ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

わらしべ

 

   
    盆も終わりの蒸し暑い日、八溝山に行ってきました。

 

    
 目的はこの木々の奥、アオフタバランという野生蘭の花を撮るため。小さな小さな、森の奥にひそやかに暮らすそれこそ小人か妖精みたいな山の住人です。一度だけ花期に巡り合った時の写真は、USBメモリーとともにぶっ飛びました。リベンジです。


 …… ありませんでした。林床にかなりの株があったはずなのに、それこそ1本残らず消滅していました。真っ先に疑ったのは盗掘です。以前に場所を晒してしまいました。とても園芸的におカネになりそうな花ではないので油断しました。自然消滅という可能性もあります。いずれにせよ今日は諦めるしかありません。

 


 林床をごそごそ這い回っていたらやたら声のきれいな小鳥が飛んできました。ヘタクソな鳴きまねをしても逃げなかったので横顔を一枚。すんませんこれウグイスでいいっすかあ?

          ヤブサメだそうです。旅ねこ様ありがとうございます。

 


 ウスタケ。毒キノコですが凶悪なものでもありません。これもまた山の住人です。

 


 オオヤマハコベが直径数ミリのジミな花を咲かせています。やたらフレームに割り込んでくるアリがいて

 


 シワクシケアリでいいのかな。この小さな頭に脳細胞がいくつあるのか知りませんが、こいつなりに一生懸命仕事してます。お邪魔はしません。

 


 霧とも雲ともつかないものが昇ってきました。さすがに下界より気温は低くありますが、高湿度で快適とは言い難い。もう山を降りることにします。今日はそういう日なんだなあ。

 


 帰路、通り道なので富岡橋に寄ってみました。GW時にはゴミを残すような人たちが寄せ越しましたが、このお盆は台風の接近もあって静かだったようで、河原はきれいです。ご家族連れが憩っておられました。 … 以前、関係ない記事の最後にさりげなく、1本だけあるヤナギハナガサの根元にメノウがありますよと書いて、さて持って行っていただけたかなと、それが確認したくて。

 


 肝心のヤナギハナガサが枯れかけていて、もう良い目印とは言えないのですが、その根元を見てみると、私の置いたものは無くなっていました。

 


 ではこれは何だ。

 


 久慈川本流系のメノウ、玉髄がまとめてありました。この真ん中のなど透明度もあって、欲しい方はお喜びになるのではないでしょうか。…… つまりこれ、誰かが河原で拾われたものを置いていったのでしょう。ひょっとしてそれは私の記事を見て、私の置いたものを手にした方が、代わりにどうぞと置いたのでしょうか。え?え?ひょっとしてこれ


 わらしべ イベント


 ってやつですか。


 おお、なんか感動的。こんなコミュニケーションもあるものか。


 よしわかった。教祖が傍観しているわけにはいきません。手持ちのコレを


置いていきましょう。以後もここには必ず何か置きます。どうぞお持ちください。いえ、代わりにもっといいもの置いて行けと言うのではありませんよ。久慈川においでになった心ある方の、何とはなしの交流の場になればうれしく思います。

 


 問題は目印のヤナギハナガサがほぼ枯れたこと。別の目印を考えるべきか、これでいいのか。うーむ。

 

 

 

 

↓ 富岡橋関連記事です。

 

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石切山脈と筑波海軍航空隊、もしくはモンブランと特攻隊員

 

 東北に大雨を降らせた前線が関東まで降りてきました。今日は雨です。気温が10℃も下がって驚いています。


 先日、人の付き合いで笠間市内を巡ってきました。と言ってもややマイナーなスポットです。

 


 石切山脈。山ひとつまるまる花崗岩の採掘場、そこが有料で見学できます。

 


 ここから先は300円。

 


 採石場跡に水が溜まった池。「地図にない湖」だそうな。

 


 あと見ることができるのはモニュメント的加工物の数々。

 

