでしょうか。
そんな生活を,私はしたかったのです。