ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ムクロジの実と手品師の話

 

 

         f:id:xjino:20200609213750j:plain


 もう40年も前に読んだお話です。


 ある男が,愛らしい息子と二人穏やかに暮らしておりました。ところがその息子が病で亡くなり,悲嘆にくれた男は旅に出て,魔法使いの弟子になります。修行の末,一つだけ,シャボン玉をどんなものの形にもできるという魔法を身に付けます。シャボン玉の原料のムクロジの実を一個魔法使いから譲り受けると,男は旅の手品師となりました。町ごとに人々を集めてはムクロジの実を少し削って作ったシャボン液を吹き,客の求めに応じたシャボン玉を飛ばします。演目の最後にはいつも最愛の息子の姿を披露しました。ムクロジの実はだんだん削れていき,ついに最後のひとかけとなります。最後の舞台,男はいつものように客の求めに応じます。いよいよ最後,私の息子の姿をご覧ください。人々が見上げる空に男の子の姿のシャボン玉が飛んでいきます。その後ろを大きなシャボン玉が一つ,男の子を追うようにのぼっていきます。そして人々は,男の姿が消えたことに気づくのでした。


 あまりにも悲しいお話で,何十年も経つのにその描写が脳裏に焼き付いています。たぶん学研の「学習」の「読み物特集号」にあったお話なのですが,作者も本当のタイトルも記憶になく,本そのものもたぶん失われています。でも物語は間違いなく私の一部になって息づいている。若い時にこんな読書ができたことを感謝しています。


 さてムクロジ


 ムクロジ科に属する落葉高木で,新潟県茨城県以西に分布すると。このブログでおなじみ「茨城が東北限」パターンの植物です。本当に茨城ってこの世の果てなんだ。いや北と南の珍しいものがいっぺんに見られるのだから有難いことです。じっさい,何度か山で見かけてますが植栽もされる木なので自然のものかどうかは判断がつきかねますが。


 このムクロジが広く知られるのは,その実の果皮がサポニンを多く含み,昔から石鹸として使われてきたからです。代用というより本当のシャボンとして。ネットで引くとムクロジでシャボン玉を作ってみた!的な記事や動画がたくさんヒットしました。

 

f:id:xjino:20200609214001j:plain

f:id:xjino:20200609214009j:plain
 ここは水戸で江戸時代初期から市民に愛された公園「保和苑ほわえん」。私が子供の頃までは多くの市民で賑わう行楽地でした。今は静かな,近隣の人たちがお散歩する緑地公園です。毎年開催されるアジサイ祭りは今年は中止。ここを紹介するだけでブログ記事3つ4つ書けそうな面白い場所なのですが今日は我慢。

 

f:id:xjino:20200609214038j:plain
 その隅っこに,これ市民に勝手に使われてるんじゃないの?という感じのペット霊園があります。公園の中にペットセメタリー。スティーブン・キングのおっかない小説を思い出します。

 

f:id:xjino:20200609214056j:plain

f:id:xjino:20200609214106j:plain

f:id:xjino:20200609214115j:plain
 そこに点々と落ちる茶色の小袋みたいなの。これがムクロジの実です。すぐ上に大木になって茂ってます。本当にシャボン玉が作れるかなんてことに全く興味はないので,そういう他の方の記事をご覧ください。私にはここにムクロジがあるということが大切なのです。やっぱりおかしな価値観なんだろうな。

 

f:id:xjino:20200609214207j:plain
 ブルーベリーのように中が水っぽい実を「液果」といいますが,この実は「液果様えきかよう」と表現されます。実った直後はともかく,今は中身がカラカラ。この皮を削って石鹸にするようです。

 

f:id:xjino:20200609214258j:plain
 もう一つムクロジが親しまれる理由が中にある種子。これを見て用途が想像できますか? そう,実は羽根つきの「羽」のカツーンと羽子板に衝かれる黒い玉,あれムクロジのこの種子なんです。

