というわけで筑波山再訪です。今日は気兼ねなく撮りたいものを撮るぞー。
水戸から筑波山となると普通は常磐道から土浦北インターを経て「表筑波」のふもとまで,ということになるのですが,一人で登頂を目的とする時は八郷盆地を横切る最短ルートの裏道を行き「風返し峠」を越えます。こちらの方が性に合います。
遠方の皆さんにはイメージが薄いかも知れませんが,関東平野にどんと聳える筑波山ははるか上代から人々に登られてました。今ではケーブルカーやロープウェイもあってハイヒールに白ワンピースの女性でも登れます。これは登る山です。徒歩でも余裕で日帰り登山ができます。でもナメちゃいけません。足で登るならそれなりの覚悟を。
実はけっこう本格的な登りになるんです。こんな岩場が連続します。ハイキングというにはかなりハード,時々動けなくなって泣いてる子供さんを叱咤激励する熱血お父さんに出くわします。さらに言うとここは「登る山」,写真の白雲橋コースも降りるとなると足を痛めます。足裏は痛くなり,太ももは笑い,コケたら大怪我です。大腿筋ピチパリにしたい人以外は,下りはケーブルカーやロープウェイをお薦めします。
能書きはここまで。写真44枚,見てやってください。
まずは筑波山神社の境内,前の記事でもご紹介したマルバクスのタイプツリー。多くのランやシダが着生しています。
その着生ランの一種,ヨウラクランがコケと一緒に落下していました。こんなそばで見られるのはラッキーですが,この手のランは落ちたらおしまい。長くは生きられません。哀れ。
さあ登るぞ。白雲橋コースの入り口で振り返ると,スカイツリーほか都心のビル群が見えます。
夏の森。私が生きる,この美しい世界。
アオハナムグリが岩の上でじっとしてました。どうしたの? おなか痛いの? 踏まれちゃうよ? うるさいなあ,わかっているよとごそごそ移動していきました。ちょっと反抗期みたいでかわいいなあ。
アブラチャン(油瀝青)の実がたわわ。瀝青と書いてチャンと読む,これはアスファルトやコールタールのことで,むかしこの実から油を採ったことによります。
イヌトウバナ。
イワタバコ。ひとつ前の記事で紹介したのは外すつもりでしたが,きれいに撮れたので。
ウマノミツバと
ミツバ。仲良く並んで咲いてました。
エゾゼミの殻。
オオナルコユリ。普通のナルコユリを見慣れた目には,本当に大きく写ります。
オニヤンマ。いっぱいいました。
前にもこんな写真をお見せしましたが,北側の加波山ビュー。
ガンクビソウ。こんな地味なのを三脚据えて撮っていて,何の花ですかと聞かれるのはいいんですが,聞いておいてすぐに興味なさそうに歩き去っていく中年男性というのは何なんだろう。
キヌタソウ。細く伸びた茎に微細な花。先のミツバ同様,スマホカメラ泣かせです。まずピントが合わない。私のカメラでもアングルに苦労して,結局お花に焦点を絞ってみました。
コバギボウシがちょうど盛り。
筑波山の花をぜんぶ綺麗に撮りたかったら,それこそ毎週登らないと間に合いません。
数々の奇岩の中でも特に有名なのがこれ,弁慶七戻り。こちら側から見ると本当に怖い。しかし驚くべし,東日本大震災の揺れでもピクリともしませんでした。
ブナの大樹にシダ植物のシノブがびっしり着生してました。
シモツケ。これもちょうどいいタイミングでした。
拡大。本当に,神は細部に宿る。
きっと花を愛でる余裕はないでしょう,ハエが無心に花粉を食べていました。生きること。ただひたすらその瞬間を生きること。
権三さん大殊勲。…… いえ,コンパクトデジカメに付けた愛称です。すぐそばの藪の中でソウシチョウが美声を披露し始めました。カゴ抜けして筑波山で繁殖している外来の小鳥です。90ミリマクロを三脚に付けてる余裕はない。コンデジで鳥が撮れるとは思えないけどままよ,とカメラを差し上げてシャッター押したら写ってました。
夏の森の林道でよく見かけます,ダイコンソウ。これでもバラ科。
その実。何だこのトゲは。
ツルニンジンの,これはつぼみ。初めて見た。現場で正体が知れなくて,てっきり何かの液果だと思いました。葉が十字対生するつる植物というのでようやく種名が知れた。まだまだ知らないことがあるものですが,未知のものを調べることの楽しさも思い出させてくれました。これはキキョウ科で,そういえばキキョウのつぼみもこんな危うい風船のようだったな。針で突いたらパチンと弾けそうな。しかもこのツルニンジンのは半透明というか微妙に光を透かして,いかにも未熟な美しさ。咲いた花のグロテスクな姿とは印象を異にします。
ツクバトリカブト。まだつぼみも出来てません。
八郷盆地。ヒトの暮らしを遥か上から。
ノブキ。
ヒヨドリバナ。筑波山は美蝶アサギマダラの渡りの中継地点として知られますが,そのアサギマダラが好むのがこれ。なんでもこのチョウの雄はヒヨドリバナで吸蜜しないと成熟できないのだとか。昆虫と植物の不思議な関係がまた一つ。ちなみに今回はチョウの方はいませんでした。残念。
稜線のブナの並木。見事だ。
山道を一人黙々と歩んでいると,自然に自分との対話が生まれます。来し方と,行く末と。
ボタンヅル。これでもクレマチス。
マゴジャクシ。マンネンタケの仲間で針葉樹から生えるもの。キノコ写真家・伊沢正名さんも図鑑の写真を筑波山で撮ってました。
マムシグサの実。緑から赤へのグラディエーションなんて,人間にはなかなか真似できません。自然ならではの配色。美しい。
マユミの未熟な実がいっぱい落ちてました。何があった。
ロクショウグサレキン。私の写真によく現れます。これはやや乾燥した姿だけど,いい色だなあ。
ケーブルカー! 乗り物好きにはたまりません。大正年間から運行されてます。片道590円は十分にリーズナブル。
構造上必ずすれ違いがあるのが楽しい。
帰路,八郷盆地から振り返った筑波山。平野に屹立する筑波山はどの方向からも望見できるのですが,周辺に暮らす人々はみなオレのところから見える姿がサイコーだと申します。見る方向で姿を変える山です。私は水戸からの筑波山より,この東側,石岡側から見たとんがった姿が一番かっこいいと思います。航空祭のとき百里基地から見えるのも,そういえばこの角度だったなあ。
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