ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

難台山に足は笑う

 

       f:id:xjino:20220220084247j:plain


 休暇余っているなら難台山なんだいさんの調査に行きませんか。


 このブログを知る数少ない若手(と言っても昭和末期)の生物屋氏よりお誘い。いつも遊んでくれるいい人です。受けて立つぞドンと来い。

 

f:id:xjino:20220220084337j:plain
 集合場所「あたご天狗の森駐車場」標高250メートル。JR岩間駅を見下ろす愛宕山の山頂近くにあります。神さまが鎮座しています。

f:id:xjino:20220220084353j:plain

 

f:id:xjino:20220220084408j:plain
 眺望絶佳、ただしここから見える東方向に目ぼしいものはなし。

 

f:id:xjino:20220220084428j:plain
 愛宕神社の周囲はモミが優占する森です。夏になったら歩いてみようかな。

 

f:id:xjino:20220220084442j:plain
 筑波山を主峰とする筑波山塊は、Cの字型に八郷盆地を囲みます。このCの字は南東方向に開いていて、Cの東端にあるのがこの愛宕山。ここから難台山、吾国山を経て筑波山塊の北に抜ける縦走路が整備されています。それを難台山まで行って引き返すのが今日のルート。往復4時間というけど、さてどうなるか。

 

f:id:xjino:20220220084525j:plain
 駐車場から見た難台山、553メートル。思ったより遠くに見えるぞ。もういいトシだが頑張ろう。

 

f:id:xjino:20220220084537j:plain
 よく見ると雪があります。一昨日、平地では雨だったのですが。

 


 遠い遠い記憶が少しずつ、まるでささやかな石清水が雫するようにしみ出して参りました。そういえばここは初めてじゃない。低山のくせにアップダウンの厳しい、辛い歩きだった。低山のくせに筑波山なんかより遥かに雪深かった。履物は長靴にしよう。

 

 

f:id:xjino:20220220084611j:plain
 登り始めるとすぐに雪が現れます。相方の靴は軽登山靴。お互い、吉と出るか凶と出るか。

 

f:id:xjino:20220220084631j:plain
 みるみる雪が深くなりました。なだらかに見えて実はスキージャンプの傾斜台のような長大なアップダウン、重力がビキビキと足にも心にもダメージを食らわして来ます。明日は筋肉痛になるでしょう。

 

f:id:xjino:20220220084643j:plain
 盆地をはさんで筑波山が遠い蜃気楼のよう。

 

f:id:xjino:20220220084734j:plain
 ああここは本当に茨城なのか。傾斜も雪もキツい。山歩きで足がガクガクになることを太ももが笑うとか足が笑うとか申します。もう長いことそういう経験はないけれど、大丈夫かわしの大腿筋。

 

f:id:xjino:20220220084858j:plain
 ヒーヒーと稜線歩きを続けて、とつじょ目の前に車道が現れるとダメージが大きい。ここまで車で来れたじゃねえか…… いや、歩くことに意味があるのだ。迷うな、わし。ちなみにここが団子石峠。

 


 次第に記憶が鮮明になってきます。前にここを歩いたのは42年前。サークルの同学年の仲間5,6人で早朝に岩間駅を降り、この縦走路に取りついたのでした。季節は同じ冬、やはり積雪があり、寒さも行程も厳しかったはずなのに思い出は時間によって美化されました。山塊の北、福原駅にたどり着いた時にはもう暗くなっていた。あの時の仲間達は、今どうしているのだろうか。

 

 

f:id:xjino:20220220085000j:plain
 ヤブツバキが絵のように散り

 

f:id:xjino:20220220085013j:plain
 ようやく難台山頂一歩手前、屏風岩まで来ました。

 

f:id:xjino:20220220085049j:plain
 積雪は30センチ。ジャングルブーツで来なくて良かった。

 

  f:id:xjino:20220220085104j:plain
 山頂着、そして光あれ。天気に不安があったのですが陽射しが出ました。相方はどうやら私の「晴れ男」に期待していたらしい。見たか我が神通力。