 

f:id:xjino:20200609214318j:plain
 これがムクロジの木。偶数羽状複葉。いきなり葉っぱだけ渡されてこれなあにと言われたらたぶん間違う。やはり茨城では珍しい木だと思います。


 久しぶりに保和苑を歩いてムクロジを見かけたので記事にしました。気になるのは,ムクロジと聞くと思い出す冒頭のお話。ぜひまた読みたいのですが手掛かりがありません。某出版社の子供向け全集に「ある手品師の話」小熊秀雄 というのを見かけてこれかと思ったのですが違うお話でした。もし何か情報をお持ちの方,ご連絡いただけませんでしょうか。「お問い合わせフォーム」も作ってない身で恐縮ですが,下のコメントをお使いいただければ。

 

 

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

iPod Touch 第7世代を購入したこと/Field Access を失ったこと

 

     f:id:xjino:20200607224453j:plain


 ガラケーiPod Touch を愛用しています。私にはそれで十分。


壊れた
 さてその iPod で困ったことが。しばらく内容の更新ができませんでした。音楽も,動画も,天体関係ほかの情報も,昨年末から何一つ新しいものが入れられない状態でした。理由は簡単,パソコンが壊れた。


 既報ですのでご存じの方もおいでかと思いますが,昨年末にあの忌々しいWindows update をきっかけにパソコンが壊れました。データを何一つ救い上げられませんでした。


 そこで iPod なのですが,そのシステムをご存じでしょうか。iPod にはそれと1:1の関係になるパソコンが必要です。そのパソコンにまず iTunes というアプリをインストールします。それ自体は音楽管理ソフトのようなものです。ここに iPod を接続するとその音楽データが流し込まれて,iPod で音楽が聴けるようになるのです。iPod はその後進化を続けて,動画やらメモやらアプリやらを入れられるポータブルコンピュータ = iPod Touch に大成し,携帯電話の革命・iPhone を生み出す元になりました。


 で。


失うもの
 パソコンが壊れたということは,iPod のデータソースもなくなったということです。新しいパソコンに iTunes を導入しても,そこに iPod を接続すると以前の音楽やら動画やらメモやらアプリやらはすべてリセットされ消えてしまうのです。2君にまみえずとは立派な心掛けですが,ユーザーにしてみればそれまで積み上げてきたすべてを一瞬で失うことになります。なんとご無体な


 実はあるソフトを使えば音楽データなどを iPod から引き出してパソコンに保存することができるのですが,私もそのあたりは油断なく事前に他のハードディスクにバックアップしてありました。ダテに長生きしてません。問題はバックアップできない,ソフトを使っても引き出せないデータ,つまり各アプリのデータです。私の場合「Field Accessフィールドアクセス」というアプリのデータでした。


フィールドアクセス
 フィールドアクセスは,一言でいうと「地図閲覧ソフト」。国土地理院の電子版 1/25000 地形図(紙のそれ同様,いち図幅ごとにバラバラにしか見られない)を一続きの国土図として閲覧できるものです。地形図を別途購入してパソコン経由で iPod Touch に流しこむ。すると導入された地図の上をどこまでもどこまでも一続きに辿っていける。地図マニアの積年の夢を一気にかなえてくれるアプリです。おまけにメモやら距離計測やら,地図の上でやりたい放題。なんという魔法か。ずっと愛用してました。地理院地図のデータを事前に読み込ませておいて,オフラインで使い放題です。

 

      f:id:xjino:20200607225002j:plain
 これがそのフィールドアクセスの画面。行った場所,見たものが細かにメモできます。最近はメノウを拾った場所パンニングをしてざくろを採った場所なんか。どうです,見たいでしょう?


