ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

ムクロジの実と手品師の話

 

 

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 もう40年も前に読んだお話です。


 ある男が,愛らしい息子と二人穏やかに暮らしておりました。ところがその息子が病で亡くなり,悲嘆にくれた男は旅に出て,魔法使いの弟子になります。修行の末,一つだけ,シャボン玉をどんなものの形にもできるという魔法を身に付けます。シャボン玉の原料のムクロジの実を一個魔法使いから譲り受けると,男は旅の手品師となりました。町ごとに人々を集めてはムクロジの実を少し削って作ったシャボン液を吹き,客の求めに応じたシャボン玉を飛ばします。演目の最後にはいつも最愛の息子の姿を披露しました。ムクロジの実はだんだん削れていき,ついに最後のひとかけとなります。最後の舞台,男はいつものように客の求めに応じます。いよいよ最後,私の息子の姿をご覧ください。人々が見上げる空に男の子の姿のシャボン玉が飛んでいきます。その後ろを大きなシャボン玉が一つ,男の子を追うようにのぼっていきます。そして人々は,男の姿が消えたことに気づくのでした。


 あまりにも悲しいお話で,何十年も経つのにその描写が脳裏に焼き付いています。たぶん学研の「学習」の「読み物特集号」にあったお話なのですが,作者も本当のタイトルも記憶になく,本そのものもたぶん失われています。でも物語は間違いなく私の一部になって息づいている。若い時にこんな読書ができたことを感謝しています。


 さてムクロジ


 ムクロジ科に属する落葉高木で,新潟県茨城県以西に分布すると。このブログでおなじみ「茨城が東北限」パターンの植物です。本当に茨城ってこの世の果てなんだ。いや北と南の珍しいものがいっぺんに見られるのだから有難いことです。じっさい,何度か山で見かけてますが植栽もされる木なので自然のものかどうかは判断がつきかねますが。


 このムクロジが広く知られるのは,その実の果皮がサポニンを多く含み,昔から石鹸として使われてきたからです。代用というより本当のシャボンとして。ネットで引くとムクロジでシャボン玉を作ってみた!的な記事や動画がたくさんヒットしました。

 

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 ここは水戸で江戸時代初期から市民に愛された公園「保和苑ほわえん」。私が子供の頃までは多くの市民で賑わう行楽地でした。今は静かな,近隣の人たちがお散歩する緑地公園です。毎年開催されるアジサイ祭りは今年は中止。ここを紹介するだけでブログ記事3つ4つ書けそうな面白い場所なのですが今日は我慢。

 

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 その隅っこに,これ市民に勝手に使われてるんじゃないの?という感じのペット霊園があります。公園の中にペットセメタリー。スティーブン・キングのおっかない小説を思い出します。

 

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 そこに点々と落ちる茶色の小袋みたいなの。これがムクロジの実です。すぐ上に大木になって茂ってます。本当にシャボン玉が作れるかなんてことに全く興味はないので,そういう他の方の記事をご覧ください。私にはここにムクロジがあるということが大切なのです。やっぱりおかしな価値観なんだろうな。

 

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 ブルーベリーのように中が水っぽい実を「液果」といいますが,この実は「液果様えきかよう」と表現されます。実った直後はともかく,今は中身がカラカラ。この皮を削って石鹸にするようです。

 

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 もう一つムクロジが親しまれる理由が中にある種子。これを見て用途が想像できますか? そう,実は羽根つきの「羽」のカツーンと羽子板に衝かれる黒い玉,あれムクロジのこの種子なんです。

 

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 これがムクロジの木。偶数羽状複葉。いきなり葉っぱだけ渡されてこれなあにと言われたらたぶん間違う。やはり茨城では珍しい木だと思います。


 久しぶりに保和苑を歩いてムクロジを見かけたので記事にしました。気になるのは,ムクロジと聞くと思い出す冒頭のお話。ぜひまた読みたいのですが手掛かりがありません。某出版社の子供向け全集に「ある手品師の話」小熊秀雄 というのを見かけてこれかと思ったのですが違うお話でした。もし何か情報をお持ちの方,ご連絡いただけませんでしょうか。「お問い合わせフォーム」も作ってない身で恐縮ですが,下のコメントをお使いいただければ。

 

 

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