ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

#もっと評価されるべきⅡ

 

 また変なスイッチが入りました。まあこういうのも私の一部なんでお許しを。

 


 アニメ映画「アリスとテレスのまぼろし工場」見に行きました。理由は3つ。絵がキレイ、主題歌が中島みゆき、明日で上映打ち切りになる、から。

 


 絵に関して。デッサンが正確で、見苦しいデフォルメがない。人物がよく書き分けられ、繊細な表情と自然な動きは立派に「演技」。背景美術もリアルで一切手抜き無し。…… という基本事項が高いレベルを維持していた以外に、私が高ポイントだと思ったこと、キャラクターデザイン。主要人物がみな設定どおりにちゃんと中学生に見える、それだけで大したものだけど、それ以上に。


 現代の学校が舞台なのに、女子生徒がみんなミニスカートってアニメ、多いんです。真面目設定の子までがミニスカート。地方の普通の中高にそんなところありませんよ、今どき。ギャグアニメならまだしも、ストーリーで語ろうとする作品でヒロインがミニスカート、なのに受験がどうとか生徒会がどうとか。この一点で私にはすべてのリアリズムが吹っ飛んで見えます。アニメ「時をかける少女」を見に行かなかった理由です。マスカラ付けてるような眼とか宝塚御用達の縦ロール髪とか非現実的に大きな胸だとかの「女」記号で画力不足をごまかし、観客が望んでもいないアピールをする浅はかさ。「アリスと-」では見受けられませんでした。真剣に真面目に作られたアニメです。

 


 中島みゆきの主題歌も良かった。「心音しんおん」という曲です。単体で聞くと筋がわからない歌です。でもこれがエンドタイトルで流れ出すと、ああこれは本当に「主題歌」だったんだと理解できました。サビの「未来へ 君だけで行け」では思わず涙がぶわっと来てしまった。読者さまにはご存じの方もおられるでしょうが、私は数十年来のみゆきファンなので割り引いてくださって結構です。でもやはり、中島みゆき「読解力」「言霊を操る力」は絶大でした。かの人がアニメに関わったことはないし、間違いなく超大物です。関係者がダメ元でと脚本を持って依頼に行ったらば、脚本を読んで感動して引き受けてくれたのだとか。

 

 私が趣味でチェックする深夜アニメですが、正直言って主題歌は九割がカスです。作品自体がスカだったり楽曲や歌手がダメだったりという以上に、スタッフの「説明力」と楽曲を作る人の「読解力」のなさが原因だと思います。作品のコンセプトを正しく伝えられるか、それを作り手が正しく理解できるか。特に読解力。YOASOBIというユニットの活躍を見ればそれは明らかです。この方々は若者向け小説の楽曲化という活動で人気を博して、昨年は「祝福」、今年は「アイドル」というアニメ主題歌が大きな反響を呼び、今期のアニメで大きな期待を寄せられている「葬送のフリーレン」の主題歌を任されています。たぶん、小説の楽曲化という活動で、そのストーリーが訴えるもの、作品を貫くコンセプト、そんなものを正しく理解し曲にする力に磨きをかけたのでしょう。そしてもちろん、わが女神にして歌姫、中島みゆきにもそれが備わっています。


 余談になりますが、YOASOBI「祝福」が主題歌だった「機動戦士ガンダム 水星の魔女」。第一部が終わったところで私が散々コキ下ろしました。世間的にもほぼ無視された状態で二次創作も作られません。ガンダムでコケるわけにいかない関係者は再放送を乱発するわネットニュースに情報流すわ有力ユーチューバーに絶賛させるわ、大慌て。これは私の想像ですが、たぶん当初予定された結末はハッピーエンドじゃなかったかも。なぜって、元ネタと言われる「少女革命ウテナ」がそうだから。でもこのままでは悪名が残ります。そこで最終回はみんなが幸せ大団円。最後のシーン、カメラが主役の二人から上へと引いていきます。ああここで「祝福」が掛かればいいのにと思った瞬間、その第一部主題歌が流れ出したんです。鳥肌が立ちました。そして気付きました。この曲は第一部のみならず、作品コンセプトを正しく歌い上げた「正しい主題歌」だったのだと。この最終回のサブタイトルが「祝福」。YOASOBIの曲に頼り切って、「水星の魔女」は一気に名作になってしまいました。