 それが全部ぶっ飛んでしまうんです,新しいパソコンに繋ぐと。ああ,耐えられない。


作戦
 いろいろ思案した挙句に出した結論が以下。
① 新しいパソコンに iTunes 導入。
② 新しい iPod Touch を購入する。
③ 新 iPod にフィールドアクセスと地図データを導入する。
④ 新旧の iPod を並べ,旧の地図上のメモを一つずつ新に書き込んでいく。
 ああああ。なんて頭悪いアナログ作業。絶対にもっとワンタッチな方法があるはずだ。でも私にはこれしかできない。


購入
 勇躍行きますケーズデンキ。256ギガの色はブルー。値引きできないアップル製品,大枚5万円。旧 iPod Touch が64ギガで十分に地図データを入れられなかったので今度は十分な容量のものを買って,全国の地図データを入れてやります。

 

f:id:xjino:20200607225413j:plain
 新旧。左のピンクが旧ポッド(第5世代)です。ほぼ夫婦ですね。新旧を並べながら,同じ設定同じアプリを入れていきます。なるべく使い勝手に違和感がないように。久しぶりに iPodApp Store に繋ぎました。アプリは同じもの,なければ同等のものを。無垢な新 iPod へのマーキングは順調に進んでいきます。さあいよいよ Field Access だ。全国の地形図データが今か今かと出待ちです。検索かけて見たら……


オチ
 ない。Field Access がない。あるのはオンラインで地図を閲覧するアプリばかり。どこへ行ったんだ,夢の地図閲覧ソフト。


 他の方のブログにもそう嘆いているのがありました。更新しきれなくなったのでしょうか,開発者が手を引いたようです。もうこの世に Field Access はありません。私の旧ポッドにあるだけ。何なんだ,ここまでの苦労は。特に必死で揃えた全国の地形図CDは。地理院を喜ばせただけか。なんてこった。


おまけ
 結局,最大容量の iPod Touch を買う意味がありませんでした。思いっ切りスカスカの状態で使ってます。


 その iPod Touch 第7世代なんですが,ネット検索すると公式の取説はともかくとして,まあ有象無象の記事の山。個人ブログが「iPod Touch の第7世代が発売されました!スゴイ!!」なんて煽って,要は公式のスペックをコピペしただけの内容だったり,YouTube でもただ買った iPod の梱包を解くだけの動画だったり。たぶん内容なんかどうでもよくて,「 iPod Touch 第7世代 」の検索に引っかかってきた人を閲覧させればオッケーと。


 そうか,世の中この程度でいいんだ。


 わしも真似しよう。

f:id:xjino:20200607225816j:plain
 こんな白い紙がかかってまーす。

 

f:id:xjino:20200607225904j:plain
 剥がすと…… これは印刷ですよー。

 

f:id:xjino:20200607225919j:plain
 これも剥がして,本体の登場でーす。

 

f:id:xjino:20200607225932j:plain
 おなじみ白いイヤホンも同梱でーす。

 


 …… すいません,虚無感に襲われてます。私には向かないようです。

 

 

 

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

谷津田のほとりで見た花

 

 谷の奥の沢すじにある田んぼのことを谷津田と言います。周囲を木々で覆われていて,いろいろな里山生物の宝庫です。蝶を採集していた少年時代の私のフィールドであり,今でもそれを歩くと少しだけあの時代に戻れます。


 先日のゼンテイカニッコウキスゲ)探索の場所は,本当に少年時代のフィールドでした。土地勘ありまくりの庭みたいな,草いきれにむせかえる,生命のニオイにあふれる緑の魔境です。

 


     f:id:xjino:20200606193711j:plain
 もう採集はやめています。写真機材を全部身に着けた「A型装備」。これにサバイバル装備を付けた「S型装備」もあるのですが,そこまでの気合はない。…… というのが甘かった。この後すさまじいヤブ漕ぎに突入してしまうことになります。

