ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

南風の海で

 

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 びょうびょうと南風の吹いた一日でした。地獄の釜もかくやと思えるほどに蒸し暑い。私は海からの東風が好きなんです。… 久しぶり,水平線を見に行ってみましょうか。

 

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 というわけで初崎海岸。ぐわあ,ここも暑い。普通なら涼しい海風が吹くところを,ここでもあの南風。しかも水戸に吹くより強烈で,砂もしぶきもびゅんびゅん飛んできます。本当にいつもと違う夏です。

 

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 何組か海遊びのご家族もおられましたが,みな撤退していきました。子どもさんのいるご家庭には気の毒な夏でもあります。

 

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 私も少しばかり砂を頂いたら退散です。シーグラスと高温石英,もう多くは要りませんが砂ほじりが楽しいので。

 

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 … 何だか一羽のウミネコに付きまとわれました。こういう目つきの悪い奴は苦手なのに,時々変に気に入られることがあります。その場に闖入したのが受け入れられたようで,嬉しさ半分戸惑いが半分。

 

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 今日はいつもの車屋さんで午後2時にオイル交換の予約をしています。まだ間があるので,そのまま海沿いに南下して平磯海岸へ。前にシーグラスのある場所を見つけています。

 

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 海岸駐車場,大部分は県内ナンバーなのですが一部千葉・埼玉ナンバーが。何しに来やがった。茨城の何倍も感染者を出している県です。さすがに剣呑な気持ちになります。この両県に接している茨城県の南半分で感染者が急増して本県も緊急事態宣言発令の憂き目に。本当に迷惑しています。そちらはそちらで東京から迷惑をこうむっているのだろうけど,お互い県を跨いでの移動は自粛のはず。こんなオラオラ系の車に乗って他県に来るようなのが平気で感染を広げているんだろうな。何年かのちこの文章を読んで私は反省することになるのだろうけど,とにかく今はこうした輩に大いに不快を感じています。車に軽く呪いをかけておきました。ふふふ。

 

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 いかんいかん,せっかくの海ネタなのに。

 

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 シーグラスやメノウのかけらを拾って,もあっと来る南風をたっぷり吸って,車屋さんに寄って帰りました。

 

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 で,採ってきた砂の中から高温石英。今回はきれいな六角錐結晶があまり含まれてません。台風の影響でしょうか。でも氷と見まごうこの透明度。同じ形のものは2つとてないのに同じ美を含有する,これぞ自然のなせる業です。

 

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 シーグラス。元はガラスびんとか照明器具だとか,原料は人工物です。それを海の波動が長い時間をかけて磨き上げ,新たな光が与えられました。同じものがない,これもまた神の造形物のひとつであると私は考えます。


 生物の造形も宇宙の法則も,神さまが作ったものはみな美しい。神は細部に宿る,とはいつも口にしています。日々自然物の中に見出したものに感動する,これはかつて博物学と呼ばれた学問に連なる,神の御業を知るための行為なんです。残りの人生,そんなことに費やしたいと思ってます。

 

 

 

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玉川オグルマ

 

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 大水が出ました。さて,メノウ拾いはどのタイミングでできるのか。あ,つまり流されてきた新しいメノウを拾うチャンスがあるということです。

 

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 とりあえず様子見に,玉川のいつぞやのメノウ師匠の場所に。まだかなり増水してます。ちなみに中洲のように見えるのは人がメノウを掘ったあと。たぶん増水前のですが,明らかに昨日あたりと思しき掘り跡もあります。すごいなあプロの人たち。


 こういう競争率の高い場所に来ること自体が私の趣味ではありません。メノウが拾えるとも思えなかったのですが,ふと水中を見ると

 

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 おお。

 

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 もひとつ。

 

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 玉川からのプレゼントと考えましょう。がっついてはいけない。周囲を軽く観察したら,ここは切り上げましょう。

 

