ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

茨城のスハマソウ

 


 スハマソウ県の分類で絶滅危惧1B類「ほっとくと絶滅しちゃうかもよ」。理由は限定的な分布とその環境破壊、盗掘の危険。


 茨城の、といってもごめんなさい。県内すべてを把握しているわけではありません。本当に詳しい人というのは決してこんなふうに軽々しく発信しないものです。植物を愛する人ならなおのこと。


 その軽々しさで、昨年は鍋足山のスハマソウを紹介しようなどとやってしまった。今となっては恥ずかしく思います。一時期、「茨城 スハマソウ」で検索したらその記事が一面で出て冷や汗ものでした。


 では「鍋足山 スハマソウ」で引いたら。これも驚きました。山歩きサークルの方々が今年の、今日見たばかりという報告を大量にアップしておられる。すっかり人口に膾炙かいしゃし、広く知られてしまっているようです。とりあえず詳細な自生地は伏せてあるのですが、これだけ報告があっては断片をつなげば大体の場所は推定されてしまいます。実際、岩場の稜線歩きが好きな人だけの道であった自生地への登攀路がすっかり踏み固められて


 シュンランが咲く道なのですけど

 


 掘り取られていたり。スハマソウでは確認しておりませんが、無事なんて考えられない。明らかに話が広がり人が増えた弊害です。私は加担しません。鍋足山のスハマソウに関しては以後言及するのはやめます。

 


 これも鍋足山の名物らしい、シロキツネノサカズキモドキ。もっとこなれた名はないものでしょうかね。

 


 というわけで。

 


 スハマソウは見たいので、以前に一度ご紹介した超マイナーな自生地を5年ぶりに訪ねてみようと思い立ちました。春の夏緑樹林の花々を見る楽しみは捨てがたいのだ。


 茨城県北部、久慈川山田川に挟まれた地域は集塊岩(火山角礫岩、ハイアロクラスタイト)の大岩塊。急峻な地形がヒトによる開発を拒み、多様な生き物が暮らします。正確には集塊岩と溶岩が交互に積み重なっていて

 


 これは溶岩層。

 


 ところどころガマと呼ばれる晶洞があって

 


 そーです私が「久慈川本流系」と呼ぶところのメノウの出どこなのです、わははのはー。でも今日はメノウ回ではないのでここまでね。

 


 それではご覧ください、まずは茨城の春の夏緑樹林、早春第一弾。

 


 アカシデ

 


 エイザンスミレ

 


 クロモジ

 


 ぎゃあああ、スギの雄花。

 


 いつもはザコ扱いのタチツボスミレ、今回は良いタイミングに逢えたようで花付きの良い美人さんがいっぱい。花色の変異を楽しむ意味で、少しリスペクトしてみました。

 


 ツクバキンモンソウ

 


 ツルカノコソウ。これでもオミナエシの仲間。

 


 ハクサンハタザオ。それなりに希少らしい。

 


 ヒトリシズカは春告げ花として外せません。

 


 フデリンドウの咲く環境ではないのですが、たぶんここにかつてヒトの生活があった名残りだと思います。やがて森に飲み込まれる運命です。

 


 マルバスミレ

 


 ミヤマセセリ。蛾じゃありませんよ。


 今回はこんなラインナップでした。日をずらせばまた新たなものを目にできるでしょう。

 


 それでは今回のメインイベント。

 


 かつてここには人の生活がありました。その痕跡が森に消えつつあります。

 


 そして行き着いた林床に

 


 咲いてました。これが茨城のスハマソウ

 


 日当たりの悪い土の急斜面。花期も終盤、鍋足山のような元気のよい花姿はありません。でもこういう場所こそ、こんな細々生きているものには良い避難場所なんです。

 


 ごくごく狭い自生範囲、でもその中では足の踏み場に困るほど密集してます。落ち葉に埋もれていることもあるので本当に気を遣います。

 


