ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

春,きざす

 

 とりとめのないお話を。


 先日,標高450メートルの山中の沢に漬かってきました。数年前から続けているカエルの調査です。その件に関してはまとまった時点でこのブログでもお知らせします。とにかく久しぶりの生物のフィールドで,少し浮かれてしまいました。


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 陽射しがずいぶん暖かくなったことに驚きます。長靴で沢に入ることが苦ではありません。沢には生物の姿があふれてます。春のきざし。そうか春なんだ。永いながい冬が,もう終わったんだ。


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 ミヤマカワトンボのヤゴです。まだ眠たそうな顔。


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 サワガニ。まだ動きが鈍い。


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 カワムツの類の稚魚でしょうか。魚類も不勉強で,お役に立つことが言えません,はい。


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 なんでこんなところを歩いてるんだろう。


 さあ生物屋再始動です。冬の間過去の写真や鉱物ネタでブログを食いつないできましたが,そろそろ本業の生物をお話しができるかと。虫好き,花好きの皆さん,どうかお楽しみに。


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 おまけ:この写真は何かというと,横から見た阿武隈山地なのだ。まっ平に見えるでしょう? 実は山もあれば谷もあります。ただピークの高さが揃っているので,横からだとそれが重なって平らに見えるんです。「隆起準平原」といって,かつて海底だった名残り。何万年もかけてこの高さに。地形の面白さは,その土地の歴史を読み解く面白さだと思います。生物もしかり。

 

 

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ラヴクラフト「忌まれた家」異聞

 

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 私のブログでえらく人気のないオカルトものです。興味のない方はご退出くださいませ。

 


 家を新築した時のお話です。


 とにかく古い家を土台から消滅させるので,完成するまでの半年間どこかに居を移さねばなりません。幸いひとつ向こうの路地に状態のいい空き家があって,父がその持ち主を知っていたこともあり格安で借りることができました。


 そこら辺の交渉は父に任せていたのですが,話が決まって実際に家を見に行ったとき。


        うっ。


 これは…… アレだ。いけないヤツだ。

 

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 むかし,借家探しで不動産屋さんの車に乗って何軒か見せてもらったとき。ココです,と車が停まってその物件を見た瞬間。あ,ココはいいですと車からも降りなかったことがあります。

 

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 なんというのでしょうか,日当たりとか無関係に,どよーんと建物にまとわりつく空気の色。瘴気しょうきとしか言いようのない不穏な雰囲気。ホラー映画で惨劇の舞台となる家が最初に出た時の,あの画面。

 

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 いえ,のちにそこが人死にの出た家と判明したなんていかにもネットっぽいオチはありません。その時にごく個人的に感じただけ。でもとにかく絶対に踏み入りたくない空間が,そこにあったんです。


 そして今私が対峙しているのもそんな空気をまとった家です。半年間,無事に過ごせるだろうか。

 

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 案の定,足を踏み入れたその日に家族が足にケガをしました。十年来飼っていた金魚,もはやヘラブナ並みの大きさになっていた金魚は三日で死にました。ファンヒーターは火が付いたままなぜかファンだけが止まり,気づくのが数分遅れたら爆発して火事に。以後も家族にケガや体調不良が続きます。父も調子が悪くなり検査入院したのですが,不思議に病院では症状が出ません。


 どんな家だったか。


 狭い敷地いっぱいに建てられた二階家。昭和四十年代頃の造りですが,その頃としては十分にお金をかけた瀟洒な家です。居間にはかっこいい段差(当時はバリアフリーという概念はなかった)があり,装飾的な照明が仕込まれ,かつては最新であったろうクーラーや水洗トイレ。そう,家としては古いながらも何も問題はないのです。


 家のお子さんは独立して都会に住まい,一人残ったおばあさんは家の中の階段をふさいで外に軍艦のラッタルみたいな階段を付け,二階を大学生に部屋貸ししていました。しかしおばあさんは認知症で入院し,遠くの子どもたちはこの家を持て余すことに。家の中の片づけまでしてくれるなら,と格安で貸してくれたのです。


 私の見る所(エラそうでごめんなさい),どうも家そのものより地面が怪しい。玄関わきの坪庭の植物のいじけ具合を見る限りそう思えます。ここは水戸と言っても場末,明治以前は沼地と荒地,そこに墓地が散在する寂しい場所だったと聞いています。何が埋まっていても不思議じゃない。いえ,あえて掘り返して調べようなんて気はありません。