      
 個人的にはむしろ、石材の加工場が工場っぽくていい感じです。


 実はここに来た本当の目的は、場内のカフェのモンブランSNSで評判とやら。


         コーヒーとのセット。1800円。


 地元の栗を使っているそうで、確かに美味でありましたが…… 値段を見てココは銀座かよ、とか思ったり。まあ、私はもう来ることはないでしょう。


 あ、従業員の方はみな接客も良くて、このモンブランが目的なら問題ございません。売り切れにご注意ください。

 


 早々に次のスポットへ。笠間市街を横断して旧友部町地区。

 


 「こころの医療センター」の敷地内に残る、これが旧筑波海軍航空隊司令部庁舎。

 

  
 筑波山からは遥かに遠いのですが、霞ケ浦航空隊の分遣隊として1934年に開設されました。多数の練習機を備えた操縦教育のための基地でした。大戦中は局地戦闘機紫電」の飛行隊も配置されていたそうです。すべては時のかなた。

 


 敷地内、新しい施設と古い施設が混在して独特な空気感が漂います。ここはぜひ屋内展示を見学せねば。

 


 大戦末期、ここは特攻隊員の練習基地でした。操縦桿など触れたこともなかった入隊直後の若者たちが、ここでわずかな飛行訓練ののち特攻に赴き、戦死していきました。本当に、みな若い。

 

   
 イケメンな方も。生きて戦後にあれば、楽しいこともあったろうになあ。

 


 飛行服。

 


 「永遠のゼロ」の主人公のモデルになった方。不沈艦エンタープライズに突入し、これを大破させました。

 


 で、ここは映画「永遠のゼロ」のロケに使われました。映画セットの机やベッドがそのままに残されて、当時の姿を再現しています。以後、様々な映画やドラマの撮影に使われていて、実はあの「映像研」もここで撮られてました。へー。

 


 今日は見学しませんが、広大な敷地の一部には、大戦末期に掘られた地下司令部の遺構も。最近も新たな地下遺構が発見されてます。

 


 南からの熱風が吹きすさび、でも空の色は秋めいて。立秋を過ぎると確かに季節の移ろいが感じられる、そんな1日でありました。

 

 

 

 

↓ 笠間関連の過去記事です。ぜひ一度お越し下さい。

 

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お引っ越し大作戦しっぱいの巻 / スズメバチに想ったこと

 


 8月某日朝。


 寝室の網戸まで開けてふとんを畳んでおりますと、ぶぶぶぶと重い羽音が。スズメバチです。軒下で8の字を描いてから、部屋の中まで入ってきました。ぐるりと旋回、小市民が細細と暮らすこの家を値踏みするように見回すと出て行きました。なんだありゃ。ちょっと不愉快。


 スズメバチ自体は珍しくありません。昆虫の豊富な我が庭は連中の狩場です。でも今日の行動は何か変。軒下も、部屋の中にも、彼らが餌とするようなサイズの昆虫はいません。はて。

 


 ところがこれで終わりません。今のは東向きの寝室でしたが、同じ2階で北向きの書斎に戻りまして、風がよく吹くので網戸にしておきましたところ、ここにも来ました。ぶぶぶぶとまず軒下を確認し、部屋の中に入ろうとして何度も網戸に衝突してから去っていきました。


 さらに翌日。また寝室でふとんを上げていると来やがりました。しかも時間差で2頭。ぶぶぶ二重奏。2頭目はあろうことか、私の存在に気付くと威嚇、もしくは攻撃行動とおぼしき突撃を敢行してきました。枕で弾き飛ばしてやったのですが、この状況は何かおかしい。


 書斎に戻ります。こちらも数が増えてます。入れ替わり立ち代わり、次々とぶぶぶがやって来ます。軒下を品定めし、網戸に体当たりし、さながらしつこい脅しをかけるように、包囲網を縮めるように。庭から観察すると、ハチは2階をぐるりと巡りながら軒下と窓をチェックしています、次々と。何だかわからないけど、明らかに良からぬ状況が進行しています。

 


 攻撃は最大の防御。

 


