ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

深淵に銀河を見た / 槙野さやかガラス造形展/常陽史料館

 


 水底に銀河を見ました。深淵の、綾を成す深みの中に。

 


 常陽史料館。芸術家を支援して止まない地元銀行の、篤志という言葉の体現です。入場無料、撮影自由、投稿自由。私も含めて、どれだけ多くの人がここで初めて地元芸術家の創造する美に触れ、驚きを体感することができたか。唯一無二の、まさに聖地と言わせていただきます。

 


 今回はこれ。

 

  
 槙野さやかガラス造形展。槙野先生は2000年の美大卒業以来、ガラスを素材に作品を発表し続けておられる工芸作家です。とはいえ例によって不勉強でお名前を存じ上げませんでした。常陽史料館という存在のありがたさです。さて。

 


 会場。

 

       
 ガラス素材ということで、読者の皆さまはご存じと思いますがわたくし、透明なモンが大好きでございます。期待しちゃいます。

 


 おおお、いいい。なんて素敵な光の造形でしょう。まずは槙野作品の基本構造をご説明申し上げます。蛇足、興醒めかも知れませんが最初だけお許しを。

 


 素材はガラスと申し上げましたがガラスもいろいろです。槙野先生がお使いになるのは最も一般的な「ソーダガラス」。窓ガラスとか昔のコーラのびんを思い浮かべてください。そのソーダガラスの板を何枚も張り合わせ、あとはひたすら磨いて形を成す。すごい労力です。

 


 そしてそのガラスを用いて表現するのは「水」。色を持たず形を成さず、周囲の色や形や見る者をも写し込む「水」です。それは時に、人の心の深淵にあるものを映し出します。私は…… もうタイトルでバレてますね、宇宙を見ました。ですのでここからはワタシ目線の、暗めでどアップな写真が多くなることを槙野先生と読者の皆さまにお詫び申し上げておきます。不気味に見えてしまったら本当にごめんなさい。では。

 


 この作品、遠目には何かを内包しているように見えます。

 


 でも近づくと

 


 消えてしまいます、まるで逃げ水のように。この会場にある作品、どれをとっても着色や混ぜ物なんかしていません。みなガラスの素の光だけ。

 


 なのに作品はとりどりの色に満ちてます。ガラスが生み出す変幻自在な光のマジック。あのポスターからは想像もつかない異空間。いえポスターにケチつけるわけではありません。こんな写真を宣伝には使えない。実物を見に来た人だけが味わえる、芸術家の仕掛ける「驚き」です。

 


 同じ一つの作品が、角度によって、距離によって、違う世界にいざないます。不思議なのは、ファインダーを覗くと肉眼とは別の光が見えてくること。自分はいま何を見ているんだろう、なんてふと。

 


 刻々と変わる水底の世界。

 


 銀河を写す反射鏡。

 


 パウル・クレーの絵じゃありません。ガラスが生み出す光です。

 


 階段に置かれたこの作品。


 見る角度で姿を変えていきます。

 


 階段下に置かれたこれも

 


 ぐにゃりと世界が歪んで、異世界へのゲートに。

 


 おかしい。透明な、ただのガラスなのに。

 

 


 溶け落ちる。

 


 地階の展示室。舞い落ちる雨滴がモチーフだそうです。その瞬間のその姿を写し留めて。

 


 遠目順光では確かにガラスです。

 


 でも近づくと動き出す。

 


 ほうら見えて…… ごめんなさい調子に乗り過ぎました。とにかく光の美しさを私はお伝えしたいんです。

 


 こんな風に。



 宇宙図ではありません。でもハッブル宇宙望遠鏡が捉えた百億光年かなたの銀河団がこんな姿でした。

 

 


 さあガラスが生み出す魔法の深淵に、あなたは何を見ることになるでしょう。ぜひご体感ください。会期は3月17日まで。JR偕楽園駅から徒歩13分、偕楽園では「水戸の梅まつり」やってます。

 

 

 

 

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