 

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 幸いにして私たち家族は欠けることなく新居に脱出できたのですが,その後のこの家が私には気掛かりでした。不動産屋さんを介して,この家を購入した方がいたのです。建築関係のご主人と,若い奥さんと,生まれたばかりのお子さんと。


 さて,私にできることはあったでしょうか。家を買って,さあここから家族の物語を始めるぞと希望に燃えている家族。ご主人は仕事頑張るぞ母ちゃん幸せにしてやるぜと,奥さんは愛らしい我が子を抱いてこの家でどう暮らそうかと夢を巡らすそのさ中に,見ず知らずのおっさんが玄関口に現れてここは良くない場所ですよと告げるのです。 …… これ以上の嫌がらせがあろうか。


 何もできないままに日は過ぎて。そして心配した通りに,奥さんが入院してしまいました。

 

 

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 恐怖小説の極北,H.P.ラヴクラフトの短編に「忌まれた家」というのがあります。


 米北東部の古都プロヴィデンスに,人々から恐れ忌まれた邸宅がありました。植民地時代から建つその家では,夥しい数の死者が出ているのです。狂死,衰弱死,死産…… 健康頑健な者でも,その家に住まうと程なく衰弱していきます。多くが死の間際,知るはずのないフランス語の呪いの言葉を吐きながら。主人公は,博識な叔父とともにこの家の歴史を遡り,二百年前にこの地に移り住んだ邪教を奉じるフランス人移民の一家にたどり着きます。この者たちが地下に埋めた何かが,人々の精気を吸い取り,呪いをまき散らしていると結論した主人公は,叔父とともに地下室に向かい,「何か」と対決することになります。恐るべき結末が待つと知らぬまま……

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 さて,あの家のご家族なのですが。ご主人が建築関係ということもあり,家の改装に着手されました。屋内の階段を復元して二階と行き来できるようにした上で,その二階を快適に造りかえて生活の中心にしたのです。日々の生活を二階で。おお,その手があったか。不思議です。ご自分で気づかれたのでしょうか。それとも「わかる」誰かに助言を受けたのか。地面から離れればその影響も軽減されたでしょう。退院した奥さんもその後は元気で,お子さんもすくすく育ちました。


 自分でもどう評価していいかわからない案件です。私は別に「見える」人間じゃない。ただいつもひとり自然の中でその「気」を感じてきたせいか,なにかを「感じる」ことがたまにあるだけです。ネットで喜ばれるような「体験」もまるでない。女子高生がよく具合が悪くなったと騒ぐ沖縄のガマやヒロシマ原爆資料館でも何もありませんでした。他人の役に立ったこともないし。

 

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 いつも言うけど,話半分で読んでくださいね。

 

 

 

 

ラヴクラフト、大好きです。

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短剣道全国大会  まさか人生初の日本武道館がコレとは

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 人生初! 日本武道館だあ。まさか自分がここに来る日があろうとは。


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 身内が今日ここで開かれる「第18回全日本短剣道大会」に出場するのです。その応援に。

 

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 短剣道たんけんどう日本武道館の地下に本部のあるこの「全日本銃剣道連盟」という組織が統括しています。そこら辺の事情は後述しますね。


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 これが全出場者。これが全国の競技人口の大部分なのでは。もちろん地方大会なしで,いきなり全国大会。日本中の私立高校の経営者の方々,マイナー競技で全国出場して名を売りたいなら是非どうです? すぐ全国大会ですよ。…… でも実は後述する理由で,学校で実施するには難のある競技なんです。ちなみに競技者の大部分は自衛隊員なり。


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 客席はガラガラ。日本武道館をコンサートでしか知らない人は目を疑うのでは。はい本当に日本武道館ですよー。


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 というか,案外狭いのでびっくりしたんです,私は。 こんなもん? ここに本当にビートルズが来たの? 駆け出しの歌手はここで歌うことを目標にしちゃうの? まあ確かに音響は良かったですけど。


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 試合の様子。全長530ミリの短い竹刀を使います。防具は左の小手を付けない以外は剣道と同じです。でも剣道とは似て非なるもの。すごーく違うもの。


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 短剣道って,知ってました?


