ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

日立の山中で1億年をまたぐ

 


 行くぞ林道ズンズンズン ♪ 暑い暑いと言いつつ飛び回ってます。今日は植物調査のお手伝いで日立の山奥へ。目的地は「小木津不動滝」。…… 不動滝、不動の滝なんて全国に何百とあるでしょうが、ここのは特別です。なんたって、5億年前の岩盤を流れ落ちるんです。

 


 これは小木津自然公園内の露頭。このあたり一帯に見られる古い変成花崗岩が、実は日本最古のカンブリア紀のものだと発表されたのが2008年。茨城大学田切美智雄先生のフィールドワークの成果です。地質学者がツルハシ持って電車に乗った時代をご存じの、最後の世代ではないでしょうか。ああ、フィールド屋の鑑とお呼びしよう。

 


 わがエスクードの車幅ギリギリの林道を行くこと3キロ。車止めから10分ほど歩いて、不動滝に到着です。

 


              おおお。

 


 小さい滝ですが、精霊の気と申しましょうか、実に良い風情です。外界の炎暑を忘れさせるように冷気を吹き出しています。この黒い岩が5億年前の花崗岩

 


 まずはお不動様にお参りして、と。

 

  
 …… て、おいおい。今日の調査のご当人が、止める間もあらばこそ、するすると滝のわきの急斜面を登って行ってしまいました。これがプロの植物屋。おーい落ちたら死ぬよー。

 

   
 救急車はここまで来れるかな。レスキュー車が必要かな。県の防災ヘリは呼ぶと後が面倒なんだよな… なんてことを考えながら、工業都市の一部とは思えない森閑とした空気、清冽な水を楽しんでおります。

 


 まだやってる。その数メートル上に滝を巻いて上流に向かう道があるのを知っておりますが、敢えて黙っていよう。くふふ。

 


 さあそして、本日の私のメインイベント。巻き道を登り、滝の上部、東連津川という沢を、川石を右に左に飛びながら遡ります。やがて森に入った道が平らになったあたりに

 


 案内板がありました。

 


 流れの傍らに丁寧な解説。そうですここは5億年前のカンブリア紀と3億5千年前の石炭紀が接する場所なのです。時代の違う地層が接する境界を不整合面と言いますが、1億5千万年もの時間差のある不整合は日本ではここだけです。ではイってみようかー。

 


 1億年またぎぃ! 右足が石炭紀、左足がカンブリア紀。この写真を撮ってもらいたくて今日の調査に同行したのだ。なんぞ悔いがあるものか。

 

 


 満足です。滝まで戻って昼食。涼しくて、虫もあまり寄って来ません。快適です。

 


 最後にまたお不動様にご挨拶して帰りました。

 


 グーグルマップにも表示されない林道を何キロも辿って、ここは都市の一部とは思えない精霊の森、太古の岩を聖なる滝が流れ下る場所。訪う人を不動明王が迎える天然の霊廟。遥か下界から、一本の道が繋ぎます。


 「道」があって「場所」があれば、そこには必ず「物語」があります。


 人跡無き山中を往き、最初に滝を見出したのは誰だろう。滴る水滴のうちに霊験を得て不動像を置いたのは誰だろう。それが最初の物語。そこを次々と訪れる人の足跡が道になり、物語は上書きされながらここにあり続けます。


 いや、物語が始まったのはもっと昔、5億年前ここに花崗岩が固化した時かも知れません。それはさらに1億5千万年後、堆積岩に削り覆われました。そして永い地殻変動の歴史の中で上昇下降傾斜を繰り返し、最後に陸化したところで地表に現れ、その境界を水が流れることで沢になり滝になりました。永く続く連綿とした「物語」の果てに、今日私が跨いだわけであります。何か汚した気がする。

 

 


 長靴が生えてた。どんな物語が埋まってるかわからない場所です、まったく。

 

 

 

 

 

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