ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

びなんかずら

 

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 通りすがりの藪の中に,見事に色付いたビナンカズラの実がいくつも下がっていました。

 

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 赤い実の好きな私がとりわけ大好きなものです。分布の東北限である水戸近辺では珍しいので,見つけたときは思わず快哉を叫んでみたり。いや大げさではなく本気でわああとか言ってしまいます。

 

       f:id:xjino:20211115002658j:plain 鹿の子。
 和菓子の「鹿の子」というのに似ています。実に美味しそうですが,食べても味はありません,毒ではないけど。むしろ鎮咳去痰・滋養強壮の薬になるとか。でもこんな美しいものを崩して酒に漬け込むなんて私にはできません。

 

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 なんてったって学名がカズラ・ヤポニカ Kadsura japonica 。「日本のかずら」だって。記紀万葉の昔から日本人に親しまれています。当時はさなかづらと呼ばれていました。いつしかサネカズラなんて呼び名になり,それも情愛の意味を込めた「小寝蔓」ならまだ情緒もありますが,実が目立つつる植物だから「実蔓」なんて即物的なネーミングなら昆虫学者にでも言わせときなさい。私ならこの植物の名は別名の「美男蔓」一択です。理由はそのインパクト,そしてその謂われ。

 

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 その昔,男性も長髪を髷に結っていた時代。その髪をぴしっとキメているのが美男子の条件だったそうです。そこで使われたのがこの植物のつるから出る粘液。茎葉を水に浸けておくとぬるぬると出まくって,これが整髪料として普通に使われていました。江戸時代の髪結いは外仕事にもこれを小さなたらいに入れて持ち歩いたとやら。美男を作るつる植物だから美男蔓。そうです,ものの名にはこういう謂われ因縁が大事なんです。

 

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 植物名を調べて感心するのは,むかしの日本人の植物に対する造詣の深さ。一つ一つの草木そうもくの茎葉幹根に花や果実,部分ごとにどういう性質があるか,なんの役に立つかを知っていたんです。斧折樺おのおれかんばとか 鎌柄かまつか七竈ななかまどなんてのもいいなあ。灰の木という和名をある植物に与えるまでにどれだけの試行錯誤があったのかなんて考えるだけでもうれしくなります。日本語の植物名はわれわれ日本人に遥か古代から受け継がれた文化の一部なんです。

 

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 ちなみにビナンカズラは関東を分布の東限とする暖地の植物です。前述のとおり水戸はその端っこあたり。残念ながら,決して元気に生育しているわけではなくむしろギリギリ感が見え隠れします。見てこのいびつな実。図鑑にあるような完璧に丸いのはまず見たことがありません。そんな写真が撮りたいです。暖かい地方が羨ましい。

 

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 以前にもお伝えした,我が庭に鳥の落とし物から現れたビナンカズラ。雌雄異株なので最初の開花で確認し,もう一本両性が揃うように植えよう。大事に育てて結実させるのだ。うちであの実が楽しめたらサイコーなんだけどなあ。

 

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 ユズ。

 

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 カラスウリ


 周囲には秋の色どりがさまざまに,この地のこの季節を惜しんでいます。皆さまのご在所の11月にはどんな色彩があるのでしょうか。どうか良き晩秋の日々をお過ごしください。

 

 

 

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