ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ゲイシャさんと遊んだ でも【虫注意】

 

       


 先日のドクゼリに気をよくして、またまた県北山地に来ています。これまでで一番標高の高い、650メートルの山峡です。

 


 水戸付近の低地と木の種類が違うのは当然なのですけど、ここが面白いのはキハダの大木がたくさんあること。ミカン科の、樹皮が黄柏おうばくというクスリ兼染料になる木で、カラスアゲハの食草でもあります。

 


 さらに面白いのは、この木にさまざまなモノが着生していることです。とはいえ、いくら何でも高さ2メートルにタンポポはないだろう。

 


 かなり寒くなる場所ですが、暖地に多いカヤランがびっしり付いている木もありました。それなりに狙われるランなので、うーむ、やはり場所は明かせないなあ。

 


 着生植物の定番、ノキシノブ。ミヤマノキシノブかもしれませんが私の眼は別のところに。

 


 葉の間に小さく貧相なカメムシが息を殺して潜んでいます。

 


 誰もいませんよー 見えちゃいけませんよー お願いだからあっち行ってくださーい
 …… そっとしてあげます。彼らは瞬間瞬間がいつでも命がけなんです。その必死な心構え、見習わねば。

 


 逆に悪目立ちしているのがこれ、ジンガサハムシ

 


 キンピカであることにどんな利点があるのか、誰か研究してないかな。

 


 クマシデの実。ほんのりピンクが目立ちます。

 


 マンサクの葉が枯れているのがわかりますか。20年ほど前からファイトプラズマとかいう病原体による病気が蔓延して、マンサクの成木・老木が次々に枯れてます。個人的にはこの木に特異的に発生するラクシジミというチョウの将来が心配です。

 


 木のうろにニホンミツバチの巣がありました。…… この写真ではわからないな。

 


 カメラを構えてそっと近づくのですが、門番のハチに睨まれました。これ以上はやめときます。

 


 木陰に咲き遅れイジけたヤブデマリ。何事かを期待して来た森ですが、これ以上のモノはなさそうです。そう毎回発見なんてあるもんじゃない。山を降りましょう。


 降りたところの山あいの田んぼ。まっすぐ帰るのもつまらないのでカメラ片手に歩いてみます。ここでずっと昔の春、野生化したワサビとかサクラソウを見ています。何かないかなーっなんて、どうもこの諦めの悪い性格がいろいろと災いを呼んだりするのですが。

 


 でかいハネカクシが歩いてました。人に害をなすものではありません。

 


 アブラチャンの木、小さなポンポンみたいな花で春に水辺を黄色く染めます。これでもクスノキ科で、香油を含み強い香りがあります。

 


 その香る葉をまあ何を好き好んで食うものか。ヒメヤママユの幼虫を見つけてしまいました。すいません風が強くてこんな写真で。

 


 ナツツバキ。野生か植栽か判断がつきません。

 


 林縁にはびっしりと、花期を迎えたマタタビが絡んでます。葉を白くして虫を呼びます。最後に以前の記事のリンク貼っておきますね。

 


 野の定番ベニシジミ。いつ見ても小さな貴石のように光ります。野生化したオルラヤの花で吸蜜中。

 


 さてそろそろタイトルの回収をしなければ。あぜ道を行くことしばし、足元からチョウがものすごい勢いで飛び出し、パタパタという羽音を響かせるとまた足元に戻りました。…… クジャクチョウじゃないか。

 


 英名もそのまま「ピーコック」。ユーラシア大陸北方に広く分布するチョウで、ヨーロッパでも飛んでます。ただし少し斑紋の違う亜種違いで、東アジアのは亜種名ゲイシ(geisya)と申します。あ、名付けたのは西欧人ですからね。…… タイトルの説明になりましたか?

 


 日本国内でも北方系のチョウで、茨城県では北辺の高標高地にだけ住んでます。ただ飛翔力が半端なくて、ついうっかり飛びすぎて低標高地で見つかることもしばしば。今日のここも高度500メートル、たぶん山の上から飛んできたのでしょう。この天地を自在に飛び回れるなんて、真の意味での自由を獲得しています。なんと羨ましい、

 


 近づきすぎるとパッと飛びますがすぐ元の場所に戻ります。自在の翼によっぽど自信があるんでしょう。おかげで匍匐ほふく前進でずいぶん近づけました。やはり虫といえど表情を撮りたいものです。

 


 ぴっと翅を閉じるのが飛び立つサイン。翅の裏側は保護色です。

 


 もう1頭現れて、2頭でときおりイヌみたいにグルグルする喧嘩(巴飛行)をします。元気だなあ。この別個体も一枚。翅の色が少し鮮やかです。

 


 だいぶ昔の話ですが、昆虫研修に参加してくれた方々へのお土産として、蝶の標本を百均のアクリルケースに入れてお渡ししたことがあります。喜ばれました。特にクジャクチョウは評判がよろしゅうございました。当時、山間の農家の庭先で確実にクジャクチョウを採集できる花園があったんです。…… その農家も廃屋になり蝶を呼ぶ花園は廃れました。以来、この異国風に豪奢なチョウとは疎遠なままです。


                                            ※ これはツマグロヒョウモン

 


 2頭のクジャクチョウとしばし遊んで、今日のフィールド行はおしまいです。強いて言うとそのことが今日の戦果ですが、別に誇るものがなくても構いません。歩き見る、それが自分の存在意義だと心得ます。

 

 


 あ、なんか少し不穏な写真になってしまった。この日水戸では28℃、それなりに蒸し暑かったようですが、県北山地は陽射しも穏やかに風も心地よく、この天地の豊かさを知るには文句のつけようのない、そんな良い一日でありました。

 

 

 

 


マタタビの生態。

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