ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

秋の陽の喜び

 

       


 秋の陽も午を回り、私はカメラを手に緑野を歩いてます。気温は九月並み、虫たちは喜んで跳ね回り、花々は臆病に花期を遅らせ、私は暦と自然のギャップを惑いつつも楽しんでいます。とはいえ私、見かけがかなり怪しいことを先日の一件で再認識いたしました。休日とて幸せな親子連れがたくさんおられます。通報されないよう気を付けねば。こんな愛と正義のいい人なのにー。

 


 ケンポナシの実が空中にぷらーんぷらーんと。ジョロウグモの糸に引っ掛かったようです。

 


 やぶの中では今まさに、コウヤボウキの花盛り。うす紫のめしべの数を数えれば、これが十個の花の集まりだとわかります。

 


 今年もオケラが実を付けてます。このオケラのような草原性の植物は全国で減少していて、ここでの分布は貴重です。根を「蒼朮そうじゅつ」と言ってストレスによる不快感を去る薬草にしますけど、もったいなくて掘り上げるなんてできまへん。

 


 わあこいつは。どこからどう見てもテングタケ科、たぶんツルタケの仲間。傘の色の付き方が微妙で種名を断定できないけどアレじゃないかな。一本で確実に天国行きのアレ。うん食べりゃわかる。

 


 またデカいのが。これはわかりますカラカサタケ。傘の直径十五センチくらいあります。どう見ても怪しいんだけどじつは食べられます。食べりゃわかる。

 


 コシオガマは前回のここで撮ってます。だからといって写真の手を抜くのはいかがなものかと。

 


 アキノキリンソウは茨城の山野に普通にあります。嫌われ者のセイタカアワダチソウと似ているので見向きもされないけど、十個の小花が一つの頭花を成し、それがいくつか束ねられて黄金色に燃え立つ炎のような美しさです。茶花にしたいので採って来て、と妙齢の女性に頼まれたのはああ、いつのことだったでしょう。

 


 接写してみた。ちなみにこれも薬草で、ちょうどこの開花期に全草を刈り取ってのどの痛みに使います。

 


 ああとうとう見つけた。今日の目標でした、センブリ。地面すれすれに咲いてました。どうやら草刈りの難に遭ってしまい、そこから再生して開花したようです。花弁が四枚なのは余裕のない証拠。

 


 リンドウ科のセンブリ。さすが、花の端正なことったら。もちろん薬草「当薬とうやく」としておなじみですが、意外にも江戸時代までは薬として使われてなかったとか。胃痛・腹痛・下痢・脱毛に効くそうです。厳密には胃腸を冷やす薬草なので、使い方には少し配慮を。私は見つけるたびに葉を一枚失敬して口に含み、その苦みを楽しみます。


 センブリの写真を枯れつつある原野に這いつくばって撮って、よっこいしょと立ち上がった瞬間、午後の陽が斜めに入る草葉の中から、紫色の光が眼に刺さりました。

 


 リンドウだ。今日いちばん見たかった花です。今年の初リンドウ。この花の紫が映える最高の角度で光が射してます。私にとって晩秋の代名詞みたいな花です。漢方名「龍胆」の読みからリンドウと付きましたが、もっと和テイストな因縁ある名があってもいいんじゃない? 昔の日本人の興味を引かなかったのでしょうか。薬としては排尿痛・目の痛み・食欲不振に効用があります。

 


 もう一株見つけてファインダーを覗いていたらヒラタアブが飛んできました。そのままアブの撮影会が始まります。冬に備えて無心に花粉を食べる姿が写し取れました。幼虫はアブラムシを食べるプレデター、成虫は花粉を運ぶポリネーターとして、農業分野で益虫という評価が進んでいます。「農」を志す方、どうかこの小さな虫にお情けを。

 


 最近よく昔のことを思い出します。仕事を辞めて新たな情報入力が減ったその反動と思えばムベなるかな。退屈はしてません。行動原理も変わっていません。長い旅路の昨日を今日に繋ぐ日々です。風を読みながら香りを感じながらその時々の季節を知る喜び。それが秋ならこの者たち。センブリとリンドウが咲きました。

 

 

 

 

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