ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

潮騒の石 茨城の海岸メノウをご照覧あれ

 


 2021年以前のこのブログには、疲れたから海に行ったとか潮騒を聞いて心が落ち着いたとか、大丈夫かこいつ的な記事があってまあご心配おかけしました。意に沿わぬ仕事でも器用さが災いして、切り抜けはしても「気」を消耗していた頃。茨城の海はいつでもすり減った気を養ってくれました。

 


 隠居した今はそう疲れることもないけれど、メノウ拾いにかこつけて海岸を歩きたくなります。この日もふとタイドグラフを見て、さほど良くもない引き潮に合わせてみました。

 


 ざざーん。太平洋のうねりが一年じゅう規則的に打ち寄せる鹿島灘。通う船は少なく汽笛がうるさいこともない。ただひたすら響き続ける波音。歩調を乱すことなく、ヒトの心音よりはるかに緩やかな周期で耳を心を震わせます。ぼーっと聞いているだけで胸に詰まった砂袋がすーっと消えて…… はともかくとして、今日のところはメノウじゃ。

 


 でかいメノウがあった。でも残念ながら海岸のメノウの大きいものは波のダメージを受けていて表面がガタガタです。潮に濡れているうちは綺麗に見えますが

 


 乾くともうガチャガチャ。手で研磨できるレベルじゃありません。いつか一線を超えて電動サンダーを買う日が来たらこういうのも拾っちゃうんだろうか。ああ恐ろしい。

 


 見事なアゲート(縞瑪瑙)がありました。海岸では珍しい。これは頂いていきましょう。

 


 サンショウガイだ。ブラックライトで赤く強烈に蛍光を発します。

 


 というかもうすでに太陽の紫外線で蛍光しています。この赤は蛍光ペンと同じ理由で鮮やかなのだ。貝殻はもういっぱい持ってるけど、なんとなくお持ち帰りしてしまいました。

 


 この日の戦果です。最近ジャスパー(えんじ色のやつ)を拾うようになりました。

 


 くらえブラックライト。左に赤く見えるのがさっきのサンショウガイです。以前の記事のリンクを最後に貼っておきますね。

 


 色味がいろいろ楽しいな。地場産てんこ盛り。世に石拾い海岸は多々あれど、私は茨城の海岸しか知らないので暫定日本一

 


 玉髄、紅玉髄、赤メノウ、黒メノウ、ジャスパー、シーグラス。さながら夜店の宝箱。

 


 まずはご当地名物、黒メノウ。ここでは玉髄も含めて「メノウ」と呼ばせていただきます。右側の大きいやつにご注目。

 


 左の丸く曲面になっている部分が黒いの、わかりますか。これは元は丸い大きな玉髄だったものの、その一部です。玉髄の黒化は放射線の影響で、かたまりの表面から始まります。こいつは表面だけが黒化したところで波の力で砕け、打ち上げられたようで、内部の玉髄・紅玉髄がそのままです。

 


 透過光で、あらきれい。細く丸い線の模様はすべて、波に翻弄され他の石にぶつけられたダメージのひとつひとつの、その傷跡。因果な硬さゆえにメノウ類は容易に砕けず、ただ傷跡をその身に刻んでいきます。海岸のメノウはみんな傷だらけ。それぞれの運命がありました。

 


 お次のこれ。石刃のような形の片側は普通に黒メノウ、ダメージ痕だらけ。下辺中央から右に晶洞があって、微小な仏頭状構造が見えます。

 


 反対側。何じゃこりゃ。凸面鏡のような緩やかですべすべの曲面です。そこを白い沈着層が覆って、混沌の霧の趣をかもします。濡れるとこの面が透明になって地の黒が現れるのがまた不気味。この特徴、玉滴石(オパール)と共通します。で、紫外線当ててみたら玉滴石同様に紫の蛍光を発しました。仏頭状構造の表面が玉滴石で覆われるのはこのあたりでは珍しくないし、まあそういうことなんだと思います。

 


 お次は小粒の、最近ボクが集めてるタイプ。透明な玉髄が黒化し、さらにカルシウムが白く沈着したやつ。

 


 透過光で見るとキレイ、ダメージ痕はいっぱい。苦難を経た人の顔に妙味が宿るように、この傷跡もまた石の景色のうちだと思います。

 


 黒いの以外のメノウ一族。照明光、透過光、UV光とりまぜてお見せします。

 


 海岸でご紹介済みの縞メノウ。上下の面はガジガジですが断面はきれいです。

 


 晶洞も残っていて微結晶がぎっしり。運の強い石なのでしょう。ごめんねこんな奴に拾われて。

 


 こちらは長さ3センチ。あの、ブラックライトのUV光で一番強く光っていた玉髄です。

 


 びかーっとな。

 


 ライフルで撃たれたような傷跡が歴戦を物語ります。余生は穏やかに過ごさせてあげましょう。

 


 紅玉髄カーネリアン

 


 透過光で魔界の空。

 


 これまたカーネリアン。拡大して初めて、戦車の覗き窓みたいなスリットに気付きました。

 


 これは全長2.5センチ。ちゃんと晶洞があります。

 


 またまたカーネリアン。この色、海岸ではかなり目立っていました。

 


 こういう柔らかな質感も好きですけど

 


 じつは傷だらけ。この境地に至るまでにどんな苦難を経てきたことか。

 


 メノウのラストはこれ。独特で強烈な景色、これもまたこの海岸の特産ではないでしょうか。この色の成因がさっぱりわからないままに、積極的に探しているのですが今回はこれ1個でした。

 


 過去の写真にも同族のものがあります。透過光で拡大した時の異界感がたまりません。

 


 次はジャスパー類。透明じゃない石にはあまり興趣が沸かなかったのですが、戯れに「おみやげ箱」に入れておいたのを喜んで選んでくれた方がおられました。需要があるなら供給するのみ、喜んで。不透明だし蛍光もないのでざっと外見だけご覧ください。

 

 


 最後に、オルソクォーツァイト。


 ここで私に拾われるまでに、どんな数奇な運命を経てきたことか。その来歴は以前の記事をご覧ください。

 


 大きさの揃った石英の粒からできてます。赤い色はあとから浸透した鉄分でしょうか。この微妙な肌合いが好きな石です。拾い過ぎないように強く自制しております。

 


 とまあ今回の海岸の石たちでした。特に際立ったものが採れたわけではありません。何より海岸で過ごした時間が、私には貴重でありました。…… 最近YouTubeに茨城の海岸でメノウを拾った!やったね!的な動画を投稿なさる方々を見かけるようになりました。私のブログも参考にするのか、かなり閲覧されてます。そういう需要があるのでしょう。でもおいでになる皆さまには、何よりこの地の海の静けさを楽しんでいただけたらと思っております。こんな記事書いといて何だけど。

 

 

 

 

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