 

    f:id:xjino:20200606193954j:plain
 ニッコウキスゲを探して沢の源頭部から隣の沢へとショートカットのつもりのヤブ漕ぎ。オオスズメバチに二度も遭遇したり,エラい目にあった。その途中に見かけた黄色い実の小木。イズセンリョウに見えるけど,これまで水戸市内で見たことがありませんでした。歩けばこんな発見があります。

 

f:id:xjino:20200606194037j:plain
 沢の源頭部は,かつては溜め池だったりしました。今は放置されて沼や湿地に。

 

f:id:xjino:20200606194106j:plain
 そういう場所には大抵カルガモの夫婦が陣取ってます。私に驚いて逃げるのですが,一羽が飛んで逃げて一方が取り残されることがあります。仲がいいんだか悪いんだか。そういえば,よくニュースになるヒナを連れた姿をここらじゃ見かけないなあ。

 

f:id:xjino:20200606194127j:plain
 沢沿いの森にユズリハ。自然分布が福島県以西ですから分布限界に近い暖地の木です。「譲られた」若い葉が広がっています。

 

f:id:xjino:20200606194149j:plain

f:id:xjino:20200606194158j:plain
 農道のわきにびっしりとツルマンネングサ。庭にあれば手に負えない雑草ですが,この類は花が美しい。

 

f:id:xjino:20200606194227j:plain
 甘い香りがして,見れば足元に散り敷く花。

 

f:id:xjino:20200606194244j:plain

f:id:xjino:20200606194302j:plain
 サルナシでした。びっくり。ここに,というか水戸にあるとは知らなかった。マタタビやキウイの同族で,秋にキウイを小さくしたような甘い実が成ります。本日の大発見。秋になったら採りにこようっと。別名をコクワと言います。

 

f:id:xjino:20200606194328j:plain
 以前に札幌の定山渓で野生のを見たことがあって,なんとなくそんなスゴい場所にしかないものと思っていました。ドリカムの「晴れたらいいね」という曲の中に「コクワの実」が出て来るのですが,そういえば吉田美和は北海道出身でしたね。子供のころに摘んだりしたのでしょうか。

 

f:id:xjino:20200606194352j:plain

f:id:xjino:20200606194403j:plain
 湧き水にクレソン=オランダガラシが繁茂しています。大変な繁殖力の要注意外来生物で駆除すべきなのですが,ヒトに嫌われていないのであまり問題視されません。尾瀬の山小屋の周囲にはびこっているんだよなあ。

 

f:id:xjino:20200606194451j:plain
 そのオランダガラシに産卵に来たのが旅のモンシロチョウ。このチョウは雌雄で極端に性質が異なっていて,オスは生まれた土地を離れないのに,メスは交尾を終えるとすぐに空のかなたを目指して旅立ちます。道々で出会うアブラナ科植物に卵を託しながら,命尽きるまで旅を続けます。その放浪性と食性の柔軟さで世界中に広がりました。…… かつての日本にもそういう女性たちがいたそうです。村々を巡りながら旅を続け,生まれる子はそれぞれの土地に残してまた遠くを目指す。生物学的にも意味のある生存戦略だと思います。


 自分の足で歩くと様々な発見があって,楽しい思いができます。特に水戸は,氷河時代の遺存種と新たにやってきた南方種があって。今回はニッコウキスゲの衰退を目にすることになってしまったけど,さて私はどこまでこの目で見ることができるのだろう。

 

 

 

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

水戸のニッコウキスゲはたった一人に守られている

 

       f:id:xjino:20200530215326j:plain


 ニッコウキスゲ。正式和名は「ゼンテイカ」なんですが,こちらの方が通りがいいので。


 湿った草地に群生します。目立つのと分布が広いのとで,和名も学名も,実は分類さえもが混乱しています。1種類なのか複数種なのか。形態的に明らかな差があるのは北海道の「エゾゼンテイカ」と日本海島嶼型「トビシマカンゾウ」ですが,おなじみ高原に群生するものと東京や茨城の低地に産するものとの間にも遺伝的差異があります。でもとにかくゼンテイカ,一般の人に説明するときはニッコウキスゲで十分です。


