右ひざを痛めました。
いえね、軽い気持ちで岩を飛んだんです。心は青春の頃そのままに。でも着地の衝撃が膝にびきぃぃっと。変な声が出ました。このトシでは何が致命傷になるかわからないと学びました。
バンパーをへこませました。
いえね、フツーに林道を上っていたんです。そしたら突然、道だったものが岩場に変わりました。右に左に15度くらいずつ振られ、床下からガコンとかボコンとか音がしました。そのどれかでバンパー左下に凹みが。かつてはオフロード車だったエスクード、今はアーバン仕様なんだと学びました。
自分も、周囲も、環境も、状況も、常に変化するものと心得ねば。
さて。
半日大雨が降り、残り半日大風が吹きました。流されしもの、落ちたるもの多数。翌日、さあフィールドでナニ見よかと心躍らせてしまうこの浅ましさよ。
川のメノウは水が引いてからとして、今日のところはアレにしよう。着生ランの観察です。
以前に何度か記事にしました。ここには県のレッドデータ、カヤランとクモランがスギのこずえに生きていて、風や雪で落下するのです。
キヨスミイトゴケの垂れ下がる怪しい森なのだ。あ、空中湿度が高いってことよ。
さっそくカヤラン。幼い個体です。今回はこのようにスギの球果に付いていてもろともに落ちるものが多かった。根付く場所を選べないもんなあ。
これも球果に付いたやつ。すでに下の方の葉がカビゴケで覆われてます。地上ではすぐに他の者に覆いつくされて光合成ができなくなるのだ。
わあ、とんでもない大株がスギの枝ごと落ちてます。ここまで育つのに何年かかったことやら。
根がうにうにとああ気色いいなあ。緑色なのは根でも光合成するから。ちなみに、多くのランと同じようにこのカヤランにもちゃんと生育を助ける共生菌類がいます。地上で生きられないのはこの菌類が死滅しちゃうのが原因かも。
そう、着生ランは落ちたらおしまい。神さまはそれぞれの生き物の住まう場所を厳密にお決めになっています。そしてそれぞれの範のりを越えるものに容赦しません。樹上から地上への環境変化になすすべもなく車に踏まれ、虫に食われ、菌に侵され。墜ちた後の彼らの運命はまことに儚い。あわれやな かぶとのしたの きりぎりす。
命の灯の消えゆくカヤランたち。え? なんで助けないのかって?
世にはグリーンフィンガーと呼ばれる方々がおられます。「植物を育てるのが上手な人」という意味だとか。実際に私がここで拾ったカヤランを差し上げたらその後何年も開花させている人がいます。でも私は駄目。すぐ枯らしてしまいます。水と陽を十分与えるとコケや地衣類に覆われてしまうとか、地面近くに置いたらワラジムシに残さず食われたとか、かえって不幸な状況にしてしまうばかりです。もう拾って救うことは諦めています。せめて車道上のを茂みに移してやる程度。そしてカメラを構える。
救うでなし、葬るでなし、ただ消えゆく者の肖像を撮る。それが私にできること。
かっこつけてごめんなさい。それでも私がこいつらに執着するのは、何と言ってもその異形性です。なんて変わった奴らなんだろう、どうしてこんな生き方をするんだろう。というわけでこちらはクモラン。実を付けてます。
ああここまで大きくなれたのに。
路上にあったクモラン。ボクまだ頑張れますうとか言ってます。取りあえず適当な枝に乗せてやりましたけど、一度剥がれるともう圧着しないんだよなあ。
環境変化に対応できないランたちと、状況変化を理解できない私。まあ大差なく。ともにわが身の不運やしくじりを人のせいにすることはありません。
↓ いつもペアでご紹介してます。