 県内のスハマソウは基本的に白ですが、ここではうすピンクの個体を見かけたりして、おお可愛いいのう。この類(スハマソウミスミソウオオミスミソウ… すべて同種)の多様性を知るゆえに、「白い妖精」という表現は私にはできないなあ。

 


 もう実を付けている個体もあります。痩果そうかと言ってキンポウゲやフクジュソウなど多くのキンポウゲ科と同じものです。

 


 かなり傾斜した斜面で、だからこそ落ち葉が堆積しすぎず、こんな小さな草姿でも埋もれずに生きていけるのでしょう。勢い付けて転げれば一気に谷底まで行ける…… と前の記事で書けたのはこのまま土の斜面が続くと思い込んでいたから。とにかく足元が不安定で、そこを重いカメラを装着した三脚を担いで移動します。ふと足元から小石が転げて、ガサガサっと落ち葉を散らしながら落ちていきました。このままガサ音が遠ざかっていくのかな、と耳を向けているとふっと音が消えて、ややあってカツーンという石同士がカチ合う音が聞こえました。

 


 おいおいおい。


 断崖じゃないか。すぐ下が断崖で、その下も岩じゃあないか。本当にあーれーとか落ちたら〇んじゃう場所だったんだ。花を見るのに命がけ。どう思います? 世間的にはいろいろ言われそうですけど、個人的にはそれで本望でございますよ。たぶんナチュラリストって、生き物を愛でる人って、そういう人種なんだと思う。

 


 1時間も頑張っていると足腰ガタガタです。不安定な足場にかなり消耗することになります。そこで来るたびに想うのは、あと何回来れるかなということ。ケガしたり、病んだり、衰えても、もうここには来られません。来るたびに、これが最後と覚悟します。

 

      
 ここのスハマソウを知る人は私以外にもおられますがみなご高齢です。私が最後になるでしょう。そしてこの場所を、私も誰にも明かさずにおこうと思います。まだ踏み分け道がかろうじて判別できますがやがてそれも森に飲み込まれ、ここは人界から隔絶されます。そしてスハマソウは人知れずここで世代を重ねていくことになるでしょう。それでいい。

 


 今度の朝ドラは牧野富太郎先生が主人公ということで、植物ネタは受けるかなーなんて、我ながらこれまた浅はかな。

 

 

 

 

↓ よろしければ。

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

3月のお散歩まとめ

 


 ヤブツバキは花期が長いけど、咲き初めのたおやかな印象は何物にも代えがたい。

 

       
 はい、今回が本当のお散歩まとめ回です。気候変化に身体が振り回される時節。朝7時半に家を出るときは2℃、昼過ぎに帰り着く頃は18℃なんてこともあって、それではと春の服を着て出たら1日寒かった日も。もう何を着ていいのかわかりません。いっそ魔法少女のコスプレでもして歩こうかしら

 


 水戸駅南口のペデストリアンデッキに垂れ幕。各キャラクターの芸の無さもさることながら、その主張がつくばエクスプレスを水戸まで延伸しようだって。誰もそんなこと望んでませんよ。沿線が栄えているのを見てその尻馬に乗ろうという本音、ただただ浅ましい。

 


 泉町地下駐車場のトイレ、とうとう1年間このままでした。エヴァンゲリオンのワンシーンを思い出します。行政の評判が悪いって、つまりこういうところを市民はよく見ているんですよ。市民税返せ。← まだ言ってる。

 


 駅ビルにこんなのあった。

 


 南町三丁目の花壇に置かれた植木鉢にハクモクレンが開いたのにびっくり。自由な植栽が楽しい町内ですがまさかこんなものがあるとは不覚にも1年間気づかなかった。

 


 ミモザの花はまだつぼみ。

 