 茨城県では県北山地の高所に普通ですが,意外と県民には知られていない。そして実は水戸市東海村の低地にもあるのです。水戸市内のものに初めて気づいたのは2005年。あらキレイ,と写真を撮って植物学の泰斗にお見せしたらニッコウキスゲだよ,と。 …… ええええっ。その時までどこか遠い国の高原にしかないものと信じておりました。水戸ってすげえ。

 

f:id:xjino:20200530215511j:plain
 2005年の撮影です。本当にフツーの田んぼの端に咲いていました。私が中学のころからうろついていたフィールドですが,植物を見るようになったのはここ十数年のことなので。

 

f:id:xjino:20200530215530j:plain
 ぬかるんだ谷津田のほとりを歩けばぽつぽつと。群生というほどまとまってはいませんが,珍しいというほどもなく咲いていました。

 

f:id:xjino:20200530215542j:plain
 もちろん群生地もありました。この窪地になっている場所にそれこそ無数に。

 

f:id:xjino:20200530215601j:plain
 一番数が多かったのはここ。私有地の斜面です。高さのある場所でしたが地下水位が高いようで,かなりの密度で生育してます。所有者の方が定期的に草を刈って草原を維持しているのがよかったようです。草刈りをしないと背の高い草原から低木林に遷移が進みます。遷移が進んでしまうと,この植物は消滅してしまうのです。


 さてそのゼンテイカニッコウキスゲに,15年ぶりに会いに行きます。どんなことになっているか。まずは谷津田の奥を攻めてみます。

 

 


 ない。

 

 

 

f:id:xjino:20200530215720j:plain
 以前に見たのは5月末から6月初めで,盛りでした。今日なら間違いなく花期に入っているはずです。でもない。こんな谷津田のほとりに普通だったのですが。

 

f:id:xjino:20200530215749j:plain
 黄色い花が,と思ったらキショウブ


 ヤブ漕ぎまでしていくつもの沢沿いを歩いてみましたが,ニッコウキスゲの姿はありません。こうなっては最後の一手,あそこに行くしかない。私有地なので今日は遠慮しておこうと思ってましたが,あの斜面に行ってみます。

 

f:id:xjino:20200530215824j:plain
 すると老農夫がひとり刈り払い機を操作していて,見るとここではニッコウキスゲが咲いています。この方はそれがわかっていて,その株を避けながら草を刈っています。お声を掛けたら,なんとここの地主さんでした。

 

f:id:xjino:20200530215846j:plain
 昔からここを丹念に草刈りして,この黄色い花を守っているとのこと。以前に植物に詳しい人からこれはニッコウキスゲだと聞いたけど,本当か?とも。

 

f:id:xjino:20200530215922j:plain
 ええ,その通りです。これぞニッコウキスゲ。もう水戸ではここだけです。大事にしてあげてください。あなたが草刈りをすることで,この花は守られているんです。ここにこれがあること,あなたが守っていること,自慢していいんですよ。


 聞けばここも,いつの間にか掘り盗られて数が減ってしまったと。なるほどそれで。たぶん谷津田ニッコウキスゲがなくなったのもそれです。ここは開けた目立つ場所で私有地なので少し遠慮したということでしょう。


 この徹底した盗掘は,きっと転売のためです。こういう日本人が本当に増えました。情けない。盗掘者に,というよりそういう愚者をはびこらせたメルカリに天誅あれ。こういう元手要らず濡れ手に粟で小金を稼ごうとする人間のために,いつの間にか水戸のニッコウキスゲは絶滅寸前になっていたのです。


 そしてこのご老人はただ一人,この貴重な花の低地個体群を守っておいでです。その価値を知らぬまま,ただ美しい花だからと。なんと貴いことか。

 

  f:id:xjino:20200530220044j:plain f:id:xjino:20200530220054j:plain
 2006年(左)と2020年。今年は花期が早かったようで盛りは過ぎてますが,数が減っているのは写真を比べれば明らかです。

