ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

小さきものにこそ真理は宿るのだ

 

 御岩神社詣もうで。少し気合いを入れて、お花を撮らせていただこうと思います。供はコンパクトカメラ権三ゴンゾーさん…… 6年間使い倒して、最近ピント機能が怪しくなってます…… と、ソニー90ミリとタムロン90ミリのダブルマクロレンズ

 


 駐車場の池の上に、キササゲが咲いてます。

 


 むぎゅうう。池に茂るミズバショウの葉に紛れてザゼンソウが一株。その有りようが面白くて、いつもレンズを向けてしまいます。

 


 鳥居下にはヤブカンゾウ

 


 バイケイソウ。少しずつ花の種類が増えているような。

 


 参道を進んでユキノシタ。本来の花期からだいぶ遅れてます。谷を吹き降ろす涼しい風のおかげでしょう。ちゃんと小さなハチが授粉を手伝ってます。

 


 私が勝手に緑陰の小径と呼ぶ暗いコケの叢くさむら

 


 今年も貧相なミヤコワスレがただひとり。増えもせず枯れもせず、毎年この暗い林下でひっそりと花を開きます。いったいいつからこのひそやかな暮らしを続けているのか、誰にどこから連れて来られたのか。むやみな擬人化は控えるべきですが、この株の来歴を想うたびにわが身の傲慢を恥じます。

 


 マルチスピーシーズ人類学、という学問があるそうです。2010年ごろから使われる言葉で、「人間は他の生物種と相関しながら存在している。他の生物種は人間にとって『共に生きる』存在なのだ」という立ち位置でヒトの文化を語るものでしょうか、日本でも研究する人が増えているらしい。


 んなこと言われんでも分かっとるわい、と多くのナチュラリストは思うでしょう。何をいまさら、と。新しい横文字に興味を持って取り組もうという気持ちはわかりますが、これ絶対に日本人とキリスト教徒では根本の思想が違いますよね。人間を神の似姿の特別な存在とする一神教と、人間を生成流転する自然の一部と考えてきた私たちでは、自然観はかなり異なるでしょう。外国での研究と整合性は取れるんだろうか。


 いえ、この学問を否定するものではありません。私のような者が「なんとなく理解している」では、自然破壊を止める力にはなりません。それを理論づけて世に訴える人が必要です。個人的に、この学問の伸展を期待いたします。


 私にできるのは、身近な自然を拡大して皆さまにご覧いただくこと。それがこの世界を理解する大きなきっかけとなれば、こんな幸いはありません。今回は御岩神社をお借りして私なりの自然観をお伝えするのが、真の目的でありました。

 


 さてここは鳥居からほど近い参道の一隅。権三さんが撮ったこの視野の中に、どれだけの花が咲いているかおわかりになりますか。一見してよく管理された美しい苔庭、でもヒトが手を加え続けるこの環境を利用して、実は多様な植物が息づいてます。

 


 ヤマキツネノボタン。直径8ミリの花。これでもここに生きる者では大きい方です。

 


 日照がないゆえに哀れなほど貧相なのは、上のミヤコワスレと同じです。どの花も、本来5枚あるはずの花びらが3枚しかありません。

 


 それでも驚くべし、ちゃんと訪花してくれる虫がいるんです。…… すいませんピントが間に合わなかった。微小なハエの類です。かそけき花にはかそけき虫。同じ境遇の者どうしが助け合っているように見えます。

 


 これもこの場では大きい方の、サギゴケ。唇弁という下側の花びらの表面の怪しげな毛が写りました。

 


 コナスビは前にもご紹介しました。サクラソウ科という賑やかな一族にあって、敢えてミニマムに生きるものです。

 


 御岩神社の苔庭の主役ムツデチョウチンゴケの、その胞子のう。花じゃないけど花のようなものということで。繁殖期は春で、これは少し出遅れ。気の毒に、虫にかじられてます。

 


 私の好きな赤い実の元、ヤブコウジ

 


 素早く動き回る美しい虫、アシナガバエの一種。こう見えて肉食で、小さなハエとかを捕えますけど、これ自体が5ミリほどなのです。こんな小さな世界にちゃんと食物連鎖が存在するのもまた驚異です。

 


 さあこれは小さいぞ。大きなハート形はこのブログでおなじみコミヤマスミレ、そのすき間からひょろひょろと伸びるのがヨツバムグラで、今日はこちらにご注目。ちなみに1円玉の直径は1.5センチです。

 


 ヨツバムグラの花の直径1ミリ! 小さすぎて全体にピントが合いません。風でブレるし、10枚以上撮った中の何とこれがベストショット。ああ、まだまだ写真の道は遠い。

 


 で、ちゃんと来るんです。1ミリの花に0.8ミリの虫が。もう感心するしかない。

 


 暗い参道ですが野辺の草オオバコがあります。日なたのものよりやはり貧相で、花穂も短い。普通は根元から先端に向かって小さな花が順に開いていきます。まずおしべが伸びる雄期、めしべが開く雌期、そして果実期と長い花穂に3つの状態が並ぶのですけど、花穂が短いのでごっちゃになってます。伸びる前のおしべの葯が坊主頭みたいで、これはこれで可愛い。

 


 おしべが伸びたのがこちら。この花穂でもいろいろな状態の花が混沌として、個人的には楽しいです。

 


 そして小さな花を撮ると必ず割り込んでくるのが小型アリ。今回はなぜかオオバコの実に群がるアズマオオズアリ。巨大な兵隊アリが有名な種だけどこの場にはいませんでした。

 


 きしゃーっと大あごを広げて…… え?威嚇? 頭の大きさが0.5ミリしかないくせによくもまあ。

 


 どーだあ。タタミ数畳ぶんの面積に、それなりにいるもんでしょ。 あ、例によって黒づくめの男がしゃがみこんでカメラを構えていて、ご参詣の一般人の皆さまに大いにご迷惑をお掛けしましたこと、うふふふとお詫び申し上げます。うふふ。 御岩の神さまごめんなさい。

 


 私がお見せできるのは、せいぜいマクロレンズの能力内のもの。もっとミクロな目で見れば、もっと驚きの世界が見えることでしょう。最近は植物や菌類どうしの目に見えないコミュニケーションも研究されてます。まことに、生命の溢れる日本の森は、無限の驚きに満ちたワンダーランドなのです。

 

 

 


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