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 サギの吐き出したペレット。ザリガニが主食のようです。外来種というけれど,アメリカザリガニを駆除したら困ってしまう動物がたくさんいます。もう日本の生態系の一員てことにしてあげて。

 

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 アゲハが盛んに吸水してました。虫たちも晩夏の日々を楽しんでいるように見えます。

 

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 さて,あと一か所くらい見ておこうと車で移動して,停めた場所からあぜ道を歩いているとひと群れの黄色い花が。あれ見かけない花,なんだこれ。

 

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 … オグルマだあ。

 

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 レッドデータに載るような種ではありません。でも田んぼのふちで見たのは初めてかもしれない。まるで園芸種のような顔してますが立派に野生の,日本の湿性地に生える花です。ほのかに甘い香りがするのもこれだろうか。ちょっと感動です。

 

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 なぜ今まで見ることがなかったのか。きっと,真夏に山の田んぼを歩くなんて,メノウ拾いを始める前は思いもよらなかった,そのあたりが理由です。行動の変化が新たな出会いを,というやつではないかと。人間,歩けば何かあるんだなあ。最近フィールドで初めて見るものが多々あるのですが,私自身の行動が変わってきているということなのでしょうか。自分を変えて,人生を変える。まさに「面白い人生は自分で作るもの」なんだと。

 


 喜びの定義は人それぞれで,何をもって自分の幸せを実感するかもいろいろでしょう。私は「不義にしてかつ富み尊き」を人生の目標にはしませんでしたが,いま,それなりに楽しい日々を送らせてもらってます。たぶんこれまでの人生で一番穏やかで自分らしい毎日。ここに至るのに30年かかりました。あと何年あるのかなあ。

 

 こんな浮世離れしたヤツが言うのもなんですが,いま大変な皆さま,どうか芯をしっかり持って,「自分」がブレることのないように。人生の隘路には迷い道やらワナやら試練やらが次々と仕掛けられていきます。道をブラす事なきように。まっすぐ歩くように。まっすぐ歩き続ければ必ずタマシイのあるべき場所にたどり着ける,と私は信じてます。

 

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 田んぼにはお米の香りが漂います。いいにおいだなあ。9月初めには収穫が始まります。今年の実りも大丈夫。…… ニュースを見ると,今日も大雨に見舞われている地方があるようですね。能天気な記事でごめんなさい。皆さまのお身体とお米の無事を祈ります。

 

 

 

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月の魔力

 

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 久しぶりに夜空が晴れ上がり,月齢10の月が出ていました。これこそ本当に久しぶりの月。前に夜空が晴れたのは8月初旬の新月の頃,生まれたばかりの月齢1の月でした。


 台風一過の晴れ上がった中天に浮かぶ月は本当に美しいものでした。ただ,蒸し暑い中ではどうも情緒に欠ける。月見は秋に限ります。そもそも夏という季節に飽きました。はよ終われ。

 


 月と言えば思い出すのが,大学時代に手に取った本「月の魔力」。タイトルにぐっときて,中身も確かめずに買ってしまいました。

 

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 読み始めてしばし,何かこの本はオカしいと気づきました。どうやら満月の晩には交通事故殺人事件が増えるという類のことを主張したいようなのですが,引いてあるデータがデタラメ。というか,そのデータからは絶対読み取れないような結論を持ってくるのです。例えば殺人事件の日ごとの件数のグラフがあります。そこには月の満ち欠けとの相関性はまるでない。著者は言います。このグラフでははっきりしないが,殺人事件は満月の晩に多いのだ,と。…… データの読み方を知らないというか,データを無視して結論を出すスタイルの本でした。まず結論ありき。官僚が作った第三者会議の資料みたいなバカバカしさ。