 

f:id:xjino:20200530220205j:plain
 それでも精いっぱい,守り人に応えるように美しく咲くニッコウキスゲ。この類は種子ができにくいものが多く,主に株分かれで増えます。群生するのもこのため。だから株ごと抜かれたらそれまでなんです。

 


 この先この花を,だれが守っていくのだろう。

 

 

 

 

↓ ランキングサイトです。よろしければポチっと。 

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

絶滅危惧ⅠB類,東海村のムサシアブミ

 シリーズ「ジノさんかつてのフィールドを歩く

 

   f:id:xjino:20200529233456j:plain
 ムサシアブミ。「武蔵の国で作られる鐙あぶみ」の意味です。なるほどこの形,鐙に見えます。

 

f:id:xjino:20200529233532j:plain
 図鑑によると「関東以西に分布」とあるのですが,はてその境界はどこか。どうやら茨城県,それも東海村が分布の東北限のようなのです。

 

  f:id:xjino:20200529233710j:plain
 東海村と私の因縁はご存じだったでしょうか。実は十年間住んでました。JCO臨界事故にも遭遇しました。東海村原子力の街なのは周知でしょうが,県内では極めて特殊な植物分布の土地柄で,自然観察者の間ではよく知られています。私もずいぶん歩き回り,ムサシアブミもその過程で見つけました。その時点で既知のことでしたが私は不勉強で知らず,なんじゃこれはとひどく驚いたものです。

 

f:id:xjino:20200529233633j:plain
 一目ではよくわからない花の構造。ふと「クラインの壺」を連想します。

 

f:id:xjino:20200529233649j:plain
 マムシグサとかミミガタテンナンショウとか,似たような花の近縁種と大きく印象が違うのがこの葉。大きくテカテカと光沢があって,いかにも南国のジャングルに似合いそうな植物です。

 

f:id:xjino:20200529233745j:plain
 奇天烈な形の仏炎苞の隙間から花序の付く肉穂が覗けます。でもやっぱり立体構造が理解できない。

 

f:id:xjino:20200529233758j:plain
 県のレッドデータブックでは「東海村が本県唯一の産地」であり,「盗掘が心配である」ということで県内での絶滅危惧ⅠB類,「油断すると絶滅しちゃうかもよ」扱いです。最近は何でもかんでも自然のものをタダで手に入れてメルカリで売りさばこうというヤカラがいるもので,確かに心配です。なんでちゃんと働こうと思わないんだろう。


 救いは,この産地が道路から遠く車を横付けできない場所であること(この手の人間共通の特性として,歩いての移動をとにかく面倒くさがります),そして人目に付く場所であることです。またネットで「ムサシアブミ 茨城」と引くと筑波山のムサシアブミの写真がヒットします。自生なのか植栽なのかわかりませんが,県内で他に産地があるのなら福音です,いろいろな意味で。

 

f:id:xjino:20200529233946j:plain
 飛び交うアオスジアゲハが夏の到来を告げます。青い光の夏の使者です。

 

 

 

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

今日の久慈川/静かに日常が戻ってくる

 

       f:id:xjino:20200524222430j:plain

 

 

f:id:xjino:20200524222503j:plain
 久慈川。富岡橋も神奉地(淡水魚館のとこ)も車は入れないままです。まあ,車で来て河原でグループでバーベキューを始めるような人たちが問題なわけで,個人的にはこのままでもいいかな。迷惑でないところに駐車して歩くのを厭わなければ,河原には出られます。

 

f:id:xjino:20200524222525j:plain
 小貫橋の河原の土砂採取はようやく終わるようです。ブルドーザーの引き上げをやっていた方に聞いたら今月中で終了だそうで,6月からはまた出入りできます。