 三丁目の花壇が丹精されているのは、そこがまだ個人商店の残る並びだから。一つ隣の街区、かつてデパートがあった角地に今は野外カフェや体育館みたいなのがあって、そこの植え込みはご覧の通り。主役のはずのツツジはいじけきって、ホトケノザセイヨウタンポポがやりたい放題に伸びてます。慈愛を込めた親身な人の手がなければ、園芸植物などひとたまりもありません。

 


 その点、旧県庁の土塁やお堀では野生植物がのびのびと春を喜んでいます。空堀に点々と柔らかなきみどり色、フキノトウが冬の終わりを告げていました。そういえば先日いただいたフキ味噌、美味しかったなあ。

 


 桜が咲く頃そこら中から湧いて出るタチツボスミレ。もちろんお堀の草地にも薄紫の花弁を広げます。こういう当たり前というか普遍性が、春には大切なのです。

 

     
 ではこれはどうだろう、歩道のすみのコンクリのすき間にヒメスミレ。思わずかがんでカメラを構えます。ふっふっふ、この私をひざまずかせるとは大したスミレだぜ。…… 私はただ春を愛でたいだけなのですが、黒ずくめの怪しいことこの上ないおっさんが歩道にしゃがみこんで写真を撮っているのを道行く人が露骨に避けていきます。そういえばわし、職務質問ってされたことないなあ。高貴なカオしてるからなあ、うふふふふ。

 


 午後に用事があるときは帰路にバスに乗ることも。乗ったバスが「ガルパン号」。ガルパン、ここではまだまだ現役です。アニメによる町おこしは全国で失敗例続出だそうですが幸いにして、です。…… これ知らないキャラクターだ。私はもう付いていけてない。

 

   
 旧県庁地階の廊下。向こうから人ならざるモノが歩いてきそうで嬉しくなってしまいます。

 


 平日の昼間から行列するお兄さんたち。なんの店かよくわかりませんが、ゲームの発売日とかでしょうか。最近の流行りがよくわからない。

 


 水戸では老舗の専門学校の門構え。赤の使い方がいいなあ。建物は古いけどこういうセンスは嫌いじゃありません。

 


 市民会館建設中。大通りをまたぐ架橋工事では、夜間にここが通行止めになりました。こんなことがニュースになる平和な地方都市です。ちなみにこの橋だけで市民の血税6億が使われてます。もう市長さんたら

 


 水戸駅までの往路は常に表通りを行きますが、帰路はいろいろ。台地の北側を歩いて、突然の芳香に驚き見回すとロウバイがへろへろと咲いていました。正しくはソシンロウバイという種類です。葉はシロダモかカキノキみたいなのが対生していて、花が無い季節にはこりゃ何だと悩ませてくれます。

 


 この道ではいろいろな命の消長を見ることになります。クビキリギリスのメスが、せっかく冬を越したというのに力尽きてました。おなかにはまだ成熟していない卵が初夏を待っていたことでしょう。生きるもの、召されるもの。自然は時に残酷なまでにフェアです。それ傍観する口ぶりの私もまたその手のひらの内にあることを忘れないようにしよう。いわく、メメント・モリ

 


 あのミモザが咲きました。

 


 ハクモクレンは散りました。季節はたゆまず進みます。

 


 まがいなりにも1年間歩き続けたわけで、距離にして数百キロ。同じところを歩いてはいても、飽きないなあ。健康にもいいしね。おかげさまで元気です。ここ数日の花冷えがちとキツイけど。

 

 


       寝て起きて けふも桜が 咲いてゐる

 

 

 

 

↓ 市民税返せ。

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

廃屋とフラサバソウ

 

 本当は「3月お散歩まとめ」にする予定でしたが、特にピックアップしてご紹介したいものができました。

 


 寒いころは「駅までさんぽ」、往復するので精いっぱい。それがこれこのように桜まで咲く陽気になって、あちこちわき道にそれる余裕が生まれました。余裕って大事よね。

 


 ちなみに図書館前の桜、サンシュユの花と競演です。通る皆さんがスマホを向けていました。サンシュユなんてマニアックな、と思っていたら結構皆さんその名をご存じなので感心しました。日本人ってすごいなあ。