 あ,こりゃキチ〇イだ,イカれた本だとそこで読むのをやめたことをご理解頂けますか。これでも理系です。こんな読んでも害にしかならない,およそ科学性とか論理性とか実証性とかの欠け落ちた読み物は遠ざけるに限ります。幸いというか何というか,友人(文系)に貸したら気に入ったのか返してもらえず,そのままになってしまいました。いまこうして記事にするに当たって,内容を再確認できないのを今更ですが悔やんでますけど。ちなみに山本弘さんの本でトンデモ本と紹介されているのを見ました。やっぱりね。


 月の魔力を科学で語ろうというのが間違いなのです。月光のかもす心の波動,白い光に秘められた力は,日々刻々と変容する月の姿に沿ってその性質を変えていきます。そしてそれは人それぞれに異なる作用を及ぼすと私は考えます。月の魔力を数値化しよう,法則性を導びこうなど,ヒトの浅知恵,科学の傲慢に過ぎません。月は黙して見上げよ。月をただ感じよ。


 そもそも人の一生で,月を見上げている時間などいくらもありません。その程度で月光の秘密を解き明かそうなどとは何と浅薄な。

 

 


 というわけで,来月涼しくなった頃の月夜の晩に,庭にリクライニング椅子を出してしばし月を見てみようかな。そう,月光浴。自分が変容することなど期待せず,ただ秋の虫たちと共に月光の下で夢を見てみよう。

 

 

 

 

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 カメラが長時間露光中なのを気づかずに動かしたらお馬鹿写真が撮れてしまいました。でもこういうのもキライじゃありません。

 

 

 

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那珂川・久慈川がえらいことに

 

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 すいません,タイトル大げさに過ぎました。内容は能天気です。被害に遭われた皆さま,お詫びいたします。どうか大目に見てやってくださいませ。

 

 

 


 大雨に振り込められたお盆休みでした。どこにも行けなかった,というのは日本中のご家族の嘆きでありましょう。


 私も豪雨の日曜の晩,せめてこれぐらいはと「三太の湯」に行ったのですが,途中で見た那珂川久慈川も川幅一杯の濁流でした。いつも「河原」と呼んでいるあたりが茶色の奔流に飲み込まれていました。

 


 翌朝,記録のためカメラを持って川を巡ってみる。

 

 

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 那珂川,千歳橋ふきん。これでも昨夜よりは水が引いてます。奥に見える田野川との合流あたりが溢水して海のようになっていたのがおととしの洪水。あの時ほどにはならずに済みました。

 

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 続いて久慈川。おなじみ富岡橋へ。

 

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 ああ,河原が水没している。置いておいたメノウは流されちゃったでありましょう。

 

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 昨夜は本当に川幅一杯に水が来ていたようです。アシもオオブタクサも倒れて。

 

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 濁流が渦巻いてます。いつぞやは歩いて渡ったこともある川です。

 

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 もちろん玉川も見ておきましょう。

 

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 村田橋ふきん。ここも昨夜はアシ原まで冠水していたようです。

 

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 少し離れたここは,いつか記事にしたおじさんが掘っていた場所。あのおじさんは水が引けばまた来るんでしょうね。掘り方を教えてくれましたっけ。

 

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 今回何よりも助かったのは,このあたりでは水田の被害がほとんど無かったこと。イネも出穂・開花が済んだあとで,たぶん今年の収穫には影響ないでしょう。

 

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 薄日が射してきました。もう雨はおなか一杯です。

 

 

 

 低温のおかげで風邪気味になってしまいました。葛根湯とマタタビ酒を飲んで寝て事なきを得たのですが,まさか夏に使うことになるとは。異常気象が続く中,どうか皆さまも健康にご留意を。

 

 

 

 

↓ 文中にある過去記事です。

そろそろ川から上がろうか - ジノ。

久慈川徒渉は危険ですってば - ジノ。

メノウ拾って富岡橋へ - ジノ。

洪水後の久慈川で - ジノ。

洪水と人と生きものと/台風19号惨禍 - ジノ。

 

 

