ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

菌はささやく

 


   また大長編です。体調のすぐれない方はご退出ください

 


 ハシゴした2つの夏緑樹林がキノコで満ち満ちておりました。


 ひとつめの森、観察会の一参加者として。

 


 実はここ、6月の記事でニホンミツバチの巣をご紹介した場所でしたが…… オオスズメバチが悠々と出入りしてました。全滅させられたようです。蜂球攻撃でいつも防衛できるわけじゃなかったんだ。

 


 他人と山を歩くのは勉強です。必ず誰かが師となって思い込みを正してくれます。例えばこれ、これまでは考えもせずソバナとしていました。本当の名はフクシマシャジン。がく片の形が全然違うんです。

 


 粘菌ムラサキホコリが胞子を飛ばしていました。カビでもなく鼻毛でもなくアメーバの仲間。湿潤な夏緑の森にはこんなささやかな者も生を営んでいます。


 さてキノコ。顕花植物の花が少ない時期ですが林床はおびただしい数の菌類の「花」でにぎやかです。地味な見かけのは無視してもそれでもキリがない。

 


 名を知らず。完璧なキノコ図鑑というものがなく、絵合わせだけで全種名を上げるのは諦めました。まあ所詮はキノコ好きのただのシロート、種名は目安程度とお考えください。写真を見ていただいて、もって夏緑の森の雰囲気が伝わればなあなんて。

 


 カワリハツ

 


 ベッコウタケ

 


 シロイボカサタケ

 


 連日こんな雲が見えて、どこかしら雨が降ってます。気温も例年より3℃ほど高い日々で、キノコの発生に適しているのでしょう、夏キノコがたくさん出ています。夏キノコと言えば

 


 イグチの仲間。これはキイロイグチ

 


 ミヤマベニイグチ。イグチは大型で肉厚で毒を持つものが少なく、食用に適しているのですがなぜか食べる人があまりいません。まあ夏キノコは虫が付きやすいしね。

 


 シワチャヤマイグチ

 


 ヤマドリタケモドキ。ヨーロッパなら高級食材です。

 


 この日一番の大物イグチ。直径30センチありました。カメラを構える人と比べてみて。

 


 イグチ類の特徴、ひだではなく菅孔という小穴から胞子を飛ばします。種名はわかりませんでした。

 

   追記:専門家にお教えいただきました。アシベニイグチだそうです。

 


 菌、つまりキノコやカビはかつては下等な植物として扱われました。現在は動物・植物と並んで菌類という独立した分類群です。ヒトの目に映るキノコは「子実体」、花のようなもので、その本体は地下にある「菌糸」という細長い細胞の連なり。特別な分解能力を持ち、この世界の物質循環になくてはならない存在です。のみならず、植物の根に「菌根」という共生構造を作って植物の生育を助け、他の菌の菌糸とも絡み合いながら森じゅうの地下にネットワークを築いて情報交換をしています。東北大・京都大の最近の研究で、電気シグナルまで発生させていることもわかりました。飛ばす胞子は水滴の核となって雨雲を呼び雨を降らす気候操作までしていると聞くと、我々人間はただ無知で傲慢なだけであったのだなと反省します。

 


 ま、難しいことは研究者に任せて、いちキノコマニアはまた森を目指します。翌日の夏緑樹林はもう少し標高が上でした。

 


 地衣類。菌類と藻類の共生体。生物分類上は菌類になります。こういう樹枝状のが好きです。

 


 これは以前にもお見せした異形の地衣類、ウスツメゴケ。共生する藻類は藍藻です。

 


 種不明。純白の凛とした立ち姿がキレイです。

 


 ナギナタタケ

 


 ガリベニヤマタケ

 


 コフキサルノコシカケ。よく見たら背後の朽ち木にびっしりと微小な子実体が着生してますが菌類なのか粘菌なのか不明です。撮った時は気付かなかったのが不覚。

 


 ヤマドリタケモドキ

 


 タマゴタケはいっぱいあった。

 


 昨日も見かけたシロイボカサタケ

 


 朽ちたキノコにウラギンシジミが憩っておりました。

 


 種不明、でもきれい。

 


 アンズタケの類かと思われます。

 


 その名もおどろし、ヘビキノコモドキ

 


 チシオハツ

 


 で、出たあ。夏キノコの親分、アカヤマドリ。イグチの仲間です。直径20センチはあったかな。ビア樽のようなボリュームに圧倒されます。

 


 粘菌がありました。腐った朽ち木の表面に点々と、これはシロウツボホコリと申します。一つの高さ5ミリ以下。これは接写せねば。

 


 ああ、光が回らない。くどいようですが菌ではなくアメーバの仲間。

 


 別のこの立ち枯れた木にはいろいろと粘菌が巣食っていたようで、シロウツボホコリの他に、

 


 ウツボホコリ

 


 ツノホコリもいました。

 

  
 そして、これ初めて見ました。タマハジキタケ。腹菌類というやや主流から外れる分類ですがキノコです。この直径1ミリの「タマ」の中に胞子が詰まっていて、タマごとパチーンと飛ばします。3~4メートル飛ぶそうで、当たると痛いとか。いろんなキノコがいるもんだ。

 

 


 さて、こんな微小な連中を接写していて疲れました。ふうと一息して外した目線、そこで何かと目が合いました。

 


 こ、これは

 


 ミヤマツチトリモチだああ。


 は、初めて見たぞ絶滅危惧種。先日「守衛」さんのブログ「カラスとスローガン」で拝見してああわしも見たいのう、なんて思っていたんです。守衛さん、また記事のリンク貼っていいですか。

 


 周囲にあと2カ所顔を出していました。たぶん根はひとつ。一見キノコですがこれはれっきとした被子植物。他種の木の根から全ての必要な養分を抜いて生きる完全寄生植物です。地中でカエデなどの根を自分の根に引き込んで大きなかたまりを作り、花だけを地上に出します。

 


 表面拡大。あまり面白いもんでもないな。一つ一つの花はこのぶつぶつの下に隠れてます。受精なしで種子ができるので表に出る必要がないんだって。

 


 実はこの植物にも菌類が関わっていて、ツチトリモチの根にある種の菌が菌根を作ってその栄養を助けています。不思議なのは寄生に関して。養分を横取りする寄主植物にも菌根があるわけで、ツチトリモチの菌と寄主の菌、互いにどう折り合いを付けているのだろう。たぶん寄主植物が限られるのはそのあたりに理由があると思います。菌類の高度な不思議がまたひとつ。

 

 

 


 静かな森を歩いていると、周囲に満ちるささやきに気づくことがあります。妙な賑やかさに戸惑います。静かなる喧噪。特に夜、それを強く感じます。おかしな感覚と思ってましたが、あながちオカルト的な意味合いではなかったかも知れません。

 


 地中で、朽ち木で、さまざまな手段で、さまざまな媒体を震わせて、菌たちは常に語り続けています。細胞内外への化学物質によるコミュニケーション、そして電気シグナル。それぞれに何十という「ことば」があるそうです。雨が降るぞ。何かが来たぞ。あの木が死んだぞ。…… 静かに見える森は、じつは多様な菌たちのささやきに満ちているのです。

 


 キノコを見すぎて少し当てられたようです。もう寝よう。

 

 

 

 

 

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