 

 f:id:xjino:20220220085130j:plain
 この祠は個人を祀ったもの、と資料にありました。

 

   f:id:xjino:20220220085158j:plain
 ここらでようやく、ザックに納めていたソニーαを取り出します。まずは雪に葉を広げるシダ。その名は知らねどもシンメトリーな構成が美しい。

 

f:id:xjino:20220220085222j:plain
 葉裏には胞子嚢が形成されています。春近し。

 

f:id:xjino:20220220085233j:plain
 アカシデの実。

 

f:id:xjino:20220220085244j:plain
 岩上のコケも胞子嚢を付けて。冬でも雪でも、生物は命の継承を留めることはありません。

 

f:id:xjino:20220220085256j:plain
 相方は自分の研究対象に取り掛かってます。私はというと、今日のテーマはこれ、木の幹です。これをマクロレンズで撮る。

 

f:id:xjino:20220220085307j:plain
 シダ植物のノキシノブ。

 

f:id:xjino:20220220085317j:plain
 コケ植物に地衣類。

 

f:id:xjino:20220220085330j:plain
 小型のキノコまで着生していました。おわかりでしょうか。この冬のさなかでも、ちゃんと多種多様の生命が織り成す生物群集があるのです。こういう場所をミクロの視点で観察する、それだけで私は飽きることがありません。生物多様性が今の私のテーマ。たぶん私は南極に行っても、そこらのコケ群集の上に這いつくばって喜んでいると思います。

 

f:id:xjino:20220220085356j:plain
 こちらの木、先ほどのコケに覆いつくされた幹より寂しく見えますが

 

f:id:xjino:20220220085411j:plain
 拡大すれば、おお少なくとも5種類の生物がせめぎ合っておる。

 

f:id:xjino:20220220085422j:plain
 こういう樹枝状の地衣類、大好きです。

 

f:id:xjino:20220220085433j:plain
 コケ。ちゃんと種類を調べねば。

 

f:id:xjino:20220220085446j:plain
 葉状地衣類。

 

f:id:xjino:20220220085507j:plain
 コケ。左端のは別種。ああなんて濃密な生命のるつぼ。

 

f:id:xjino:20220220085518j:plain
 樹枝状と葉状、2種の地衣が混在してどこまでが一つの種なのかわからない。なんて素敵なことでしょう。そもそも地衣類というのが菌類と藻類の合体生物、多様性の象徴みたいなものです。

 

f:id:xjino:20220220085534j:plain
 これはスミレモという緑藻の一種。山奥の神社の石垣をびっしりと埋めていたりします。

 

f:id:xjino:20220220085548j:plain
 なんか朽ちたキノコがあるなあ、くらいで気を入れずにシャッターを押したのですが…… 帰宅して気付いた。これ冬虫夏草だ。うわあ不覚、冬だし雪だし冬虫夏草なんて予想していなかった。あああ確認したい。でもそれにはまたあそこに登らねばならぬ。ぐぬぬ

 

f:id:xjino:20220220085618j:plain
 雪の中で存分に生物屋らしく遊んでしまいました。楽しい一日になりました。山上は夏緑樹林ですが愛宕山近くまで降りると照葉樹林。暖地性の植物が生育しています。これはその名も鬼女蘭きじょらん。旅するチョウ・アサギマダラの食草です。ふと、かのチョウがふわりふわりと舞う夏の森の香りがしました。今日多くの生物を見たとはいえ、生命の気に溢れかえる夏の森が、私はやっぱり好きなのです。もう冬には飽きました。

 


 仕事を  サボって  休んで山歩きをしてきたことは、もちろん家族には内緒です。このブログも内緒のまま。着実にリタイア後の生活に切り替わりつつあります。くふふふ。

 

 


追記
 筋肉痛、意外にもヒラメ筋に出ました。階段降りるとき痛い。大腿筋は普段のスクワットが効いたようです。

 

 

 

↓ 久しぶりの生物ネタでした。なにとぞひとポチ。

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