 


 話を「アリスとテレス-」に戻します。私はどうも判官びいきのケが強くて、つい負けそうなやつ、弱いやつに肩入れしてしまいます。このアニメ映画が不評で、地元のシネコンで最初は5つのスクリーンで上映が始まったのに閑古鳥、ついにはスクリーンひとつで一日1回上映、それもあさってには打ち切りと聞いて、こりゃ見てやらねばと思ったのでした。公開から四日で動員7万、配収1億、邦画8位。以後も動員は伸びず順位は圏外、配信やソフトの売り上げがなければ赤字などど噂されるそうです。ヒット作もある監督が原作も担当、制作会社はSランクの有名どころ、全国300館での上映という強気が裏目に出ました。大コケ、今の言葉で言う「大爆死」だとか。


 私は評価しますよ、この映画。でもまあ確かに、一般向けではありませんでしたね。思いますに


① タイトルが意味不明
 アリスもテレスも出てきません。何の伏線にもなってません。監督の個人的思い出だそうですが、本当に無意味なタイトルです。これも含めて、監督の暴走に歯止めが掛からなかったというか、止める人がいなかった。ジブリにおける鈴木敏夫、とは少し違うかもしれないけど、神がかった天才にはブレーキ役が必要です。結果として美術的にはとんでもない高完成度の映画になったのですけど。


② 設定が不明
 これも監督の暴走。この作品はSF用語で言う「ループもの」です。主人公が一定の時間・空間に閉じ込められ、同じ経験を繰り返す。古くはゲーテファウスト(読んだことないけど、アニメ設定の元ネタになったと思しきストーリーや用語が出てきます)、私の世代にはうる星やつら ビューティフルドリーマー、最近の漫画でサマータイムレンダ」なんてのもあります。作品ごとに詳細なループの設定とかルールがあって、読者を考え悩ませる、上手に使えば傑作を作れる手法です。このループもので肝要なのは、いかに自然にその設定を読者に理解させるか。しかしあろうことか「アリスとテレス-」ではその努力を一切してません。設定を説明すべき導入部でも主人公の日常を淡々と描くばかり。宣伝では「時間の止まった町」なんて言ってましたが、どう時間が止まっているのか、外界と隔絶されているのに人々の生活が成り立っているのはどういう仕組みか、まったく説明がないんです。SF的設定を知っている人なら多少は思い至ることもあるでしょうけど、とにかく観客全員の頭に最後まで??が浮かび、物語に入り込めません。これでは傑作になり得ない。監督さん「黙ってオレについて来い」ってこと? いやそう言われても。


 これ以外にも、誰かと一緒に劇場に行ったなら気まずくなるシーンが長回しで延々と続いたり、子供さんにはまず理解できない展開であったり、あまり人に勧められる映画ではなかったのも敗因ですね。

 


 というわけでこの映画、上映打ち切りとあい成りました。一か月持ちませんでした。う~ん、結末に感動しちゃった私としては残念です。あと3回くらい見たいです。美麗で破綻のない画面を見てるだけで忘我のひと時を過ごせましょう。本気でブルーレイを買おうかと思ってます。

 

 

 


 深層意識にふつふつとうねる元漫研会長の思念を吐き出すように、数時間で書き上げてしまいました。ガス抜き完了、次からはまたいつものジノ。です。ご迷惑おかけしました。

 

 

 

 

 

↓ 前の時はまだ冷静でした。

↓ 今回はお心のままに

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