 


 図書館寄ってスタバに寄って、てくてく歩きます。

 


 初めて通る道に、ああこういう物件に弱いワタシ。

 


 この住宅に幸せに暮らす家族がいました。しかしその一家はなぜかこの家を手放すことになって、家を手に入れた次の住人は多くの人を住まわせる必要があり、家は増築を重ね鉄パイプの階段まで作ることに。それなりに荒っぽいけど活気あるコミュニティの暮らしがあって、でもある日突然すべてが無に帰して、住人の消えた家は時の手に委ねられました。…… なんて、この家の歴史を想像するだけでストーリーがひとつできてしまった。あ、勝手な妄想ですから信じないように。

 


 東京に行っても、華やかな商業ビルに集う笑顔の人々よりも、うらぶれた通りの廃れようや人に見られることを想定していない角度からの視点に心が動きます。あの街は退廃風景の宝庫と言えますので、その意味で楽しい。こんな性癖は一般には廃墟マニアに分類されるのでしょうが、自分では文明崩壊愛好家を名乗ってます。我ながらおかしなこの視点の理由を解く言葉を、最近読んだ本で仕入れることができました。いわく「自然観察者の目で見る限り、都市は驚異であり奇怪だ」。そう、これです。自然の造形を見慣れている者には、都市の景観はあまりにも奇怪な異形の造形なんです。それだけでも新鮮なのに、それが崩壊し自然に戻ろうとする光景が楽しくないわけがありません。〇〇のランドマークなんて言われている建物が崩壊して緑に覆われている姿(そういう絵を専門に描いている絵師さんがいます)なんて心が震えます。…… すいません不謹慎でした。

 

 


 でも古いビルの古い階段とか

 


 繁華街のビルの裏側とか

 


 垣間見える想定外の姿とか

 


 白いドームにはかつて天体望遠鏡がありました。今は廃ビル。以前記事にしました。バブル時に隆盛を誇ったこの眼鏡屋さん、裏通りのビルの1室で今も営業していることをこの散歩で知ってしまいました。少し胸が痛む。

 

       


 この家も市街地の狭小な敷地を上手に利用して建てられた様子がよくわかります(もし住んでおられる人がいたらごめんなさい)。

 


 閉店した洋食屋の店先で今も客引きするコックさん。

 


 ああ、キリがない。

 


 そんな目線で旧市街地を彷徨しておりましたところ、もとは武家屋敷の間の坂道、今や荒れたやぶ、廃屋の間を縫って通る人もまばらな石段わきの斜面に、初めて見るものがありました。

 


 これ。

 


 花だけ見るとオオイヌノフグリに似てますが遥かに小さい。特徴的な葉の形で名が知れました。これフラサバソウと申します。何だフラサバって。

 


 ヨーロッパ原産の帰化植物です。この類は学名ではウェロニカ属Veronica と言って女性の聖人名、でも和名は「~フグリ」とか「~クワガタ」という微妙な名が一般的。しかし名付けに際して植物学者久内清孝が「フグリでは面白くない」と、明治日本に貢献した二人の仏人フランシェとサヴァティエから取って和名にしました。面白い植物学者もいたもんだ。


 目立つわけでなし繁殖力旺盛というわけでなし、外来種のくせに一時は絶滅を心配されたりした小さき者です。こんな市街地のど真ん中の空白地でささやかに土の露出した斜面。まさにお似合いの場所で細々と生きてます。いえ今まで意識しなかっただけで、意外とそこらへんにあるものかも知れません。今度注意して歩こう。

 


 人知れず朽ちていくいにしえの建物。人知れず生を紡ぐかそけき草花。4月から1年歩き続けましたが、発見は尽きません。

 

 

 

 

 

↓ 眼鏡屋さんの廃ビル、ちょっとだけ触れてます。

↓ お願いします。

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

カタクリ咲いて我はおり スプリングエフェメラルつれづれ

 