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雨の森に潜って冬虫夏草とか見てみたり

 

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 森に潜るというのは私がよく使う表現です。湿気と熱気と生命に満ち満ちた日本の夏の森の底を,私の心象に合う生物を探してそれこそ這うように歩き回ること。平らで乾いた硬い地面の場所で進化したのが我々ヒトです。起伏続きでぐちゃぐちゃに湿って腐葉土でぶかぶかな森の底での行動は,当然ハードです。一回の潜航は2,3時間というところ。私にとっては深海探査のような小冒険です。

 


 今日は前年よりの懸案事項,花園のブナの森で冬虫夏草を見るのが目的です。…… 台風が連れてきた前線が居座って,向こう一週間雨だって。負けるものか。決行です。

 

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 着いた途端に大粒の雨。ちょうどいい,早めの昼食を済ませよう。

 

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 おにぎり二個を食う間にほら上がった。さあ行こう。

 

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 水分に満ち満ちた森。他県ならヤマビルの大群に襲われているところです。茨城で良かった。

 

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 林床の朽ち木に何か出ている。これは。

 

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 マユダマタケと総称される不完全型の冬虫夏草です。

 

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 ナイフで繰り出してみると,甲虫の幼虫から出てました。貴重な標本ではあるけれど,資源保護のため今日はすべて現地に置いていきます。

 

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 写真を撮っていたら隣の木をエゾゼミが登っていました。先の筑波山といい,今年はよく目が合うセミです。そういえばここではセミ冬虫夏草を見つけてないなあ。

 

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 カメムシタケ。普通種とはいえ,目が慣れてどこに行っても見つけるようになってしまった。御岩神社,ざくろ沢,マタタビ拾い,御前山。実は冬虫夏草に取り組み始めた当初,ぜひとも見たい種類でした。そして初めて見たのがここ花園の森だったことを思い出してみたり。

 

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 目立つ色彩ですが,これが目に留まるようになるまでが大変なんです。冬虫夏草はみんなそう。今日はここで4個体見ました。

 

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 最普通種・ハナサナギタケ。蛾の蛹から出ています。

 

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 撮影風景。樹皮のコケの中から発生してました。

 

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 小型のものが沢沿いのシノブゴケの中からいくつも。普通種だけに,これがあるとほっとします。まだここは大丈夫と。

 

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 エゾゼミがボーベリア,ムシカビにやられていました。冬虫夏草ではありませんが同じく虫を斃たおす菌類です。何だか生きながらに磔はりつけになったようで哀れ。ふとさっきのエゾゼミが心配になってみたり。

 

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 朽ち木の樹幹に冬虫夏草のそっくりさん,マメザヤタケ

 

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 樹幹にはよくキセルガイがいます。変形菌やキノコを食べます。こういうぬめぬめしたのは私の趣味ではないのですがちゃんと専門の方はおられて,それなりに多くの種があるらしい。

 

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 木の根元に羽化したての蛾。立派な触角はオスのしるし。キッとこちらを睨む姿がやたら男前で,一枚撮らせていただきました。

 

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 夏の湿った森では林床はカエルだらけです。このヤマアカガエルは何かくわえたまま,私に驚いて飛び出してきました。

 

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 チチタケ。白い乳液を出す食用キノコです。私は食べません。

 

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 何気なく写した,いい立ち姿の夏キノコですが…… これひょっとして猛毒のヤツでは。

 

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 一本の大きなヤマザクラの木が,少なくとも三本の木を巻き添えにして一生を終えました。特に直撃を受けたもう一本のヤマザクラは幹が完全に粉砕されて本当に巻き添え死です。理不尽な不幸は人間社会の専売ではないようで。

 

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 でもそのおかげで広い範囲に陽光が射すようになりました。こういう林内の空間をギャップと言います。ここにだけ草花が咲き競ってます。

 

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 オクモミジハグマ

 

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 ソバナ

 

