ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ぼうけんだ 大伽藍に宝玉を探す

 

 1月末からこの連休にかけて、同じフィールドに4回も入り浸ってしまいました。目的は冬虫夏草ヤンマタケ。とにかく突き詰めたかった。


 那珂川に注ぐ支流の一つ。20年前、ヤンマタケを見ました。道路が整備されるなど環境が激変して、たぶんもう見られないだろう。いやいやそれでももしかして。頭の中でこういう声が飛び交うようになるともういけません。この目で確認せねば心の声は収まらぬ。


 いつもなら順を追って写真を並べるところですが、さすがにフィールド行4回分超絶大長編となると読者さまに逃げられます。とにかくまとめますね。この冬枯れの中、ネタは緑色のコケ・シダに片寄ります。

 


 こんな場所です。標高は100~150メートル。気候は暖温帯冷温帯の境目、特異な生物分布で知られるあたりです。道路沿いを歩いたり、沢を遡ったり、やぶに突入したり。

 


 乗り越えようとしたガードレールに付いたぶつぶつ。先年の茨城県自然博物館の地衣展を見ていなければ見過ごしてたぞ。これ地衣類です。大きさ、手袋の指先と比べてみて。

 


 冬枯れの風景、汚れたガードレール。こんなかそけきものが、ちゃんと光合成して生きてます。いのちはあまねく地上に。

 


 こういう土の斜面はムカシヤンマがいるぞお。あ、そういう原始的なトンボがいて、ヤゴは湿った崖に穴を掘って住んでいるのです。このあたりはその生息地なので、春になったら顔を見に来よう。

 


 その斜面をよく見たら、カタヒバ。シダ植物。これでも県のレッドデータで「危急種」。わあ、県北山地の岩の上でしか見たことなかった。こんな低標高にあるとは。

 


 乾くとチリチリに。湿れば元に戻ります。

 


 その周囲にこれもびっくり、ウスツメゴケです。異形の地衣類。前に見たのは県北の標高600メートルのブナの森で、そういうところにしかないものと思ってた。

 


 すぐそばにイヌブナ。冷温帯の木がこんなところに。思った以上にこの地は特異点

 


 もっとびっくり、この幹からにょきにょきトゲを生やしているのはイカの木。中部地方以南に分布する木で、もちろん茨城県に自生はありません。有用な木でよく植栽されるので、たぶんこの上流に人が住んでいた頃に植えられて、その種子が流されてここに芽生えた。南の木が、夏でも涼しいこの沢に。

 


 湿った崖のこちら側にはコウヤコケシノブ

 


 こっちにはウチワゴケ。ともに小さなシダですが、ふつうはもっと深山にあるものです。

 


 ミヤマノキシノブ。これも深山のもの。

 


 コウヤノマンネングサ。こう見えて実はコケ植物。これも私は県北山地にしかないものと思っていました。先入観が次々と塗り替えられます。

 


 おお、ウラジロ。シダ植物、というか元々「シダ」というのはこのウラジロを指す言葉でした。南方の植物で福島県が北限ですが茨城でも希少です。大きな群落を作り、そこには神霊が宿るとされました。正月飾りにも使われますね。葉の先端に成長点があって、毎年葉の先に新たな葉を付けて無限に伸び続けます。とはいえ日本本土では2メートルくらいで枯死しちゃう。熱帯では10メートルにもなるそうな。

 


 次々と現れる特異分布の植物たち。南のものも北のものも、さてどうしてここにあるのか。私には迷宮のそちこちに隠し残された宝物と思えます。それを見つけた喜びとともに、それがそこにある運命やら奇跡やらの来歴を想うとき、思考は遠く現実を離れます。まるで異世界を冒険するがごとく。飽きるはずがありません。

 

      
 そう、フィールドは常に一人で挑む迷宮、思索のダンジョンです。荒涼とした古代の寺院、誰もいない石造りの大伽藍がらんで宝を探し歩きながらひたすら自問自答を繰り返す。こんな時間が私には必要なんです。

 


 歩きながら思索する哲学者は、昔はいくらもいたものです。そもそも学問におけるひらめきは、自然の中を歩くときに降りて来るもの。都会の、敷地いっぱいにビルが建っているような大学でスマホ見ながら歩いている奴にミューズが微笑むわけがない。

 


 というわけで今回、ヤンマタケ探索が目的なのはまごうことなき事実なのだけど、ただそれだけのためにこの緑の大迷宮を歩いているのかというと少し足りない。私は私自身の心を整え、明日を目指す道標を見出すために歩いています。

 


 恰好つけすぎた。とにかくヤンマタケはどこだ。

 


 冬虫夏草ガヤドリタケ。ヤンマタケと同じような環境に発生する、いわば露払い。次々と見つけたので、あながち見当違いな場所選びではなかったと思います。でも結論から言うと、ヤンマタケは見つかりませんでした。このフィールドからヤンマタケは「いなくなった」ということになります。ただしこれは絶対不変ではなく、このあと一個体でも見つかれば簡単に覆る「真理」です。ある生物の不在を絶対証明することはとても難しいのです。

 

 


 まあいいや。とにかくここは存分に歩き尽しました。スギ花粉の本番までに、どこかでヤンマタケを見たいと思っています。

 

 

 

 

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