 武道の一つ …… という位置付けらしいけど,一般にはぜんぜん普及していません。古来の小太刀術がルーツということになってるけど,どうも様子が違います。


 現実に刀を持って歩いている人はいないから,剣道は純粋にスポーツと言えるでしょう。でもナイフを持って歩いている人はそこらにいます。この一点だけでも短剣道はとても実戦的な武道ですね。


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 まあはっきり言っちゃうと,短剣道が想定している武器は「銃剣」です。そうあの鉄砲の先に付けるやつ。その銃剣を手に握って戦うことを想定してるのが「短剣道」。同じ銃剣を銃に着剣して戦う想定が「銃剣道」で,短剣道をやってる人はみな銃剣道もやってます。…… えーつまり,短剣道銃剣道も,戦場で兵隊さんが白兵戦を戦う訓練なんです。 ね? 本当に実戦的でしょ。高校の部活には無理でしょ。

 

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 決まり手は面打ち・小手打ち・ノド突きといった剣道と共通のもの以外に「胴突き」があります。要するに腹を …… うわあ,リアル。実際の試合ではノド突きと胴突きがかなりのウエイトを占めているようにお見受けしました。実戦場面を想像すると,なかなか怖いモノがあります。

 

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 そんなわけで短剣道をやっているのはほぼ自衛隊の人。団体戦部隊対抗の様相を呈します。開会式でも陸海空の各幕僚長からの祝電が披露されていました。

 
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 光モノを持っての戦いを想定しているわけなので,試合も結構エグい。相手の袖を取って引き倒したり,竹刀を叩き落したり,左手で相手を押さえて胴を何度もゲシゲシ,なんて。

 

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 その一方でカッコよくもあります。短い間合い,反射的な素早い一閃と,交錯した次の瞬間に飛びすさる身のこなし。ああ,実戦武道なんだ。

 

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 思わぬ形での初・日本武道館でした。

 

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 お昼も武道館を見ながら。


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 駐車場は自衛隊トラックと高機動車がずらり。壮観。

 

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 せっかく来たんだからとこれも初の靖国神社参拝。やはりというか何というか警戒厳重で,拝殿前でカメラ構えたら怒られちゃいました。まあ当然なんですが。


 この歳になっても「初」ってあるものですね。長生きするもんだ。

 

 

 

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孔雀石を拾いましたよええ他人が捨てたものですが

 

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 先日の久慈川メノウの話(久慈川メノウ,今日は当たりました - ジノ。)と同日のことなのですが。


 さあメノウ拾うぞと車を降りて河原を見回すその視野の隅に,見慣れぬコバルトグリーンの光が見えました。


            

 

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 視界のすみっこ,枯草の中に砕かれたふうの石がひと山。緑色が目を引きます。


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 ペンキの色かと思ったけど,…… ホントに緑色の石。緑青ろくしょうの色,銅イオンの色。銅の緑色の石と言えば…… まさか,まさか孔雀石!?


 孔雀石くじゃくいしというのは銅鉱床ふきんによく見られる銅の二次鉱物,つまりいったん水に溶けた銅が黄銅鉱や水晶の周りに再結晶したもので,断面が美しい緑の縞模様になることで知られます。柔らかいので硬度7以上が条件の「宝石」ではありませんが,飾り石として人気があります。それがこんな場所に。


 腑に落ちない点がいくつか。まずこれはここの石ではない。久慈川の河原の石ではありません。川に流れて削られた様子がまるでない。そもそも久慈川沿いに銅の鉱床があるなんて聞いたことがない。明らかに人の手で運ばれ,人の手で砕かれたものです。元はかなり大きな岩のかたまり,それはたぶん山から運んできたもの。それをわざわざ久慈川の河原で砕いて捨てていったその残骸と思われます。誰が? なんで?


 ここからは推論です。この近所,久慈川からほど近いところにけっこうマニアックな鉱物趣味の人がいる。先日も遠征してどこぞの銅山のズリから孔雀石を含む大きな岩塊を採取してきた。本当はそのまま宝物にしたかったけど,当然奥様は大非難。アンタまたこんなもの拾ってきて,と。そこで泣く泣く小さく砕いて,標本として美しい部分だけを手元に残すことに。そしてそれ以外は,河原の石になってしまえと久慈川に捨てにきた……


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 悲しいおじさんの物語を想像してしまった。やめよう,人の人生を追うのは。


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 改めて捨てられたかけらを観察。中央の濃い色が孔雀石。周辺の水色はひょっとすると少し成分の違う珪孔雀石けいくじゃくいしかも知れません。いずれにせよ,きれいだなあ。水に濡らして色を出してみます。

