明山から下山して,そこは上山うやまという集落です。このあたりも昔にずいぶん歩き回ったものですが,十数年の時を経て空き家が目につくようになりました。
多くが山持ちの,実は裕福なお宅が多くて,失礼ながらとんでもない山奥というか山の上なのに瀟洒な建物だったりします。それがすっかり草生して。不便なのはわかりますし,お子さん方はみな町住まいでしょう。私がそんな立場なら,迷わず老親を下界に呼び寄せます。かくして山村は消えゆく。
先祖が必死で拓いた水田が藪に消えてます。すべてが忘却の彼方。
この道の先にも人家が2軒ありました。かつて放し飼いの犬に吠えかけられたのでよく憶えてます。
道にはケヤキの落ち葉が散り敷いて,人の踏みあとはありません。
1軒の,そう犬を飼っていた家への道はほぼ草の中。この日本ではヒトの力が弱まればすぐ植物がすべてを覆いつくします。
もう1軒はさらに山の上。ポストにかつて書かれていた名がもうありません。
ここを辿って行き着く我が家。
この暗がりの先にどんな生活があったんだろう。
かつての火山活動のあと。ここはさらに遡れば荒々しい地球のエネルギーで満たされた場所でもありました。
大地もヒトも,もちろん生物も変わりゆく。ここらの林床はかつてスズタケという笹で覆われていました。
しかし数年前に一斉に花が咲き,枯れました。地面が明るくなり,他の植物が成長するチャンスです。この後の変化を見届けるつもりです。
道の片側は例の硬い硬い集塊岩がむき出しになってます。道を作るために苦労して砕いたのでしょうけど今はそれも空しい営為でした。上からしみ出した地下水がいつも表面を潤します。そこに落ちたジャノヒゲの実が鮮やかです。
土も養分もろくに無く,コケが優占する小世界。
シノブゴケが綺麗。好きな苔です。
わずかに地衣類,シダ植物,限られた種子植物。
マルバマンネングサに花をつけたものがありました。本来の花期は夏です。貧栄養の環境,水分の過多,極端な光不足。諸般の事情があったのでしょう。ようやく成し遂げた,誰にも見られることのない開花。
必死に生きねばならないのは誰でも同じです。この株は花に何を託すのか。
お気づきでしょうが,このささやかなコケ世界に魅せられてます。そしてこの絶景極まる世界で生を終え,いま静かに朽ちていくものがあります。究極の絶景とはそこで死にたくなる場所のこと。このコガネムシが切に羨ましい。
明山や篭岩にお越しの際は,途中のこの展望台にお寄りください。その名も休場やすんば。
入り口にある農家も空き家になりましたが管理はされているようで,駐車場を皇帝ダリアが見下ろしています。高さ3メートル。本当に化け物だなこれ。
いえ,これはこれなりにもてなしてくれてるような。
展望台からの眺め。遠くの雲が雨を降らせています。冷たく寂しい雨なんだろうなあ。
山登ったり風景見たり。
沢で拾ったメノウは富岡橋に置いてきました。それなりの一日でした。
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