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 ヤマジノホトトギス

 

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 フシグロセンノウ。いつも森の秋を告げる花として紹介していますが……

 

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 せっかく接写機材を持ってきているので,拡大! 森の彩りフシグロセンノウのこんな写真を撮る変態はわしだけじゃあ。

 

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 変態写真じゃ,楽しいぞお。

 


 雨がまた降りだす前に,今日の潜航は終わりにしましょう。サナギタケが見られなかったのは残念だけど,所期の目的は達したということで。

 


 森は狐狸妖怪のすみか,西洋なら魔女やオオカミの暮らす魔界です。その森を自問自答しながら歩きつつ,予測不能に次々と出会う異形の生き物たちに驚く。街中では得ることのない天啓にも似たインスピレーションの数々。夏の森は異世界に降り立ったような驚きの連続で,私を飽きさせることがありません。

 

 

 

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 花園から下界に降りる途中に水沼ダムがあります。帰路,軽い散策のつもりで湖畔を歩いたらまた見つけてしまった。うーむ。

 

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 同じく,水沼ダムにあった看板。いつぞやの陰陽神社の地図いらい,この手の看板に書かれた漫画風キャラクターに目が行くカラダになってしまった。今回の見どころは人物の顔と体の,画力のギャップでしょうか。ああ,この世は面白いもので一杯です。

 

 

 

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筑波山,今日の花とか

 

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 というわけで筑波山再訪です。今日は気兼ねなく撮りたいものを撮るぞー。

 

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 水戸から筑波山となると普通は常磐道から土浦北インターを経て「表筑波」のふもとまで,ということになるのですが,一人で登頂を目的とする時は八郷盆地を横切る最短ルートの裏道を行き「風返し峠」を越えます。こちらの方が性に合います。


 遠方の皆さんにはイメージが薄いかも知れませんが,関東平野にどんと聳える筑波山ははるか上代から人々に登られてました。今ではケーブルカーやロープウェイもあってハイヒールに白ワンピースの女性でも登れます。これは登る山です。徒歩でも余裕で日帰り登山ができます。でもナメちゃいけません。足で登るならそれなりの覚悟を。

 

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 実はけっこう本格的な登りになるんです。こんな岩場が連続します。ハイキングというにはかなりハード,時々動けなくなって泣いてる子供さんを叱咤激励する熱血お父さんに出くわします。さらに言うとここは「登る山」,写真の白雲橋コースも降りるとなると足を痛めます。足裏は痛くなり,太ももは笑い,コケたら大怪我です。大腿筋ピチパリにしたい人以外は,下りはケーブルカーやロープウェイをお薦めします。


 能書きはここまで。写真44枚,見てやってください。

 

 

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 まずは筑波山神社の境内,前の記事でもご紹介したマルバクスのタイプツリー。多くのランやシダが着生しています。

 

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 その着生ランの一種,ヨウラクランがコケと一緒に落下していました。こんなそばで見られるのはラッキーですが,この手のランは落ちたらおしまい。長くは生きられません。哀れ。

 

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 さあ登るぞ。白雲橋コースの入り口で振り返ると,スカイツリーほか都心のビル群が見えます。

 

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 夏の森。私が生きる,この美しい世界。

 

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 アオハナムグリが岩の上でじっとしてました。どうしたの? おなか痛いの? 踏まれちゃうよ? うるさいなあ,わかっているよとごそごそ移動していきました。ちょっと反抗期みたいでかわいいなあ。

 

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 アブラチャン(油瀝青)の実がたわわ。瀝青と書いてチャンと読む,これはアスファルトやコールタールのことで,むかしこの実から油を採ったことによります。

 

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 イヌトウバナ

 

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 イワタバコ。ひとつ前の記事で紹介したのは外すつもりでしたが,きれいに撮れたので。

 

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 ウマノミツバ

 

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 ミツバ。仲良く並んで咲いてました。

 