 ハチを目にしてから3日目、マグナムジェットを傍らに置いて書斎で読書。ぶぶぶぶとやってくる敵を網戸の内側からバズーカで一撃。吹き出す毒霧を食らったぶぶぶは一旦弾けるように飛びあがり、弧を描いて落ちていきます。半日待ち伏せて、5頭に有効打を与えました。

 


 墜ちた1頭を発見、キイロスズメバチです。

 


 死してなお毒針をかざすこの闘志。スズメバチとしては小型種ですが、はてさて何を企むか。…… 調べたらいろいろと大変なことがわかりました。


キイロスズメバチ
・体は小さいが攻撃性は極めて強く、巣に数メートルまで近づくと刺される。
・巣は巨大で直径1メートル、重さ10キロになることも。働きバチの数も秋口には400頭に達する。
・営巣場所の選択に柔軟性があり、小型で敏捷なので様々な小昆虫を餌として利用でき、空き缶のジュースや捨てられた魚肉も栄養源にできるなど、適応力が高い。
・天敵はオオスズメバチ。ゆえにこれがいない都市部では優位。
・近年の都市域でのハチ刺傷事故の主な下手人。
・毎年1つの巣から1000頭もの新女王が生産される。
・働きバチが増えて春に創設した巣が手狭になると引っ越しをする。家の軒下に作られる巨大な巣はたいていこのキイロスズメバチのセカンドハウス。多くの働きバチが一斉に作るのでごく短期間で完成する。
・引越し先は働きバチが見つけたいくつかの候補から選定される。

 …… って、おいおいおい、これだよ。


 我が家の2階の軒先が候補に上がっていたのです。日に日にハチが増えたところを見ると、かなりの有力候補として。どうでぃおめえら、ここがうちらの新しいヤサになるんだぜえ。アネさんもさぞやお喜びになるだろうよ。…… 女王様に来られていたら手遅れでした。危なかった。


 1つ良かったこと。ミツバチは良いエサ場を見つけると、巣に戻って仲間の前でダンスを披露します。そのダンスにはエサ場の方向と距離の情報が含まれていて、それを見た巣の働きバチは一斉にエサ場へと飛び立ちます。生物学者フリッシュが野外で見出した驚くべきミツバチの知恵でした。しかしスズメバチにこんな知恵はない。フェロモンを使う以外は、働きバチが各個に見つけて各個に対処するだけです。今回来るハチの数が増えたのも、単に多くのハチの目に付いたからと解釈できます。ということは、目下の危機回避手段として有効なのは、来てるハチを  皆〇し  すべて亡き者  にすること。


 窓際の待ち伏せで5頭、庭を徘徊していたのを2頭。これで現時点の偵察隊を全滅させました。巣が作られ始めたらシロートでの対処は不可能でした。やがてうちの軒下に巨大なスズメバチの巣がぶら下がり……  ああ、本当に危なかった。


 まだ油断はできません。敵の本拠地は無傷だし、実は1週間経った今朝、また新たな偵察のハチが来て、これは討ちもらしました。警戒は続けねばなりません。自宅警備員に安らぎの時はない。


 今回のキイロスズメバチ、その天敵は巣を襲うオオスズメバチオオスズメバチは環境選好性が強いので、都市部にはいません。では天敵のいない環境でキイロはやりたい放題か。いいえ、実はもっと怖い敵がいるのです。それは… おわかりでしょうか。そう人間です。都市部で巣が見つかれば、たちどころに駆除されてしまいます。自慢の毒針も効かぬ防護服に身を固めた巨大な敵が、化学兵器を振り撒きながら巣を破壊して一族を全滅させるんです。大切な女王も、次代に命を繋ぐ新女王も、1万もの巣房でエサをねだる子供たちも、みんな灰塵に帰してしまうのです。ただ生活をしていただけの彼らにしてみれば、理不尽なことでありましょう。


 人を刺さない限り、ハチは益虫です。実際に、アシナガバチの増えた我が庭では、夏の間はアゲハチョウやオオスカシバの害は微々たるものです。食物連鎖の上位にいるスズメバチもまた、この生態系の平衡を保つのに大きな存在であるはずです。


