ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

めぐるダンジョンの日々

 

 フィールドという名のダンジョンめぐる日々の、ここ一週間ほどの記録です。


第一のダンジョン 氷雪の森

 


 福島県境を目指していたら、林道がアイスバーンになり車を捨てました。北国の人にはどうってことないでしょうけどこちとら雪に不慣れ、無理はしない。

 


 こんなとこにもカヤラン。けっこう寒いとこにもあるもんだ。結局これ以上のものを見ずに終わった雪の中。色彩のない世界を私は不得意にしています。

 


第二のダンジョン 忘れじの谷

 


 コシダの群落が迎える谷の入り口。「コ」シダと言いつつ小さくありません。この場合シダとは無限成長する「ウラジロ」のことで、それより小さいのでコシダ。南方系の美しく逞しい植物で、ハワイでは山火事や噴火の跡地を埋め尽くすんだって。

 


 鉄のゲートで閉じられて、車の心配をしなくていい林道を進みます。ここは何十年も昔に歩いた記憶があります。植林地の中を行く何の芸もない谷ですが、なぜか印象深く、いつか再訪したかった。こうして時間が自由になり、心の余裕ができたことを有難く思います。…… 今年もいい条件で再任用の話が来ましたがお断りしました。もう働きたくないでござる。

 


 わあ、岩一面にスミレモ。気生の緑藻ですけど、こんな自然の場所に群生するのは珍しい。普通は山中の忘れ去られたような祠の石垣に付いています。

 


 変なもんあった。血管模様が気色悪いというか面白いというか。どうやらジャケツイバラの豆ざやの外皮が剥がれたもののようです。この季節ならではの見ものかな。

 


 とりあえずヤンマタケ探索大義名分にしているので沢に降りてみます。冬眠から覚めたサワガニを驚かせてしまった…… のはパンニングで毎度のことだけど、写真をよく見たら背に二つも大穴が開いてました。脚も一本足りない。タヌキとかカワセミとか敵だらけの中で生きている、その厳しさよ。

 


 ここは険しいV字谷が続くのですが、傾斜が緩やかでかつて沼だった場所があって、そこが土砂で埋まっていました。それがいま見慣れぬ、妙に立ち姿の立派な木の林になってます。1本1本にタグが付けらていることから植林されたものと知れます。こんな場所にはて何だろう。

 

 

 落ちた葉と樹皮で正体が知れました、これハルニレだあ。うわあ感動。ニレ科の落葉高木で、九州まで分布しますが北方系。北海道ではエルムの名であちこちに有名な並木道がありますね。茨城では希少で、県内数えるほどしか自生地がありません。それをわざわざ誰が何の目的で植えたのか。想像するだけで楽しくなります。

 


 なんて今のこの谷を味わいつつ4キロほど遡上、沼にたどり着きます。かつては林道の終点からさらにけもの道を歩いてほとりに立ちました。斧を投げ込んだら女神さまがぬっと出てきそうな神秘の湖面でした。今はすぐ隣を新たな林道が通り、周囲の森は伐採されています。ああやはり無事では済まなかったか。

 

      
 それではと今日は林道を越え、峠に向かう山道を行ってみました。初めての領域です。するとぽかりと、巨樹の茂る森に出ました。おおお。我が聖なるツクツク森にどことなく似ています。これ、こういう森を探していたんです。ダンジョンの宝箱にたどり着いた気分です。これで夏に再訪して冬虫夏草があったなら今日のこのクエストは大成功ということになります。なんか調子出てきたぞ。

 


第三のダンジョン 忘却の里

 


 次なるダンジョンは奥久慈男体山に続く火山角礫岩の大岩塊。以前にも記事にした、廃村になりつつある山上の集落です。

 


 水戸ではまだ朝に氷点下なれど、陽射しの暖かなことったら。ダンコウバイがこの山上の春告げ花です。

 

  
 この細い道の奥、さらに山道を登ったところにおばあさんがひとりで住んでいるらしい。何と言うか、凄絶ですらあります。

 


 かつてご先祖が田んぼを作っていた谷地に、今はヤマアカガエルが育ちます。

 


 谷に入ります。

 


 やっぱりヤンマタケはないけれど、コケの緑が生気を放ちます。常緑で冬から変わらないはずなのに、色合いも光も全然別ものに見える。生命の気としか表現できません。

 


 ここの主役はトラノオゴケ。盛んに胞子を放出しています。

 


 胞子のうを拡大すると…… おおこれぞダンジョンの魔物。接写って楽しいなあ。

 


 ウチワゴケがあったので細胞一個まで写してやれ。

 


 同じ岩の上にワスレグサの芽吹き。この姿ではワスレグサ類としか言えませんがさて何だろう。ヤブカンゾウノカンゾウユウスゲ、もしくはゼンテイカニッコウキスゲ)。ぜんぶ可能性があるので、夏に咲く花を見ないとね。

 


 わあいキクラゲ、タマキクラゲという種類。春の雑木林でよく出会います。

 


 大好き赤い実ヤブコウジ

 


 青いのは ヤブラン  ジャノヒゲの種子          

 


 タチツボスミレ

 


 スミレの季節が始まるのだなあ。スミレ好きのこの私、フジスミレのためだけに日光まで行ったし、おととしはオオバキスミレを目標に新潟まで遠征したっけ。またスミレのために旅に出ようか。好きなものがあるって人生を外向きにしてくれます。


 下を見て草花を追い、上を見てヤンマタケを探す。忙しく立ちまわる私でしたが

 


 わああ仏頭状玉髄。沢の砂地にちょこんと乗るように。

 


 長辺12.5 センチの立派なものです。これ絶対に蛍光するぞ。自分の足跡しかない沢の中であまりにもあからさまな置かれ方。久慈川の神さまからご褒美をいただいた。そう考えることにします。

 


 ここでメノウというのは想定外でしたが、あって不思議ではありません。そういう眼であたりを見回してさらに何個か見つけましたが、まあ持ち帰るほどでは。ちなみにこの層状に石英が貫入したメノウ、掘り出してひっくり返したら

 


 一面仏頭状構造でした。ブラックライト当てたいけど、懐中で持ち帰るにはちと大きすぎた。

 


 沢を出たら午の刻を過ぎてました。久しぶり、お湯を沸かして

 


 ふっふっふ。セイコーマートブランドのカップそば。セコマはそれだけで記事にしたいなあ。

 


 うまかった。でも量がちと足りない。小食な私ですが結局帰りの道の駅で弁当買ってしまいました。

 


 展望台に黒ずくめでガラの悪いおっさんひとり。

 


 ふもとの山里は陽光と春風に満ちて。ここもいつか、長い時の試練の果てに忘れ去られる日が来るのでしょうか。

 

 

 

 

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