      東風こち吹いて カタクリ咲いて 我は居り


 この春初めての東風が吹きました。雪のない茨城でスプリング・エフェメラル(春の儚い花々)の季節です。人の夢と書いて「はかない」。まこと、一炊の夢のごとし。

 


 じきに雨だという予報をまだ晴れてるじゃんと蹴っ飛ばして、やって来ましたへの6号フィールド。

 


 なんとなく最初に見るのはコレのことが多いキクザキイチゲ。茨城のものはほとんどが白ですけど、そういえば昨年の新潟にはいろいろなのがあったなあ。

 


 よく似たアズマイチゲは、花が重いのか疲れているのか、皆うつむいていました。元気出せ。

 

        
 離れた場所に白いひと群れ、咲き始めたニリンソウ。ここまで3種のキンポウゲ科の中では当地で一番数が多いものです。そういえば新潟ではあまり見かけなかったような…… いかんいかん、新潟のことは脇に置いて。

 


 カンスゲがボクも撮って撮ってとしつこくアピールしてくるので1枚だけ。

 


 湿った腐葉土の上にはネコノメソウ。今日このフィールドで見た唯一の黄色い花でした。

 


 これもアピールがうるさかったユリワサビ

 


 そして…… ありました。もう咲いていた。カタクリです。

 


      陽が翳ってきました。雨の前に、この舞姿を写し取らねば。

 

   
    かたくりは 耳のうしろを 見せる花   川崎展宏

 


 やはり新潟に言及せねばなりません。かの地ではどのフィールドでも落葉樹林の林床をカタクリが埋め尽くしておりました。多雪気候によく適応した植物です。そして雪国の人よ驚くなかれ、ここ茨城でカタクリは、群落があればそれで町おこしが始まってしまうくらい貴重なものなのです。

 


 また、北の国に浅い春を追う旅に出たくなりました。ただ昨年の新潟があまりに美しすぎて強烈すぎて、次はどこへ行っていいのかわかりません。

 

 

 

 

 

↓ 忘れえぬ旅というものがあるなら。

  

↓ ランキングご協力ください。

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

1LDK家賃18万

 

 浮世離れが信条のジノさん、今回は生々しいお話でございます。


 最近私の周囲で話題になったのが、市内に建てられた某アパート。場所は私の生活圏内、つまりは水戸と言っても場末です。家柄も財産もまあいかにも庶民な、例えば高級外車がシャッターの奥に控えているなんてことのない、そんな家々が立ち並ぶ界隈。そこにとある旧家を潰して建てられたのが切妻屋根の2階建て。中身が縦に3等分されて3世帯各2階建てのいわゆる棟割長屋でございます。

 


    パンフレットを参考に大雑把な間取りを示すとこの通り。

  
 シャッター付きの車庫、今どき流行りのガレージハウスですよ、カッコいいなあ。で周辺庶民が色めき立ったのは、もちろん表題にもしたその家賃であります。


 月に18万円。


 うわあ、どう考えたらいいんだろう。間取りから見ると家族持ちには手狭すぎます。独身者向け、それでこの家賃。独身でこれだけの家賃を払える勇者がこの世にはいるということか。いえ都会なら、それなりのメリットのある立地なら驚きませんが、周囲は同じ2階屋の低層住宅が立ち並んで眺望は望めません。これだけ払うなら市内の高層マンションのいいとこに住めるんでないかい。


 茨城県内で不動産が高いといえば水戸つくば。最近はそのつくばから延びるつくばエクスプレス沿線も人気です。水戸はともかくつくばは素敵ですねえ。つくばに住んでいるというだけでハイソでリッチで、いかにも外車に乗ってます的な雰囲気が立ち上ります。そこで「1LDK つくば ガレージハウス」で検索したら、同じ新築で、でも3棟がそれぞれ独立していて間取りにも少し余裕のある物件が出てきました。家賃16万円。