 人間の世界を護りつつ、他の生物に配慮する。繰り返されるこの命題に絶対解はありません。スズメバチに興味をお持ちの方、もしご存じなければ中村雅雄さんの著作をお薦めいたします。数十年間、小学校の先生をしながら千を超えるスズメバチの巣に挑み続けハチとヒトとの共存の道を求め続けている方です。こういうフィールドに立ち続けた人の言葉には人生の真実が込められていると、私は思っています。

 

 

 

 

↓ ハチという生き方。


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スズキ・エスクード パドルシフト不良

 


 前回の記事で、愛車・エスクードの故障修理のことをちょっと書きました。スズキに配慮して詳説はしないつもりでした。ところが、お世話になっている修理屋さんがそれは違うと言います。


 とにかく車のディーラーは不具合を認めたがらない。ひとつ前の愛車・ジュークでも、乗っていくらもしないうちにエンジンからカタカタカタ…… という耳障りな振動音が響き始めたのでディーラーへ。ところが営業の人はそんな音しませんと言い張る。メカニックを呼んで聞かせても通常の音だという。カタカタ言っているのにですよ。異音の有無ってのは基本的なチェック事項だと思うのですが、なんか私にしか聞こえない、アンタなに神経質なんだよと言われているようで、憮然として帰りました。それから1週間経つかというタイミングでニッサンからリコールを知らせるハガキが届きました。タイミングチェーンの摩耗により音が発生する不具合があるので交換します、と。

 これじゃねえか。

もちろんチェーンの交換で異音は消えました。


 ディーラーとはそういうものなので、不具合の情報は拡散させねばならない、修理屋のおいちゃんにそう諭されたのであります。


 さて今回のエスクードの不具合、あまり国内でエスクードを売る気のないスズキは、このかつては天下を取りかけた車種に今は1グレードしか用意していません。これに標準装備されているのが「パドルシフト」。ハンドルの左右にレバーがあって、オートマチックで走っていても右をカチリと引けばギアアップ、左を引けばギアダウンができる仕組みです。信号やコーナーの手前で回転数を落とさずに減速したいとき、コーナーの出口で素早く加速したいときに大活躍です。私はマニュアルシフトの車に長く乗っていたので、減速時のエンジンブレーキは当然のように使います。その、左レバーによるシフトダウンを多用しすぎたのでしょうか、乗って2年でシフトダウンがしづらくなりました。修理屋さんを通してスズキに聞いてもらいましたが、そんなの聞いたことがないという。ほらね。



 そもそも(月産わずか1200台とはいえ)大量生産された工業製品のうちのただ1台にしか現れない不具合なんて、理論的にあり得ないんだってば。


 それから半年のうちにどんどん症状が重くなり、ついにはレバーをカチカチカチと20回引いて1回シフトダウンするに至りました。スズキの人にも確認してもらって、ようやくステアリングホイールの交換と相成ったわけです。これで不具合は解消されて、愛車はまるで別人のように快調に走ってます。


 ネットで検索したら、やはりいましたおひと方。私のとまったく同じ症状で、同様にエンジンブレーキをお使いになるようです。たぶん使用頻度の高い順にこれが出て来るんじゃないかな。スズキさん、善処願います。

 


 車の話に絡めるのも何ですが、これから毎週、父のぼうこうガンの治療で病院に送り迎えをすることになります。94歳、ちゃんと直立二足歩行しているのだから大したものです。これまでに3回、内視鏡手術でガンを削ってきたのですが3回目のあと、これはもう手術では完治できないと言われました。代わって提案されたのが免疫治療。なんとBCG、つまり結核を直接ぼうこうに注入して、免疫反応を起こさせてガン細胞を巻き添えにするびっくり療法。結核菌はそういえばかの丸山ワクチンの原料でもありましたね。94歳の身体の免疫をアテにするというのも心もとないですが、試してみましょうか。もういつ天からお呼びが来ても不思議じゃないと、覚悟はとっくにできてます。ただガンの痛みとかは見るに忍びない。治療を続けるうちに別の件で召されちゃうというのが狙いです。うふふ。

 


