今年,何度か花園に行っても冬虫夏草が見られないのは,長梅雨の影響で季節が後ろにずれこんでいるためと思ってました。もしそうなら今頃がチャンスかな,と。
でもああ花園は遠い。県内とはいえ出不精の私には十分に遠い。しかもこの暑さときた。逡巡したあげく,今日は御岩神社に詣でることにしました。若干日和ったことは認めねば。
御岩神社にしたのは別の理由もあります。この夏は暑さにクラクラしてたせいか安易な写真しか撮ってないなという反省があります。ひとつ御岩神社の神さまの前で気合の入ったのを撮って,この夏の総括に代えようかと。接写の機材もずいぶん永く使い込んできたので替え時を見極めたいとも考えています。さて。
今日も晴れた。でも今年の異常気象には私の晴れ男パワーがさっぱり通じません。用心しよう。
ちなみに外界は今日も酷暑なのですが,ここ御岩神社の境内は谷から吹き降ろす涼風で薄着では肌寒い感覚があります。すごいなあ御岩神社。
ミズバショウ池でオニヤンマが盛んに産卵してました。この世界最大級のトンボがそこらになんぼでもいるんだから日本てすごい。
さて接写だ。水の滴る岩に張り付いたウチワゴケ。こう見えてシダ植物です。
三本杉の根元にキバナアキギリ。ああ秋の花。
その構えたカメラの隣に巣を営んでいたクモ。レンズを振ってついでの一枚。種名は知りませんが色彩といい造形といい,ただ美しい生き物です。
落ちていた材が青緑色に染まってました。前に花園でご紹介したロクショウグサレキンという菌類(キノコ)です。材の一端で一斉に子実体(キノコ)を出してました。
緑の毛氈にオウレンの葉。春の開花期にはその花だけを目的に出かけたくなる愛らしいキンポウゲ科です。
これもキンポウゲ科。暗い林床で哀れなほど貧相ですがヤマキツネノボタン。
微細な花は拡大すればちゃんとキンポウゲ。
石段に何かいる。
蝶です。ムラサキシジミの…… メスかな。羽化したての新鮮な個体。
という感じでだんだん調子が上がってきたところで
え…… ?
カメムシタケ! 冬虫夏草! 御岩神社で初めて見る冬虫夏草です。
冬虫夏草としてはむしろ普通種ではあるのですが,まさかここで見ることになろうとは。花園まで高速代かけて行かなくて良かった。さすが御岩神社の神さまはサービスが違います。ありがたや。
目が慣れると,そこら中にカメムシタケ。ちょうど発生のピークに当たったようです。
普通種と言いましたが,もちろんどこにでも出るものではありません。冬虫夏草はいずれもその土地の種の多様性の象徴です。原生の自然が保たれていて,生物の多様性が維持・保全されている土地にしか現れません。なぜ多様性が重要なのかという問いに対する一つの解答なのです。だから見つけるとうれしい。そういう場所にいま自分がいることがうれしい。
もちろんここは神域,持ち帰ろうなんていけません。ただ確認だけはしたいので,1本だけ掘らせてもらいました。意外なほどちゃんとした大型カメムシが宿主でした。
アオカメムシの類でしょうか。まさか自分がこんな最期を迎えるとは夢にも思ってなかったろうなあ。
傍らにいたドウガネブイブイ。何があったか,前翅に大穴が開いてます。たぶんもう飛べないでしょう。本当に,人生何があるかわからない。
と,ここでいきなり水入り。雷鳴一つ鳴ったかと思うと,いきなりの雨。お堂に避難です。晴れ男,形無し。
そしてまた晴れ間が。今日はこの後もこんな降りみ降らずみの天気でした。
水気を含んでより森閑とする境内。
雨を受け陽を受けて生気を沸き立たせるようなモミジガサ。古いカメラをいたわりたいので今日はこれで退散です。お賽銭を奮発して神さまに御礼。天気を含めていい一日でした。
追記
念のため申し上げますが,この記事を見て御岩神社にカメムシタケを取りに行こうなんて思わないでくださいね。御岩神社に迷惑が掛かります。ここのは神さまのものですよ。それにこの記事を見てから出かけても発生期は終わってますので,どうかよしなに。