 

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 おお…… これはたまらん。


 …… おい待て。ちょっと待て。これは誰かが捨てたものだぞ。


 いやいやいや,「落ちてたから」とか言うな。ホントに落ち穂拾いだぞ。ゴミ山漁るようなもんだぞ? 他人の食べたカップラーメンのツユをすするような行為だぞ? お前にはプライドってもんが……

 


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     ない。ないね,まったく。


 そんな腹の足しにならんもん,最初から持ち合わせてないわい。はい孔雀石ゲットぉ。


 さあ得意のマクロ撮影で,この貴石をたっぷりと堪能しましょう。


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 小さな水晶が無数に。岩の隙間に水晶がびっしりと生えた「晶洞」という構造です。


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 そこに銅が流れ込んで水晶の表面を覆ってます。


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 仏頭状構造。

 

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 光る水晶。青い銅。色の対比が絶妙です。

 

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 水晶も色や形やさまざまに。


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 こうして鉱石の表面をマクロレンズで辿っていくと,なんだか別の太陽系で惑星探検しているような気分になります。


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 宇宙のどこかの,青い光に包まれた忘却の惑星。


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 普通の人にはただの路傍の石。でも見方を変えるだけで私には異界めぐりの入口になります。

 


 遠く旅に出るのは嫌いではありません。美食三昧に腹のみならず精神が喜ぶことだってあります。でも私にはそれと同列に,身近な自然に新たな発見をすることで心満たされる瞬間があったりします。

 


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 久慈川は今日も私の心を養ってくれました。また来るからね。

 

 

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ホーネットとシャングリラ

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 ホーネットの残骸が見つかったとか。


 太平洋戦争の話。東京が初空襲されたのは開戦から半年も経っていない1942年4月のことでした。まだ日本軍が連戦連勝のころ。もちろん日本が備えてなかったわけではありませんが,それでも完全な奇襲になりました。突如太平洋から飛来した陸上用の双発高速爆撃機B25ミッチェルが16機。それぞれが東京・横須賀・横浜・名古屋・神戸を爆撃して通り魔のように中国大陸に去って行きました。死者87名,負傷者151名,建造中の軍艦にも直撃弾。勝ち戦で油断していた日本軍は大きな衝撃を受け,海軍がミッドウェー作戦を企図する要因にもなりました。

 

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 この戦果はアメリカ国内で大いに喧伝され,米国民の戦意高揚に役立ったそうな。米大統領フランクリン・ルーズベルト爆撃機の発進基地はどこかと新聞記者に問われ,ニヤリと笑って「シャングリラ」。真に受けた記者が「発進基地はシャングリラ」と配信し,日本海軍では海図を総動員してそりゃどこだと探したとか。


 見つかるわけない。架空の地名だから。発進したのも「基地」じゃないから。


 発進した場所はなんと空母。米海軍航空母艦「ホーネット」,ヨークタウン級3番艦,1941年就役,排水量19,800トン。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88_(CV-8)


 通常空母が運用する艦載機は単発の小型機。「ホーネット」は自前の艦載機を格納庫に収め,飛行甲板にびっしりとB25を並べて,当代随一の操縦技術を持つ男ジミー・ドーリットルを隊長とする陸軍爆撃機隊を発艦させたのでした。すげえなアメリカ,この発想。こんなアイデアを形にできたのはアメリカだから。合理的で,あくまでも実力主義。多様な人材を登用,下の者の意見も面白ければ採用。学校の成績良かっただけのヤツが将官になって硬直した作戦ばかり立てていた日本海軍が負けるわけです。

 

 この「ドーリットル空襲」を成功させた「ホーネット」はその後も太平洋を転戦するのですが,日本の「瑞鶴」「翔鶴」,米海軍「エンタープライズ」「ホーネット」の2大空母機動部隊が激突する南太平洋海戦(米軍名サンタクルーズ諸島海戦)で戦没します。日本海軍機動部隊最後の勝利,かつ日本軍が沈めた最後の米正規空母となりました。


 さて「シャングリラ」。理想郷とか黄金郷とかいう意味で使われます。日本では楽曲名から会社名まであらゆる分野に多用され,検索当たりまくり。日本語として耳当たりが良いせいでしょうが,興醒めするほどに安直な用例もあります。ねえもうちょっと考えようよー。