 この父と母は、自分の親はもちろん、親戚の老人を何人も介護し、看取ってきました。放っておけない性分らしい。私はそんな両親の姿を見ているので、自分がそうすることに躊躇はありません。まずは自分の親。このタイミングで退職してフリーになったのも天の配剤かと思っています。

 


 そして船は行く。人生は続く。

 

 

 

 

↓ 愛車購入時の記事です。

人生に必要なもの/一周回ってエスクード - ジノ。

 

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魔女の家で見た夢は

 

 外は雨。愛車、スズキ・エスクードの修理が終わるのを家で待ってます。修理の内容は…… スズキの名誉のため黙しておきます。いつ終わるかわからず、雨の中を代車で出かける気にもならず。放っておくとYouTubeをダラダラ見てしまうダメな私なので、本を傍らに置いておこうかと。最近の3冊です。

 


 まずは映像研最新刊。


 折に触れて私の文章にちょろちょろ出てくる映像研。もうキャラクターから設定からストーリーから、私の性癖に大ハマりです。NHKのアニメの出来も秀逸だったし、たいてい失敗する実写化も主役の3人の熱演(特に浅草みどり役の齋藤飛鳥!)とよく練られた脚本で楽しく仕上がっていました。何かを「作ろう」としたことのある人の心の琴線に必ず触れるんです。漫画連載がいつまで続くかわからないけど、ずっと追っかけます。

 


 ハエトリグモ!

    
 文一総合出版の大当たりシリーズ「ハンドブック」。数十冊出てる中には誰の需要があるんだこんなもん、というのもありますが、ハエトリグモは間違いなく大ヒットでしょう、増補版が出るくらいだから。著者の方はハエトリグモが好きで好きで、筑波大学を出ていながら定職に就かずに全国を駆け回り、日本産全種をコンプリートしたという剛の者、筋金入りのフィールド屋です。世の中には有名大学に学士→修士→博士と居続けて威張っている「学者」も多いわけですが、フィールドの世界でエラいのはもちろん「野」に敢えて居場所を求める人です。文一総合出版のすごい所は、ちゃんとこういう人を見つけ出して本を作らせること。ハンドブックシリーズを立ち上げた編集者がどういう方か存じませんが、真のフィールド魂を持っておいでだと思います。図鑑専門の出版社の中には、懇意にしている○○大学の△△先生の退官記念などと称して大冊の図鑑、それもとても需要があるとは思えない狭い分野のものを出版する所があります。対する文一のハンドブック、このハエトリグモは最も分厚いものですが新書判152ページで税込み2200円。この大きさでこの値段は一般の方にはお高く思えるかもしれません。でも図鑑として見ればこの完成度、充実度、見やすさ使いやすさ、いずれも破格です。先のアカデミックに依存する出版社ならA3判5万円のものを作ったことでしょう、大学の先生の名を前面に押し出して。

 


 ビニールカバー付きというのはハンドブックシリーズで初めてじゃないかな。フィールドでの使用を考慮したものでしょうか。


 さっそく家の中を飛び回っていたヤツを、ミスジハエトリと同定できました。

 


 ラヴクラフト最新刊!


 短編集。クトゥルーですよ、ラヴクラフト大先生ですよ。今度は新潮文庫から出ました。フジテレビでは番組改編のたびに鬼太郎の名が挙がるそうですけど、出版界ではラヴクラフト。かつては創元推理文庫が定番、角川文庫もありゃまた…… 違った、荒俣宏先生の訳で乗り込んできたことがありました。ホラーは確実に客を呼べるんです。ましてラヴ御大と来ては、新潮社も手堅い線を狙ってきたということでしょうか。カルトな人気が根強い作家なので、旧訳を持っていてもファンは買っちゃうのです、私みたいに。

 


 当然読みくらべ。一見してわかるのは活字の大きさ、ライトノベルほどではないけど大き目です。時代を反映してます。最近の文庫はこんなかい。肝心の訳は…… 今風で読みやすい、と言っておきます。褒め言葉ですよ。ラヴ先生は情景や形状の描写がやたらクドくて細かい、それを忠実に訳そうとして失敗する例の多いこと。その意味で今回のは上手に整理して読みやすくなっています。若い人がこの訳からラヴクラフトに入ってくれるなら嬉しいな。ただ、ぐちゃぐちゃとこねくった文章に翻弄され混乱するのも正しいラヴクラフト体験なのだとは申し上げておきます。

