ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

9月の冬支度 / 今年は仙境でマタタビを

 

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 ♪ふーねをーだすのならくーがつー。中島みゆきにそういうのがありましたっけ。別れの季節を歌う名曲ですが,私にとって9月はマタタビ拾い,つまりは冬支度のはじまりの月なのです。


 八溝山やら奥日立やら,たくさん拾える場所が私のポケットにはいくつもあるのですが,さて今年は。


 というのでやって来たのが武生林道。「たきゅう」とお読みください。茨城県北部に二列になって南北に延びる棚倉断層,その二つの断層に挟まれて周囲から300メートルも台形にせりあがったギアナ高地みたいな地形の,その上に乗った集落を縫う道です。

 

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 断層崖に沿ったくねくね道を登りきると空が開けます。正面に見えるのは明山,457メートル。まだ登ったことがありませんが,岩場が怖そうな山だなあ。

 

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 雲が沸くのはバンジージャンプでおなじみ竜神峡です。ああ今日も雨に見舞われそうだ。

 

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 まずはこの地の鎮守,武生神社にごあいさつ。あ,今日はふざけません。

 

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 古い神さまです。石段がすっかり苔むして。

 

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 梵鐘があるのは神仏習合の名残りですね。

 

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 こじんまりとしたお社。どうやらここは商売というか人寄せには興味がないようです。静かな山峡に鎮座する古い古い神さま。

 

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 境内の焚火あともすっかり地衣類に覆われてます。ここで火を焚くことも廃れているのか。それほど人がいないのか。こんなことまで好ましく感じられてしまう,私の俗塵嫌いもかなり度が強くなってきているようです。反社会性が危険信号,このままではただの偏屈ジジイに一直線だ。ニンゲンやめないように気を付けなくちゃ。

 

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 さて武生林道。出会う車も少なく快適な高原道路です。道々,自然観察をしながら。

 

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 民家の庭先にセンニンソウが盛りなのですが…… なんかほんのりと甘い香りが。

 

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 センニンソウはじつはクレマチスの一種で,キンポウゲ科に属します。この科は花の美しさと有毒植物の多さで知られますが,香りの話はあまり聞きません。これ以上近づけないのだけど,はて香りの主は誰だろう。

 

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 道沿いを歩いて気付いたのは,このフサザクラの木がたくさんあることです。珍種ではないけどいざ探すとなると苦労する,くらいの位置づけ。早春の開花期にまた来てみましょう。

 

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 コバノガマズミ。もう色づいてます。

 

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 ここにもセンニンソウ。今度は手に取れます。まごうことなく,香りの主はこの花でした。この花が匂い立つなんて記述,図鑑で見た覚えはありません。

 

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 草木ことごとく雨に濡れ,今はうっすらと陽が射してます。植物が歓喜する天候なのは相違ありませんが,まさか芳香を放って喜ぶとは。私はまだまだ植物に対する認識が足りないようです。

 

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 それにしても不思議なのはこの武生林道。山の上なのに冬でも暖かい。雪なんか積もりません。話に聞く桃源郷というのはこんなものなのかな。こんなところに住めたら…… いかんいかん。


 で,マタタビでした。茨城の山ではごく当たり前に生育しています。拾うだけなら道沿いにも落ちてます。

 

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 こんなとこに

 

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 ぽろぽろと。車から降りてひょいと拾えます。なんの装備も要らない。ただし採れる範囲が狭くて量は望めません。たくさん拾いたければ……

 

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 やはり谷筋に降りるのがよろしいかと。マタタビは沢沿いに生えていることが多くて,周囲の斜面から大きいのが転がり落ちてくるんです。でも覚悟してねー。虫がいっぱいだよー。クモの巣がひっついてくるよー。足場がヒトの道じゃないよー。ケガするかもよー。でも歩いてみれば……

 

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 大きいのが入れ食いじゃあ。

 

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 ひとつお願いが。こんな風に大小で落ちていたら,大きいほうだけ拾ってください。残された実から育った虫が,また来年もマタタビの虫えい果,つまりこの木天蓼子もくてんりょうしを作ってくれます。最近の山菜取りやキノコ狩りをする人は本当に根こそぎ全部盗っていく人が多くて,次の年のことを考えていない。来年も楽しみたければ資源保護。まさに当世流行りの持続可能性ってやつです。


 もうひとつ,これはご注意。やっぱり人の道を外れて歩くのは危険がいっぱいなのだ。例えば今日。視界の隅に冬虫夏草カメムシタケを見つけました。人の道から外れたところに必ず見つかります。おお,と手を伸ばしかけてふと留めたその指の先からしゅっと

 

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 マムシの子が飛び出したあ。うひゃあ,危なかった。マムシはとても臆病で,大抵はヒトが近づくと逃げるか隠れるか。隠れていたのをうっかり掴んで咬まれたというのがマムシ咬傷の最多原因です。カメムシタケのせいでひどい目に遭うところでした。


 ちなみにこのマムシ,木に当たって逃げ道に窮したようで,50センチほど離れたところからこちらを睨んでました。カメムシタケを撮りつついやな気分で,ろくな写真になりません。マムシの子,そこどいてくれよう。どくヘビだけに。

 

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 谷に入ったころから天候は急変して雨が降りだしていましたが,今ので天の怒りを買ったようです。土砂降りになってきました。この夏はメノウ以外のフィールドはことごとく雨に降られて,これまでの晴れ男パワーで退けた雨雲がまとめて仕返しに来たみたいです。もう帰ろう。

 

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 それなりに採れたからいいや。これでこの冬もマタタビ酒でぽっかぽかです。

 

 

 

 

 

↓ 未読ならまずこれを。

マタタビ酒の作り方 - ジノ。

 

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