 ひええ、水戸の新築、つくばより高い。水戸は鉄道と道路網が便利なくらいがアドバンテージで、人口は減っているし行政の評判は悪いし(ごめんなさい)、なにより場末の立地だし、この物件のこの家賃、どうやって算出したのだろう。

 


 売りに出たのが1月の末。直後に駐車場(ガレージ外に1台分ずつある)にポルシェとフェラーリが停まってました。うおおお、この界隈で初めて見たぞお。さすが家賃18万、見に来るのはこのクラスのお金持ちかと色めき立ったのですが、これは宣伝写真の撮影でした。しかもガレージにフェラーリは入らなかったらしい。うーむ。

 


 私が社会に出た時の貧乏話は以前にもお話ししました。世はバブルで物価は実質今より高く、手取り10万では食に不自由することもありました。住んだのは土浦の場末も場末、近所の自動販売機が年中壊されているような治安状態のまあエキサイティングな土地で、当時で築20年を軽く越える木造の一軒家、狭い敷地に同じものが4棟ひさしを接して建っていました。6畳二間に台所、風呂、トイレ付、クーラーなし。こんなものかと特に不満もなく4年住みました。家賃2万5千円では文句の言いようなかったし。その後順調に給料は上がりましたが、この時の貧乏経験のおかげで私は経済観念を破綻させずに済んだと思ってます。

 


 さてかの物件。どんな人が住むんだろう。ボンボンのチャラ男か。独身を貫いた堅実な紳士か。3月末の現在、まだ入居者はありません。

 

 

 

 

↓ 貧乏時代の話。5年も前にこんなことを書いてました。

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

久慈川メノウ最新情報

 

 信徒の皆さま、お元気でしょうか。久慈川メノウ教 教祖ジノ。でございます。今日はそっちの設定でお願いします。


 私の記事のメノウ拾い関係の閲覧数がぐぐっと上がりました。気候も良くなったとて、ひとつおメノウでも致そうかという方が増えたのでございましょう。うふふふふ、来たれや聖地に。

 


 最初にここ。以前も一度ご紹介した久慈川の河原です。ワダチがわかりますか。一般車が入れないように柵で封じてある場所ですが、たぶん地元の農家のおっちゃんが河原で釣りしたり野菜捨てたりするための細い軽トラ用の道がありました。これが河原遊びする人たちに見つかって、大型四駆で細道を広げて乗り付けたり、ジムニーで河原をワダチだらけにしたりする人が現れ、これが地元の人のカンに障ったようで

 


 細道の片側に溝を掘って大型車が入れないようにし

 


 河原の降り口も横溝が掘られて車が降りられないようになっていました。地元の農家の人が手で掘ってるんだよなあ。


 双方言い分はあるでしょうが、メノウ信徒の皆さんにはとばっちりですね。私はどなたの権利も及ばないところに停めててくてく歩いてくるので影響ありません。しかし状況はよろしくない。以前に久慈川メノウ教教義をご紹介しました。地元に決して迷惑をかけないというのはその大事な一つ。河原も、そこで拾えるメノウも誰もが利用できる共有財産コモンでございます。他を考えない傲慢は必ず揉め事の原因になります。地元とモメて通行止めにされるなんてのは愚の骨頂。ここの一件は実に象徴的です。下品な人々は必ず一定数いるとして、せめて我々メノウ教徒は紳士たりえなければ。

 


 ここでメノウを探してみましたが、何も拾えませんでした。…… なんか小言みたいなことも言ってしまったし、景気が悪くなってきましたねえ。人生は明るく楽しく。近日中にメノウ拾いに来る方にアドバイスを。