 

 収録されているうちの一つ、The Shunned House を「忌まれた家」としたのは荒俣訳。かつては「忌まわしき家」とか「忌み嫌われた家」とかありましたが日本語のセンスとしてはいまいち。今回の訳者は荒俣先生に従ったようで、きっとこれが日本での定番になるでしょう。


 もひとつ。この本で「魔女屋敷で見た夢」と題した作品。創元版の「魔女の家の夢」よりはマシですが、これも素直に荒俣先生に従って「魔女の家でみた夢」でお願いしたかった。ほんのちょっとした言葉の組合せでニュアンスが変わる、日本語って何て高度な言語なんでしょう。


 こんなゲームがあるらしい。その名も「テスラ vs ラヴクラフト


 右上にいるのがラヴ先生。手にした魔書・ネクロノミコンで次々と邪神を召喚してテスラにけしかけ、テスラが科学兵器で蹴散らすというゲームです。カルト界の人気者対決、ああ脳が震える。生時は不遇だったラヴクラフトですが、今は世界中でこんなに愛されています。泉下でどんな顔してるかな。

 


 今回の記事のタイトル、勢いでこうなった。シャレだと思ってください。

 

 


※ ついでに。こんな記事をここまで読んでくださったメノウ教信徒の皆さまへ。富岡橋の河原に1本だけヤナギハナガサの花があってもう枯れかけているのですが、その根元にメノウが3個。なぜかここに置いたものは取り残されます。どなたかどうぞ。決して上モノではないのであしからず。

 

 

 

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食って食われて夏の森

 

     


 今年も夏緑樹林に潜る季節がやって来ました。うふふふ。「夏緑」樹林とは、気候で言うと「冷温帯」の、冬に木々が落葉する地域にある森のことです。


 夏緑樹林では、メンバーが本気で活動するのは夏だけ。スプリング・エフェメラルという春の者たちもいるにはいますが、それは夏の者たちの苛烈な活動に巻き込まれるのを避けてのこと。ヒトだって巻き込まれること必至なのだけど、私の自然観に占める大いなるテーマ「多様性」を見るには絶好なのです。今回は「倒木」をテーマに、さあ潜るぞー。

 


 夏の森は特別です。森の生き物といって哺乳類や鳥類を浮かべる方にはピンと来ないかもしれませんが、他の季節にはどこにいるんだかわからないような者たちが一斉に這い出し、食い合い、生命の限りを尽くすのです。もちろん一歩間違えればこちらも食われます。十分に注意し、せめて毒虫対策をしっかりと。茨城の山にはクマとヤマビルがいないのが本当に幸いです。


 あ、ヘビの死骸とか出てくるので【閲覧注意】でお願いします。うふふのふ。

 


 得物はこれ。捕虫網を持って歩くのは久しぶりです。これがあればスズメバチやアブを撃退できます。私の虫取りの師匠は子連れ熊を退けました。


 たぶん昨夕も雷雨があったのでしょう。落ち葉が深く積もった林床はぐちゃぐちゃ、そこに陽が射し無風の密林は湿度90%以上気温30℃。もう落ち葉の表面にまで微小な虫が蠢き、目には見えませんが菌類も這い回っていることでしょう。乾いたところがまるで無い、生物としての人間にはとても暮らせない環境です。私も2~3時間が限度。


 それではさっそくヘビの死骸いきますよー。画面をクリックすれば原寸画像出ますよー。ピンボケだけど。

   
 死んでもう一週間は経って、ほぼ骨と皮になっていますがまだハエは群がっています。ひっくり返せば有象無象の屍肉喰らい(スカベンジャー)どもがわらわらしていることでしょう。見たくないわいそんなもん。


