霊峰飛鶴 横山大観
5月3日の気乗りしない予定がキャンセルになりました。天気も雨だという。これは天に背を押されたと判断する。行かねばなるまい。「生々流転」を見に。
東京・竹橋の国立近代美術館で横山大観の大回顧展をやっています。そこで展示されるのです。「生々流転」が。
朝7時の高速バスに飛び乗ります。ガラ空きの常磐高速を南へ。反対車線はもう混んでいます。運転のお父さんたち,頑張ってください。
雨の予報のおかげか,連休にいつもディズニー渋滞を起こす堀切ジャンクションも無事通過。トラブルなくバスは東京駅日本橋口へ。大荷物をコインロッカーに預けて,地下鉄で竹橋へ。
晴れちゃいました。晴れ男,自分でも呆れる。
これが東京国立近代美術館。
9:30,チケット買いの行列。15分早く開場してくれました。
横山大観(1868-1958),明治から昭和にかけて活躍した日本画家です。代表作も数多く,いまさら私がどうこう論評できる人ではありません。出自は水戸藩の士族で,精神形成にも生まれが関わっているといいますが,私はそこは気にしません。
とにかく「生々流転」です。
全長40メートルを超える日本最長の絵巻物。宣伝文句をそのまま使わせていただくと「日本一長い画巻に水の一生の物語を描く。スタートは山間に湧く雲。雲が一粒の滴となり、地に落ちて流れはじめる。川は周囲の山々や動物、人々の生活を潤しながら次第に川幅を増し、やがて海へと流れ込む。荒れ狂う海には龍が躍り、水はついに雲となって天へと昇る。そして物語は振り出しに戻るのだ。大観の水墨技法のすべてがここに注ぎ込まれている」とか。
もちろん作品の撮影はできませんでしたが,ネット上に画像データがあったのでそれでご紹介いたします。
霧が流れ
雨滴が落ち
最初の流れに
流れは重なり
人が交わる
奔流に光きらめき
煙霧の中人は語らい
驟雨が襲い
川辺の町を潤し
海に出る
大海となって
竜巻から天へと還り
いつかまた山へと降り注ぐ
これ生々流転
墨一色で描かれたとは思えない豊かさ。大観の代表作には「夜桜」など色彩豊かなものも多いのですが,一方でこの作品のように「墨に五彩あり」の言葉通り濃淡だけで自然の色彩を描き切ってもいます。なんと幅広く懐深い技量であることか。
描かれているのが,単なる川の風景の描写だけでないのはおわかりでしょう。そう,大観が描いたのは人生そのもの。生あるものすべて。生命の輪廻,変転,終焉と再生。斯くの如きか,昼もなく夜もなく。孔子が川の流れに悟った人の世の定めとはこのようなものでしょうか。大観は,その人生観,自然観を余すところなくこの絵巻に表現したのだと思います。
そして,描かれた山の姿が茨城の山郭風景に材を求めたものなのでしょうか,私はこの絵に,自分の自然観に重なるものを感じます。これほどまでに私の内なる自然観を表現してくれたものがあったろうか。図集でこの絵を初めて見た時の衝撃。いつか必ずこの目で見てやろうと思っていたのです。
ちなみに展示風景。これを奥から手前に40メートル見ていくわけです。5往復しました。おなか一杯です。さぞかし怪しかったのでしょう,監視員のおネエちゃんにものすごい目でにらまれてました。
売店で水戸の銘菓,売ってました。
ああ良い一日だった。少し東京見物をして,今日はこのまま一泊です。なんと品川プリンスホテル。ジャングルブーツはいたおっさん一人,泊めてくれるかしら。
フロントの列。大変な人出です。よく前日に予約取れたよな。
と思ったらこんな部屋。これ窓から見た風景。3階で眺望ゼロ。ビジネスホテルレベルのシングルルーム。品プリにこんな部屋あったんだ。これ添乗員部屋じゃないの? まあ文句は言えません,GW中に翌日の予約が取れる部屋なんて。……でもとにかく耐えられなかったのは喫煙部屋だったこと。ヤニのにおいが部屋中に染みついていて,それが服や荷物に付いてしまったこと。かなり後悔しました。
ともあれ宿が確保できて,明日の行動につなげることができました。さあ明日も朝が早いぞ