我が名はヘビイチゴ。
とんでもない濡れ衣からつけられた名ですが,気に入ってます。
ジノ。さんがお庭を造った時に「三角地帯」というひと隅に芽生えました。ジノ。さんは一体どこから来たかと驚かれたようですが,自分でも来歴を知りません。興味もありません。一緒に現れたアマドコロさん(ふ入り)やコスミレ・ヒメスミレさんと版図を争いながら,ここが気に入って暮らしてます。
春に咲きます。
花びらが散ると
実を付けます。ヒトは「偽果」と言うそうですが,実に本物もニセモノもありません。赤い実の大好きなジノ。さんは大層喜んでくれて,ほかの雑草さんたちが引っこ抜かれる中で大事にされてます。同じ雑草が出自の身で破格の扱いです。
おかげさまで繁茂しています。
他のものから見下ろされても気にしません。だってヘビイチゴですから。
その後も三角地帯には次々と新参のものたちが現れました。あるものは根付き,あるものは滅び。ジノ。さんは調和を乱すものがお嫌いのようで,背が高すぎたり葉が大きすぎたりするものは排除されてしまいます。
私は安泰です。ジノ。さんが見守ってくれるうちは。
ささやかな雑草のこの身です。誰にも迷惑をかけません。声高な自己主張も控えます。
だから……できることならこのままずっと,この庭のひと隅で生きていきたいと願うのです。