 いやいや,ここで言いたいのは「シャングリラ」の語源です。正しくは「シャングリ・ラ Shangri-La」。1933年に発表された英国作家ジェームズ・ヒルトンの小説「失われた地平線 LOST HORIZON」に出てくる,ヒマラヤの奥地にあるという理想郷です。


 そこでは人々は歳を取りません。温暖で作物はたわわに実り,一年中花咲き鳥がさえずる夢の国。外界と隔絶されているのに驚くべし,家々にはセントラルヒーティングが完備されグランドピアノまで置いてある。金鉱脈があって外界の事物を購入するに不自由はないのだけど,あえて人々は外界とそれ以上の関係を持たずに平和な生活を楽しんでいます。拉致同然でシャングリラに招かれた主人公は,この不思議な理想郷に次第に心奪われていくのでした。


 …… とまあ物語は進むのですが,最後にこのシャングリラの創成の秘密が語られるに及んで,読んでいた私は少々コケました。なんじゃそりゃーと。所詮は毛唐の書いた空言よ,と。今回はネタバレなしにしときます。


 結局今回の記事は「この本探して読んだ」話かな。ご存知のように海軍マニアの私です。ドーリットル空襲の逸話から「失われた地平線」の名は知っていて,読んでみたいと思い至りました。実は小学5年の時に文庫本を本屋で手に取ってはいたのです。ただその時は表紙だけ見て置いてしまいました。成人ののち読みたくなって,あああの時何でと悔やんだものです。角川文庫でしたが,映画化に合わせて出版という例の手だったのでとっくに絶版。さあ古本屋を探し回ることしばし。ようやく神保町の古文庫専門店で見つけた時は快哉を叫びました。何につけ,欲しいモノを足で探し回るのが好き。見つけた時の喜びが大きいから。何でもネットで即注文,というこの時代に取り残されるのもまた楽し。


 というわけでホーネットとシャングリラ。大統領の茶目っ気から結ばれた縁でしたが,76年後の日本でブログネタになろうとは。ルーズベルトさんありがとう。

 

↓ 関連記事です 

ガチャポンの真珠湾作戦の艦艇が揃った。 第一航空艦隊出撃です - ジノ。

 

 

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久慈川メノウ,今日は当たりました

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 水戸から大子を経て郡山に向かう国道118号線。途中久慈川沿いの山河を縫って走ります。そうです私が男体山袋田大子八溝山メノウ拾いやらパンニングやらに行くのに使う快適な道です。茨城サイコー。


 先週雪が積もる中八溝山方面に行ってきたのですが,途中でおおっという光景を目にしました。久慈川の河原の石が,砂利採取で剥ぎ取られていたのです。よっしゃー!


 …… 説明が要りますね。この辺りには河原の土砂を採取して建設用に販売する業者さんがたくさんあるのですが,そうして採取されたあとはそれまで隠されていた下層の古い土砂が表面に現れます。そうです,かつて堆積して隠されていたメノウが拾えるのだ! ゴー!


 落ち着けおっさん。先週は時間的余裕がなかったので,一週間待っての今日となりました。さあ拾えるかなあ。


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 あーこりゃダメだ。剥ぎ取られた直後で,石が泥をかぶってます。これでは判別が困難。一度大水が出て表面が洗われないと難しいかも。

 

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 なんて考えていたら,あっさり第一号発見。

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 地層状のクリーム色の縞がいい色です。


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 第二号。


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 第三号。

 

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 ああっ川の中にもあるっっ。

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 くるぶし程度の深さですが…… だいたいこういうのは無理して取ろうとするとろくなことにならない。見るだけにしましょう。


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 赤い色に反応してしまいましたが,これはレンガ。ちなみに他県では,こんな感じで似た外観の水銀鉱物「辰砂しんしゃ」を拾えてしまう場所があるのだとか。水銀だから毒なんだけど,一度拾ってみたいです。


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 また一個。今日はなんか凄いことに。

 

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 重機がお仕事しています。お邪魔してはいけません。現地の人から見れば私は闖入者。私のフィールド遊びの時のモットー,① 先を急がない ② 無心であること ③ 地元に迷惑かけない! で今日も参ります。


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 また一個。母岩付きです。

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 いつもこうだったらなあ。いやそれではつまらない。


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 不思議な色のチャートがありました。いい火打ち石になりそう。


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 また一個。

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 メノウらしい構造が見えます。


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 同じようなのがもう一個。一個見つかると,意外とそばにまたあります。メノウが川に流され堆積する条件があって,同じような場所に集まるのでしょう。