 

f:id:xjino:20200524222547j:plain
 了解を得て歩いてみました。キャタピラの跡もまだ生々しい河原。

 

f:id:xjino:20200524222600j:plain

f:id:xjino:20200524222609j:plain

f:id:xjino:20200524222621j:plain
 それでもメノウがいくつか。私は遠慮しておきます。

 

f:id:xjino:20200524222655j:plain
 小貫橋から河原に出る途中にあった運送会社の倉庫は,台風19号で水没してましたが,更地になってました。お悔やみ申し上げます。 

 

f:id:xjino:20200524222710j:plain
 コムラサキ(蝶)が吸水してます。ヤナギが食草なので,たぶん周囲の川岸が故郷なのでしょう。昆虫たちの季節の始まりです。

 

f:id:xjino:20200524222732j:plain
 堤防に色素の薄い植物がたくさん花を咲かせてました。寄生植物のヤセウツボ葉緑素を持ちません。こんなものが生きられるのも生物多様性のたまものです。

 

f:id:xjino:20200524222756j:plain
 最後に一台残った重機と奥久慈の男体山。それなりに絵になるなあ。

 


 久慈川メノウ教信徒の皆さま,少しずつ日常を取り戻しましょう。

 

 

 

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ

スイカズラ咲いた

 

 

       f:id:xjino:20200524220503j:plain

 

 

f:id:xjino:20200524220529j:plain
 ハマナスに続いて,スイカズラも花盛りになりました。

 

f:id:xjino:20200524220547j:plain
 またの名を金銀花。咲いた当日は白く,翌日には黄色になります。

 

f:id:xjino:20200524220606j:plain
 つぼみも美しい。

 

f:id:xjino:20200524220625j:plain

f:id:xjino:20200524220647j:plain

f:id:xjino:20200524220657j:plain

f:id:xjino:20200524220707j:plain
 ご近所一帯にものすごい芳香を漂わせて,これでもかと咲きまくっています。皆さんに香りまでお届けできないのが残念です。

 

f:id:xjino:20200524220818j:plain
 以前の記事にも書きましたが,ハマナス同様数多くの昆虫たちに好かれる花です。無心に花粉を食べるホソヒラタアブ。
 幼虫はこのスイカズラの下に生えているクサボケの,その汁を吸うアブラムシを食べてくれてます。グロいから写真は無しね。

 

       f:id:xjino:20200524220841j:plain
 アリが1匹で歩き回っていて,変だなあとよく見たらアリに擬態したクモ,アリグモでした。クモなんですよ,これ。

 

 f:id:xjino:20200524220907j:plain
 顔を見ればよく分かりますね,クモの顔だ。これも害虫を食べてくれるイイやつです。

 

f:id:xjino:20200524220944j:plain
 イイやつもう一つ。その,スイカズラの下のクサボケでアブラムシを食べてくれているナナホシテントウの幼虫です。

 

f:id:xjino:20200524221005j:plain
 スイカズラの花粉を盛んに集めていたハナバチの一種が,葉の上でうんうん唸り出したと思ったら持っていた花粉をぼろぼろこぼし始めました。どうしたの? おなか痛いの?

 

f:id:xjino:20200524221025j:plain

    f:id:xjino:20200524221036j:plain
 庭の隅ではユキノシタが咲いてます。

 

f:id:xjino:20200524221112j:plain
 ヘビイチゴは実の盛り。

 

f:id:xjino:20200524221136j:plain
 さる因縁で我が庭にやってきたスイカズラですが,立派に庭の季節ごよみの一部になりました。この香りある限り,大事にしていこうかと思っています。

 

 

↓ 初出記事です

花物語 スイカズラ;連れてこられた花嫁はそれでも幸せになりました - ジノ。

 

 

にほんブログ村 その他生活ブログ 季節・四季へ
にほんブログ村 花・園芸ブログ 野の花へ
にほんブログ村 その他日記ブログ 備忘録・メモへ