 有体に申せば死骸は苦手です。そりゃそーだろー。でも死骸が食われ消えていくさまは物質循環、あるいは生命の輪廻という視点で見るなら大変興味深いもので、じっさいにそれを教材にする人もいれば、死体を食う虫が研究テーマの人もいます。それまである生物の形を成していた物質とエネルギーが大空に消え、大地に還り、新たな生命の材料になりあるいは地球環境の一要素に還元される。地球のシステムの、なんて大きなことだろう。


 壮大な話をしておいてナンですが、不気味なことが一つ。その骨と皮だけのヘビが動くんです、びくんびくんと。ホラー映画ならきしゃー!っと顔に張り付いてくるパターンです。身構えながら見ていると、どうやら死骸の下に何か大きなものがいます。これは確かめねばならぬ。映画なら死亡フラグです、ちょっと見てくるって。…… 勇気を出して木の枝で除けてみると


 出ました、クロシデムシ死出。黒光りする巨体はまさに屍肉喰らいの大親分。久しぶりに見ました。あ、いえ採集は遠慮します。

 


 古い倒木がありました。におうぞ匂うぞ、あまたの生き物の蠢くにおいがするぞ。

 


 まずはキノコ。材木の成分を分解できるのはキノコ(菌類)だけ。キノコが固い材をぐずぐずにします。そこにコケが生え、細菌が繁殖し、できたわずかな土を頼りにシダ植物が張り付き、つる植物が絡み、カエデやシデの種子が芽生え…… 長い長い時間をかけ、多くの生物が盛衰を重ね、やがてそこに木を成していたものは生態系を構成する「環境」の要素に戻っていきます。




 どでかいサルノコシカケの類。まだ成長中、木を分解中です。

 


 この、どこを触ってもぬるぬるする材の一部を写した中に、どれほどの生物がいるのだろう。真ん中の赤茶色のそうめんみたいのは粘菌のムラサキホコリの類。菌と付きますがキノコではなく、水中に棲むアメーバに連なる生き物で、じっさい昨日までは木材の隙間を巨大アメーバの姿で動き回り、細菌などを食べてました。そのムラサキホコリに這い寄っているのがキノコバエの幼虫、の蛆です。画面右下は別の種類の粘菌でしょうか。左のムラサキホコリは胞子を飛ばす前にカビ(これも菌類)に侵されてしまいました。…… ああキリが無い。この画面に食う食われるの矢印をすべて書き込んだら収拾がつかなくなるでしょう。

 


 地衣類も付いています。この倒木一本を撮りまくるだけでいくつも記事は書けそうですが、とりあえず一旦離れます。もっと違うものも見たいので。

 


 多様性の象徴、冬虫夏草。これは普通種のハナサナギタケ。

 


 こちらはサナギタケ。イラガの類の繭から出てました。イラガから出るのは別種の可能性もあるけどまあいいか。

 


 オオミズアオ。いつ見ても元気のない蛾だけど、これはかなり雨に痛めつけられたようです。

 


 ヒグラシが落ちてきた。ダニにたかられています。いろんな寄生性のヤツに狙われる気の毒なセミ。これもまた食物連鎖の一環です。

 


 テングタケ科っぽいキノコ。

 


 立ち枯れした木を分解して出てきたハンペンみたいなキノコ。かなり大きいのですがまだ成長中で種類の見当が付きません。あとでまた見に来よう。

 


 イヌブナの真新しい倒木がありました。ことによると昨日に倒れたものかも知れません。緑の葉が普通に茂っています。でも静かに死にゆく運命。われわれでも、心臓や呼吸が止っても全身の大部分の細胞は生きてますが、もはやなすすべはありません。全体と個とは、つまりそういうものです。

 


 ここではリョウブの木が1本、巻き添えを食いました。根こそぎ引き抜かれ、幹は地面にめり込んでいます。理不尽であろうなあ。




 倒れたイヌブナには太いフジが絡んでいました。これも一蓮托生です。これ以外にも、たくさんの着生植物や昆虫がこの木を頼みとしていたことでしょう。大木の死は、多くの生き物を巻き込みます。

 