久慈川本流の、人が入っていない河原を狙うこと。
② 同じく本流の、水位が下がった水際を探すこと。


 昨年も同じ時期の記事で嘆いておりました。雪国では雪解け水で川が濁流でしょうけど、ここは雨の少ない土地柄の雨の少ない季節とあって、水位の下がった久慈川水系には人が入りまくって、メノウは採り尽されました。特に玉川は私が一日歩いても1個も拾えません。久慈川本流の河原も同様なのですが、水が流れていた場所は人を拒み続けました。今は日に日に水位が下がっていて、それまで水中にあったものを拾うチャンスがあります。


 では実践。


 ここは昨年までどなたも入ってなかった場所。私が大ナタふるって河原までの小径を作りました。それがすぐ他の方に見つかって、先を越されることも増えました。ちょっと悔しいけど「道トレイル」ってそういうものだし、他所では私も他の方のトレイルを踏んでいるわけでまあお互い様です。

 


 流れから離れた場所のメノウは拾い尽くされておりましたが、水が引いた所で次々と拾うことができました。

 


 こ、これ。この珪化木。以前にも見た。ブログにも載せた。形が良くて、赤いメノウの脈が入っている。あの時はその場に残したのですが、拾われもせず流されもせず。これはもう運命ですね。連れ帰ることにします。

 


 するともう一つ。赤い光が見えるのでメノウと考えましたが、なんとこれ珪化木。メノウ脈入り二つ目。連れ帰ります。

 


 今日のこの場はこんなもんかな。珪化木と赤いの1個はふところに入れさせていただき、あとはいつもの河原のお供物にいたします。

 

  
 久慈川水系、人が入り尽くしていると書きました。どこに拾える場所があるんだとお思いでしょうが、さてこの場所。前に見える河原は人も軽トラもびっちりと痕跡を残しておりますが

 


 水が引いたおかげで以前に行けなかった場所にも降りられるようになってます。これが狙い目で…… ほらあった。

 


 久慈川本流は水が澄んでます。浅くなった流れの中に沈んだメノウも拾えたり。長靴でじゃぶじゃぶと久慈川を歩き回ります。…… 使わない筋肉が使われて、夜になってから太ももが痛みました。

 


 うわあ驚いた。河原のずっと高い場所に、真っ赤なメノウがちょこんと乗っていました。雨に洗われたきれいな姿は買ったメノウを置いたみたいですが、私はヤラセはいたしません。本当にきれいなメノウです。これまで誰にも拾われなかったのは、水位とヤブで人が近づけなかったからでしょう。

 


 水中のこれ、拾い上げたら縞模様が見事でした。

 


 河原と川中を行ったり来たり。今日のこの場は当たりです。

 


 浅瀬の水中にお、これはと思ったものは石英のかたまりでした。でもその隣に透明なメノウらしいのが数ミリ顔を覗かせていて、引き抜いてみたら

 


 うわあああ、なんだこれは。玉川でも最近こんなの見てないぞ。本日の大金星です。

 


 うんそれなりに。先日は一日玉川を歩き回って戦果ゼロなんてことがあって、ああわしの時代は終わったななんて思っていたのでまあよかった。

 


 河原の菜の花が咲き始めました。

 


 少し移動して、秘密の河原へ。足跡一つありません。たぶん昨秋いらい誰も入ってません。そんな場所が本当にあるのかって? 小さい河原なら結構あるものですよ。もっとも人が来ないのはちゃんと理由があって

 


 ハズレの場所だったりするんだよなあ。しばらく歩き回ってようやく見つけたのがこれだけ。さっきの場所から1キロと離れていませんけど、条件はむしろいい場所なのですけど、ないものはない。本当に不思議なもので、メノウが流れ着くのは地形とか流速とか、ごく限られた条件を満たす場所だけなんです。

 


 水中にあったこれは母岩付きで質もよくありませんでした。

 


 どうしようかと逡巡しながらひっくり返したらトビケラ(昆虫)の巣が付いていた。現地の者にはたとえ虫でも迷惑かけてはいけません。そのまま沈めてきました。


 ハズレとなったら深追いは禁物、すぐ転進するのが私のフィールドの流儀、と言いたいのだけど、水位が下がって歩いて行けるようになった浅瀬が近くに見えました。ううう、こういう誘惑に弱いのだ。

