
なべあしやまですからねー。ぽんこさーん、なべたりやまじゃないですよー。以上、私信でした。
鍋足山の雪割草ことスハマソウの写真を撮りたい。できれば他の方が知らない新産地で。
そんな浅はかな考えで赴いた鍋足山でしたが、登り始めてすぐに出会ったご婦人に、雪割草の花期は終わっている、イワウチワはまだ咲いていないとの情報をいただきました。ありがとうございます。

でも登る。葉だけ見ればわかる、なんて甘い考えで。春の雨で潤った山はそれなりにイイ感じです。

ミツマタが自然繁殖する谷です。あちこちに惑星のような姿を浮かべています。

ハッチメの滝。岩山なのでこんな小規模な滝があちこちにあって、もっともな名前がついていますがまあ最大落差でもこの程度。雨の直後なら見る価値はあると言っておきます。

途中にある岩にびっしりと着生する植物たち。

オオトラノオゴケ。茎が立ち上がって透明感のある茎葉を光に晒します。ふわふわです。上質なペルシャ絨毯ってこんなものなのかなあ。

コウヤコケシノブ。こう見えてシダ植物。

ウチワゴケ。御岩神社にあるのをご紹介しましたっけ。コケと付きますがシダ植物。
※ 種名間違っていたので修正しました。スーさんご指摘ありがとー。

コウヤコケシノブの古い葉に着生するのはカビゴケ。

ブログで何度かご紹介しました。顕微鏡サイズのコケです。

昨秋の記事で消滅したと書いたフタバアオイはちゃんと芽生えました。

徳川の三つ葉葵はこのフタバアオイを3枚合わせて図案化したもの。ややこしい。
さて、ただ黙々と登れば20分かからぬここまで、実に1時間を費やしてしまいました。写真撮影にかこつけていますが、実はさっぱり歩が進まない。この先に花は無いという情報を得てしまったから。いかんこのままでは。

というのでちょっと冒険を思い付きました。標識のない道を行ってみよう。そこでスハマソウが見つけられればもうけもんです。まずはこんな踏み分け道を辿って。

どうやら沢を詰めるルートのようです。沢登りは上り詰めた最後に岩壁がそそり立っていたりして気が臆しますが、そんときには戻ればいいや。



周囲は集塊岩の大岩塊。這いあがりすり抜けながら進みます。

信じてください、私は本来こういう登りをする者ではないんです。誰も行かないコースを登った!新ルートを開発した!なんて喜ぶ冒険登山や、今日は5分短縮した!途中で10人抜かした!なんて自慢するフィジカル登山などは一歩引いて見ております。でも今日は、まるで導かれるように、呼ばれるように、先行者のかすかな踏み跡を見失うこともなく足が前に出ていきます。

そして突然視界が広がりました。岩塊が消え、谷が広がりました。さっきまでの剣呑な空気が消え、穏やかに生命が憩う匂いがします。

足元に赤い光。キノコです。こんな季節に。

ベニチャワンタケモドキ、という種類かな。

ヒナスミレだ。実は今日のウラ目標の一つ。

残念ながらまだつぼみ。

ベニヒラタムシ。成虫、幼虫ともに朽ち木を棲家とします。忙しそうに歩き回るので写真がブレました。

トウゴクサバノオが咲いてます。どうしたんだ、急に春を喜ぶ生き物たちに囲まれてしまった。

わあこれは。

シロキツネノサカズキモドキという木材腐朽菌、キノコです。ツボの高さ1センチほど。

それぞれに光を放って春を喜ぶ生き物たち。

標識が現れました。猪ノ鼻峠から鍋足山に向かう道に合流したようです。それで思い出しました。この谷、初めてじゃない。さっきは偉そうなことを言いましたが、実は若き日の冒険登山の思い出。猪ノ鼻峠付近から道なき沢に取りついて、しばらく彷徨したあとでこの道を見つけ、そこから鍋足山を目指す途中でこの谷に辿りつきました。平らで開けているのにやぶが繁茂するでなし、切り立つ岩に四周を閉ざされた空気感、豊かな土壌、生命の気に溢れた静謐な森。手帳には「不思議な谷」と記録しました。当時も今も、全く同じ感覚をこの場所に感じたわけです。

静かの谷、と勝手に命名します。ここは四季を通じて見守りたい。きっと面白いものが見られます。

ちらほら生える大木は

ケンポナシ。これは実というか果托というもの。たくさん落ちてました。水戸あたりにも生えてますが、こんなにまとまって生育するものでもない。

しばし憩いたいのですが道も究めたい。沢の詰めなのでやはり急傾斜、でもロープが整備されています。

やがて稜線に出ました。

右、三角点峰への道は閉ざされてます。崩落でもあるのでしょう。こういうのを乗り越えたりした若い日もあったなあ、ああ恥ずかしい。もうそんな外道はしません。

左、大岩を巻くカニの横這いやらⅡ峰の岩壁をすり抜けるやらして鍋足山本峰に至ります。知っている道だし、今日はあの谷に戻りたい。ここから来た道を下りました。
命名したばかりの谷をしばし歩きましたが残念、スハマソウはありません。下山しよう。来た甲斐はあった。

と素直に同じ道を辿ったつもりでしたが、ふと気づくとまた違う踏み分け道を歩いていました。沢が下に見えるので道を違えたのはわかるし、戻るのも容易いこと。でもまたアレです。呼ばれたような気がする。このまま進んでみます。

この奥。

もう道はありません。谷です。狭まったところにイタヤカエデの木。ここのヌシ、いや門番でしょうか。手を合わせて通行を許してもらいます。すると通り過ぎたその根元に

ヒナスミレ。

人呼んでスミレのプリンセス。早春の山中でしかお目にかかれない深窓の姫君です。

これに呼ばれたのかなあ。

ここもまた不思議な谷です。笹の茂るやぶがない。地滑り跡のような地形、南東向きでよく陽が入る。先ほどの谷とは別の意味で良い空気感があります。ヒナスミレに合わせて雛の谷と命名しちゃおう。ここもまた季節を違えて来る価値がありそうです。

ヒトリシズカ。よく見ると毛虫が一匹、葉の陰で身をすくめています。

この世界を必死に生きようとするもの、そっとしてあげましょう。花だけ写るアングルで、ほうら静御前の舞い姿に。

タチツボスミレは、陽を浴びて春風にさざめきながら群生する姿が真骨頂だと思います。

日本の気候に適応した森のスミレ。

早春の定番、ミミガタテンナンショウ。
スハマソウはなかったけれど、見るべきものは見ました。下山します。

登り口の笹原の谷、そこここに咲くミツマタのひとつに、何かが付いてます。

トラマルハナバチの、たぶん女王。まだ王国を持たない女王。じっとしています。もともと大人しいハチですが、写真を撮るさいに枝が揺れても動かない。カメラが寄っても動かない。何があったのか。どうしたのか。何も助けてやれないことを歯がゆく思います。

笹原の登り口。今まで何十回と来ていて、実は見られていたことに今日初めて気付きました。

いつからここに。非礼を詫び、手を合わせて帰りました。
今日のこれ、最中は冒険しているつもりでしたがさして危険な目に遭ったわけでなし。探検と言うのも既に誰かが歩んだ跡を辿ったのだから適切ではない。というわけでただ迷ったと。鍋足山に迷う、それなりに楽しゅうございました。
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追記
ここまで調子良く記事を更新してまいりましたが、明日より三日ほど新潟県の長岡に遠征してきます。しばしのおヒマ、お許しくださいませ。