 それまでイヌブナの木であったこれは、何百年か前に芽生えて以来ずっとその務めを果たし続け、ようやくその任を解かれたのだと思います。ご苦労様というべきか。そしてこれから長い時をかけて土に還る、そのシークエンスに入ります。

 


 多様性というより、命の消長というものをいっぺんに見すぎました。フシグロセンノウの花で気を整えて、今日は帰還いたします。

 

 

 

 

 

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刈られた。

 


 県立図書館前の空堀の土手、ヤマユリまで刈られました。

 


 前に見たときにヤマユリが刈り残されていて、作業の人たちに感謝したものです。その、一度は残されたヤマユリが刈られてしまいました。手間をかけて残したのに、なぜ刈ったろう。

 


 このあたりはヤマユリの群落ができかけてましたが、きれいさっぱり。上方の木の下にあるものは残されてますが、目に付くものは残らず。

 


 元の様子。草刈りをすることは大事です。日本の夏はどこでも植物が大暴れ。刈らねばヒトの生活空間が脅かされます。それにヤマユリにしろここに写るヤブカンゾウにしろ、地下茎があるので滅んだわけではありません。また来年花茎を伸ばしてくれるでしょう。

 


 見た目にも気持ちいい。生物としてのヒトが好むのはこのような、障害物のない開けた空間です。だから公共の場を管理する者にとって草刈りは夏の仕事として欠かせません。腑に落ちないのは、一度は残したヤマユリをなぜ刈ったかということ。ここからは私の勝手な想像です。ここの管轄が誰なのか知りませんが、偉い人が現場を見に来て、余計なことをするな、なんて指示したんじゃないかなあ。いえ勝手な想像です。関係者にご迷惑をかける意図はありません。

 


 すいません。永らく働いてきた現場で、そこにいない偉い人の現場軽視な思い付きに何度も嫌な思いをしたことがあって、ついそんな想像をしてしまいました。

 


 この件とは無関係ですが、ことし県立病院で検査を受けました。検査薬を注射して、安静状態で薬が全身に回るのを待って機械に掛かるものです。引退生活に入る前に自分の健康状態を把握するためのものでした。その、安静状態で待つための部屋というのがあって、暗い照明とリクライニング椅子、前にはモニター画面。以前に同じ検査を受けたときにモニターに映し出されたのは外国の美しい風景。花で満ちた草原とか、荘厳な山であるとか、ヨーロッパの古城の庭であるとか、人物を排し圧倒的な自然や悠久の時を見せて日常を忘れさせる、それはそれは素敵なビデオが流されていました。実は今回もそれを楽しみに病院を選びました。椅子の背を倒しフットレストに足を置き、さあ始まったビデオは。


 水戸偕楽園
 霞ケ浦の帆引き船。
 竜神大吊り橋。
 ひたち海浜公園ネモフィラ。その他、茨城県の観光名所の数々。


 十数分耐えるのが限界でした。看護師さんを呼んでビデオを切ってもらいました。聞けば、今の県知事さんになってから、ある日突然スーツ姿のお役人が県庁からやって来て、県立病院ならば映すビデオはこれである、と指示していったそうです。


 えーと。


 県立病院だし患者さんも県民がほとんどでしょう。見慣れた観光名所がごちゃごちゃした観光客と一緒に映るビデオを見させられて、心が落ち着くものでしょうか。


 いえ、病院に難は申しません。以前を知っていたから違和感があっただけです。現場の人が反論できない状況もよくわかりました。でも、もうこの病院での検査は遠慮します。


 絶対者からの理不尽な命令。最初から幹部待遇とか人から怒られたことがないとか、世の中にはそんな人が権力を持つ仕組みがあります。読者の皆さまも気まぐれな指示変更にほぞを咬んだ経験がおありでしょう。私もこの3月までは悔しい思いをして参りました。いつか晒してやるぞうひひひなんて、いやいやいや、そんな陰湿なことは考えてませんってば。

 

 

 

 

↓ 私が悪しき思想の持ち主でないことは過去記事で。


 

↓ 茨城の自然を紹介し続けてもうすぐ5年です。

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