理系がエラい、そんなこと言いたいのではありません。
ただ理系には周囲からの信任に応えるべき行動理念がある、そう言いたいのです。いわく
自分を疑え
「駅までさんぽ」の道すがら、アスファルトのすき間にこんな草を見ました。その街区一帯に生えてます。途端にうおおおと気分がアガりました。こ、これは悪魔の害草、メリケントキンソウではないか。ついに、ついに見たぞ。とうとう水戸に侵入したか。さあ大変だぞ、戦争だ戦争だ。
メリケン-は、暖地の海岸地方を足がかりに版図を広げつつある侵略者です。その最も凶悪な部分は種子が備えた一本のとげ。ゴム手袋をも突き通し、真皮に達する刺し傷を作ります。人によっては腫れあがり、発熱までするらしい。子供さんが刺されたらと思うと気が遠くなります。とにかく写真を撮って帰路に就きました。さあどうしよう。行政に働きかけねば。まずはブログの記事にしよう。「悪鬼出現、そは牙にて切り苛む」なんて大仰なタイトルまで考えて…… と、ここで頭の中の理系がストップをかけてくれました。
こんな思い込みの勢いで、これまで数々の失敗をしてきました。自分は常に正しい、そんな傲慢な性根を晒して、おのが直感を絶対と信じて、自分を貶めるばかりか周囲に迷惑をかけたことが人生の節目ごとにありました。同じ轍を踏んではいけない、心の理系がブレーキをかけてくれたというところでしょうか。おいこれは本当にメリケンか。まだ種子ががない段階で断言していいのか。自分の直感を疑え。似た植物はないのか。同類無害なものはいくらでもあるはずだぞ。
で調べたら、同じキク科のマメカミツレというのがそっくりの葉を持っています。違いは毛の有無。メリケンなら葉の表面に毛があります。撮った写真を拡大してみるとそれがない。ではカミツレの方かというとまた葉の特徴が違います。危ない、これは範囲を広げて考え、写真も仔細に点検せねば。
そして見つけました。10枚以上の写真の一つを超拡大したら微小な花と実が写り込んでいて…… これアブラナ科じゃないか。帰化植物図鑑でカラクサナズナというのにぴたりと特徴が一致しました。
ああ危なかった。またデタラメ記事を書いてお詫びと削除をするところでした。…… 野口英世はなぜノーベル賞をもらえず、なぜ在籍したロックフェラー研究所でそんな人いなかったことになっているのか。彼は自分の発見を一切疑わず、検証しなかったから。2014年に端を発したSTAP細胞事件も故意か不作為か、本人たちによる検証がありませんでした。いずれも悪魔のささやきに乗り、理系の理念を忘れたゆえの転落です。
冷や汗を収めたいので、散歩で見た花々をご覧くださいね。ふうう。
ムスカリ おなじみ自由な放置花壇、南町三丁目の街路樹の根元にありました。誰かに植えられて忘れられた、そんな寂しさが漂っていました。
植え込みとバス停標識の谷間になんかある。
チューリップだ。 いつからここにたったひとりで。
ツタバウンラン 閉店して空っぽの商店の入り口に絡んでます。時の果て、最後に笑ってるのはこういう奴ら。
ツクシ スギナの胞子葉。お堀の春。
ヤブカンゾウ 開花前に草刈りされませんように。
アカツメクサ ヤギにあげると喜びます。あ、喜ぶのはヤギの方ですからね。
アメリカフウロ 銀杏坂の植え込みの陰に。路傍を埋め尽くす雑草ですが拡大すれば風露草らしい顔をしています。こんな毛深くなければなあ。
ナガミヒナゲシ そういえば昔は植えちゃいけないケシがそこらによくあったよなあ。こいつは無害ね。
ノゲシ 信号の制御盤の陰が居心地良さそうです。
裏通りの廃屋。手前のボケが良い終末感を漂わせます。
こちらも廃屋。かつて水戸で一番の享楽街だった大工町へと続く裏通り、料亭とも連れ込みともつかない店構えです。往時に音曲や嬌声に溢れた巷も今や残された樹々が茂るのみ。ウメの花が盛りでした。
とはいえこの桜はなんとかすべきでは。倒れたら誰が責任取るんだ。たぶんこういう土地は権利関係がぐちゃぐちゃで、どうしようもないんだろうなあ。
ヒヤシンス 自宅近くにて。この町内はもはや町内会が機能してなくて、街路樹の根元の草取りは業者任せにしています。その業者の刈り払い機の刃には、春まで待てば愛らしい花が咲くことなど無意味だったことでしょう。刈られた傷口そのままの開花です。これをどう見るかはその人次第。
そんなこんなで3月が終わります。記事の数が 772 に達しました。もはや過去に何を書いたか覚えてません。
↓ お堀のヤブカンゾウ。
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