高萩・北茨城篇
はい,ちゃんと続きますよ。茨城県北芸術祭好き勝手レポート,第2回は茨城県北部の海沿いの地域。かつて常磐炭田で栄えた所で,20年ほど前まではその当時の遺構もちらほら残っていたのですが,もう何もない。大きな企業が撤退しちゃったり,津波の被害があったり,すっかり静かな土地になってしまいました。石井竜也と野口雨情のふるさとです。この二人並べるのもどうかと思うけど。
まずは高萩市の「穂積家住宅」。江戸時代から明治期の豪農・実業家の旧宅だそうで,その典雅な家と庭に興趣をそそられます。昔はこういう家の人が,地域の繁栄に尽くし,芸術や文化にも出費を惜しまなかったとか。ここを展示会場にあてた県の人,その慧眼恐れ入ります。
B-01 紅毛先生の驚異の部屋
あ,ステキなうしろ姿のお姉さん💛 ……じゃなくて,部屋全体がレトロ趣味の事物を並べた「作品」です。昔この家の主人の友人に紅毛人の医者がいた,という設定だそうで。いいなあ。こんな古くてヘンなものを手に入れたら私でもなんかストーリーを作って並べたくなる。置かれたもの一つ一つ丁寧に写真撮ったんだけど,暗い部屋とてみんな手ブレしてしまいました。
B-02 天を仰ぎ 地に立つ 者として
暗いくらーい納戸の中,砂の山に一輪立つユリの花。華道家の作品ですが,花は3Dプリンターで作成したものとか。美しい作品でした。でも暗くて写真にならなかった。返す返すも三脚を持ってこなかったのが悔やまれます。
B-03 pearl blueの襞 ―空へ・ソラから―
空の青を映した陶器作品です。確かにキレイな色ですね。でもここ穂積家の庭は柿の実をはじめとして自然の燦然と輝く色に満ち溢れていて,私にはそっちのほうが美しく見えました。展示場所に負かされた,という感です。
B-04 ウェブ・オブ・ライフ
うん,これも美術館に飾られていたならまた違った感想が持てたと思います。
穂積家住宅内部。期間限定でレストランとして営業してるとか。いずれ。
B-05 落ちてきた空
この大きさはアッパレですが,まあそんなものかと。個人的には,描かれた絵にもうひとひねりあればなあ,なんて。だって,意味深な図柄もないわけじゃないけど,子供が描くような雲と空なんだもん。
B-06 テトラパッド
本来は触れられる作品のはずが「安全を考慮して」遠くから眺めるだけになったとか。その時点でもうダメじゃん。
B-07 ソウル・シェルター
私の大好きな場所,高戸小浜(たかどこはま)海岸にでんと置かれてました。やはりなんというか,「自然」に負けているんだよなあ。
C-01 チームラボ 小さき無限に咲く花の、かそけき今を思うなりけり
このタイトルに圧倒。チームラボはもう有名どころと言っていいでしょうが,デジタルアートのみならず言霊使いとしても一流だと知れます。
作品はもちろん一流。6つのデジタル映像作品は,いずれも観客が楽しめるもので,多くが参加型。観客参加型芸術というと多賀駅前のものがそうであったように押しつけがましく,しかもハードルが高かったりできたものを晒されたり。その点,チームラボの作品は一過性。さわると蝶が飛ぶ,動かすと花が散る。美しく楽しく,あとくされがない。昭和のゲージュツ家の皆さん,これからはこれが参加型ですよ。
「小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々」
抹茶のたてられた茶碗に,花の映像が投影されています。茶碗を動かすと花が散り,茶碗には新たな花が咲きます。ずっと遊んでしまいました。
「Nirvana」
ニルヴァーナ,涅槃でしょうか。見ているだけで楽しい。
「境界のない群蝶」
花が無限に咲き続け,触れると蝶が舞う。花と蝶が動くだけでも楽しいのに,参加できちゃうんです。
「世界はこんなにもうつくしく,やさしい」
花,文字,雨,雷。観客は天象気象を操ります。
「増殖する生命Ⅱ」
無限に増殖してます,はい。
C-02 ケノプシア(人のいない空間)
子供に描かせた絵を並べて,それで?
次の03と04は茨城大学五浦美術文化研究所。岡倉天心の日本美術院の遺構を茨城大が管理している所です。私には縁のある場所で,さあどんなかな。
C-03 雑草
おお,六角堂。久しぶり。で,どこに作品あんのよ。
え?
これ!?
奥にもヒルガオが。すごい。驚いた。
C-04 Artificial Rock No.109
で,03と比べてこれ。相手が悪かったな。風景にも負けている。
旅する蝶,アサギマダラがハマギクの花に憩っておりました。茨城ではこの舞姫が海岸で見られるのは珍しい事です。これから遠く東南アジアへの旅路に就きます。
以下05~08は廃校になった小学校が舞台。後述する木造校舎の古い学校ならともかく,こんな鉄筋づくりの新しい学校まで閉じることになるとは。さりげなく階段の下に片づけてあった「閉校式々場」の立て看板に胸が詰まります。
C-05 物々交換プロジェクト
何か月もかけてこのリヤカーを引っ張り,出会う人々と物々交換をしたのだそうです。こういうのを芸術的活動というのでしょうが,残念ながらこの芸術祭に私が求めるものとは180度ずれてます。まあお疲れさま。
C-06 HIBINO HOSPITAL(日比野美術研究室付属病院放送部)
出ましたビッグネーム。県がいくら積んでるか知らないけど,お金の無駄です。
C-07 ケノプシア(人のいない空間)
机や椅子といった学校の備品を並べて,それで?
C-08 今ここにある宙(そら)
作者名 林剛人丸(はやしごうじんまる)
展示場所は体育館。中に入っていきなりこのビジュアル。暗幕に午後の陽が当たった赤色は作者の計算外だったかもしれませんが,この色の対比にタマシイ持ってかれてしばらく魅入っておりました。……で,作品もよかったけど,なんなんだこの作者名。思わず名乗りたくなるいい名だ。お友達になりたいなあ。
C-09 Untitled (kenpoku)
だからどうした感がハンパない。ほんとにどうしましょ。緑の幕を草原にぴんと横に張っただけなんです。しかも自家用車でしか来れない山の中にこれだけがぽつんと。私はこのあたりの山道に詳しいから来れたけど,一般の人はたどり着くだけで大変なことでしょう。で,これだけ。まあ,ある意味びっくりはしましたけどね。
さあ次回は常陸太田篇。言いたいこと言うぞ。