 


 おお晶洞付き。

 


 ちょっと赤いやつ。

 


 こんなことになりました。最近にしては上等です。


 今回の一連の収穫物、何個かは収容させていただきますが、あとはいつもの河原のお供物です。ほとんど小さいもので恐縮ですが、赤いのやら晶洞のあるものやら多様です。赤いのは


 こんなところ。大き目のものは


 このように露骨な隠ぺい工作をいたしましたので、メノウ教徒への目印だと思ってください。あと、河原で車を乗り回す輩に踏み割られることは避けたいので、そういうのが集まる河原の奥にはあまり撒きません。

 


 最後に、久慈川メノウ教信徒の皆さまに残念なお知らせです。私がメノウ教の重要聖地と位置づけたかの 山方淡水魚館 ですが、ついにというかやっぱりというか、この3月いっぱいで閉鎖されるそうです。オオサンショウウオの山ちゃんや多くの魚たちは他の施設にもらわれていくそうな。どうか信徒の皆さま、久慈川に燦然と威容を映すこの大宝物館を、最後に見てやっていただければ慶賀の至りでございます。

 


 37年の歳月を感じる新旧パンフレット。旧はグラビア印刷でモデルまで使い、新はプリンター打ち出しの手折りです。なんと酷薄な時の流れであることか。

 

 

 

 

追記

 この記事を上げたあたりから雨音が聞こえ始めて、結構な降りになりました。季節を告げる雨、メノウ流しの雨です。ご安心ください、私が拾った分などもう補給されました。久慈川水系春のシーズンの開幕であります。拾えるものなら拾ってごらん、おほほのほーっ  …… アオってどうすんだ。

 

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

接写でごまかす

 

     


          スギ花粉こあいよー。


 先日の御岩神社いらい、外出に躊躇するようになりました。山は言うに及ばず、川沿いの低地は午後になると上流の山から下りてきた風のせいで濃密な花粉雲に覆われてます。フィールド歩きなんて正気の沙汰じゃない。


 というわけで今日は在宅。こないだ初崎海岸でいただいてきたバットいっぱいの砂からシーグラスと高温石英を拾い上げて、かのプリン瓶の中身にしたいと思います。こんなことで一日をつぶせるなんて、どれだけ幸せなんだろう、わし。

 


               どーん。

 


 まずは全体から目立つシーグラスと肉眼レベルの石英を拾って

 


 蛍光を発するのはサンショウガイ1個と、ウランガラス(のかけら)3個。

 


 あとは小分けにしながらミリ単位のをつまみ上げる、まあ代わり映えのない時間つぶしであります。

 


 あれだけの砂からこれだけ収穫。ハイターで消毒いたしまして、濡れて光る姿がキレイ。接写のしどころです。どうかご覧くださいませ。

 


 シーグラス、ここのものは本当に色味が豊富です。

 

 


 石英もいっぱい。透明度が高いのが魅力ですが、六角結晶はごくわずかです。

 


 希少な赤。

 


 薄紫も希少。

 


 透明なものを撮るテクニックって何だろう。反射を利用してみました。

 

 


 六角錐型の高温結晶。

 

 


 バックを工夫したら、あ、そこそこキレイ。

 


 で、プリン瓶1個に収めました。これだけ集めるのに結構な労力であります。当初の予定ではより小さな玉川ざくろ石でこれを満たそうとしたわけで、やっぱり無謀だったなあ。

 

 

 なんてことしていたら外では寒冷前線が通って雨が降り、花粉が一掃されたようです。野辺の花にはまだ早い。久慈川でメノウでも見てこようかな。

 

 

 

     
 ちなみに1本残ったプリン瓶、とりあえずセブンを苦悩させてみた。

 

 

 

 

 

↓ 何と言われようとも。

↓ お願いします。

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