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 動物のフンなのですが,これギンナンだよね? あのクサいイチョウの実を食べる豪の者がいる。いやそれよりこの大きなギンナンが排泄できたのか。肛門無事か。大きなお世話か。

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 また。

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 型がよろしい,なんて。

 

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 モクズガニが死んでました。前にもご紹介したけど,有名な「上海ガニ」とほぼ同種の美味なカニ。皆に狙われる中で,年に一度命懸けで海まで降りなければならない宿命を背負ってます。

 

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 またメノウ。いい色です。


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 ずしりと重い久慈川のメノウ。

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 メノウらしい縞模様が見えます。

 


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 赤紫の縞模様のチャート。これはこれできれいです。


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 これは…… メノウではないな。


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 本日最後の一品。


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 重機に踏まれているのに折れてない木が。触ってみて納得,珪化木けいかぼくでした。


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 珪化つまり石化がまだ不十分ですが,ちゃんと水に沈みました。ああどうしよう,持ち帰りたい。いま頭の中で,二人の自分が押し問答しています。持ち帰ろうよ,いや持ち帰ってどうすんだこんなもん……


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 はい今日は理性が勝ちました。こんな場所に置いていきます。


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 今日のお持ち帰りはこれだけ。本当にこれだけ。いやビーチグラスきれいだったもので。メノウは縞模様がきれいだった第一号だけ連れ帰ります。あとのは全部現地に置き去り。これ読んでる読者の方で現地に来れる方,探してみませんか? そろそろ目がヤバいおっさんが1時間ちょっとの探索でこれだけ見つけられたんですから。


 場所は常陸大宮市北部,旧山方町の久慈川。118号から小貫橋を渡ったところですぐ右折,久慈川沿いの砂利道を1キロほど下流に行ったところです。慌てないでも,大水が出るたびに採れますよ。くれぐれも現地の人のご迷惑にならないようお願いします。

 


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 陽が高くなるにつれ,かなり気温が上がりました。越冬中のキタテハが日光浴。春を待ちわびるものがここにも。

 

  

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宇宙からの来訪者 流星ジンと出会ったこと

 

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 あーこらこら,タイトルだけで逃げないこと。

 今回はそっち系じゃないから。


 子ども相手のイベントでテルミット実験というのをやってウケてた時期がありまして。ドッカーンと鉄を溶かしちゃう実験。もう子どもたちが目をまん丸にして。


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 この実験,材料に砂鉄を使います。私の場合,砂鉄の多い海岸で磁石を使って集めます。お気に入りは日立の河原子海水浴場。実はそこで集めた砂鉄の中に,面白いものを見つけたんです。


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 これ。…… わかりにくい写真だな。


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 拡大。金属光沢出た。大きさはミクロン単位です。


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 実はこれ,流星塵りゅうせいじん


 宇宙を漂う数ミリから数センチのチリが地球の大気圏に突入すると,空気との摩擦で高温になり蒸発します。これが流星。ただしよく言うように「燃え尽きる」わけじゃない。いったん溶けて,それがまた固化してゆっくり地上に降りてくるんです。固化の時に球状になって。これが流星塵。


 資料によって数字が全然違うので何とも言えませんが,地球全体で年間数十トンから数百トン降ってきているそうな。


 鉄とニッケルで出来ているので磁石に付きます。だから海岸の砂鉄集めで採れたわけ。でも実はこれが大発見。だってどんな資料にも「流星塵が海岸で採れる」なんて書いてありませんから。「スライドグラスにワセリンを塗って一晩外に晒しておく」が定番。おおベトベトになりそう… と敬遠していたのですが,砂鉄と一緒に採れるならすっきり。


 ただしものすごく手間がかかりますよ。持ち帰った砂鉄を水洗いして,何度も磁石でより分けて砂粒を除き,実体顕微鏡で見ながら面相筆で拾い上げる…… どうです気が狂うでしょう。こういう手作業が楽しいんだけどなあ。これだと流星塵だけを小びんに貯めて好きな時に眺めることができるのだ。

 


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 つくづくフツーじゃないおじさんです。ちゃんと仕事しています。人生は楽しいです。今宵はここまで。

 

 

追伸 河原子海水浴場,震災後は行ってません。今でも砂鉄があるかどうか保証はいたしませんので,あしからず。

 

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