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 エゾゼミの殻。

 

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 オオナルコユリ。普通のナルコユリを見慣れた目には,本当に大きく写ります。

 

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 オニヤンマ。いっぱいいました。

 

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 前にもこんな写真をお見せしましたが,北側の加波山ビュー。

 

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 ガンクビソウ。こんな地味なのを三脚据えて撮っていて,何の花ですかと聞かれるのはいいんですが,聞いておいてすぐに興味なさそうに歩き去っていく中年男性というのは何なんだろう。

 

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 キツネノボタン

 

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 キヌタソウ。細く伸びた茎に微細な花。先のミツバ同様,スマホカメラ泣かせです。まずピントが合わない。私のカメラでもアングルに苦労して,結局お花に焦点を絞ってみました。

 

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 コバギボウシがちょうど盛り。

 

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 筑波山の花をぜんぶ綺麗に撮りたかったら,それこそ毎週登らないと間に合いません。

 

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 数々の奇岩の中でも特に有名なのがこれ,弁慶七戻り。こちら側から見ると本当に怖い。しかし驚くべし,東日本大震災の揺れでもピクリともしませんでした。

 

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 ブナの大樹にシダ植物のシノブがびっしり着生してました。

 

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 シモツケ。これもちょうどいいタイミングでした。

 

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 拡大。本当に,神は細部に宿る。

 

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 きっと花を愛でる余裕はないでしょう,ハエが無心に花粉を食べていました。生きること。ただひたすらその瞬間を生きること。

 

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 権三さん大殊勲。…… いえ,コンパクトデジカメに付けた愛称です。すぐそばの藪の中でソウシチョウが美声を披露し始めました。カゴ抜けして筑波山で繁殖している外来の小鳥です。90ミリマクロを三脚に付けてる余裕はない。コンデジで鳥が撮れるとは思えないけどままよ,とカメラを差し上げてシャッター押したら写ってました。

 

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 夏の森の林道でよく見かけます,ダイコンソウ。これでもバラ科

 

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 その実。何だこのトゲは。

 

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 ツルニンジンの,これはつぼみ。初めて見た。現場で正体が知れなくて,てっきり何かの液果だと思いました。葉が十字対生するつる植物というのでようやく種名が知れた。まだまだ知らないことがあるものですが,未知のものを調べることの楽しさも思い出させてくれました。これはキキョウ科で,そういえばキキョウのつぼみもこんな危うい風船のようだったな。針で突いたらパチンと弾けそうな。しかもこのツルニンジンのは半透明というか微妙に光を透かして,いかにも未熟な美しさ。咲いた花のグロテスクな姿とは印象を異にします。

 

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 ツクバトリカブト。まだつぼみも出来てません。

 

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 八郷盆地。ヒトの暮らしを遥か上から。

 

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 ノブキ

 

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 ヒヨドリバナ筑波山は美蝶アサギマダラの渡りの中継地点として知られますが,そのアサギマダラが好むのがこれ。なんでもこのチョウの雄はヒヨドリバナで吸蜜しないと成熟できないのだとか。昆虫と植物の不思議な関係がまた一つ。ちなみに今回はチョウの方はいませんでした。残念。

 

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 稜線のブナの並木。見事だ。

 

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 山道を一人黙々と歩んでいると,自然に自分との対話が生まれます。来し方と,行く末と。

 

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 ボタンヅル。これでもクレマチス

 

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 マゴジャクシ。マンネンタケの仲間で針葉樹から生えるもの。キノコ写真家・伊沢正名さんも図鑑の写真を筑波山で撮ってました。

 

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 マムシグサの実。緑から赤へのグラディエーションなんて,人間にはなかなか真似できません。自然ならではの配色。美しい。

 

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 マユミの未熟な実がいっぱい落ちてました。何があった。

 

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 ロクショウグサレキン。私の写真によく現れます。これはやや乾燥した姿だけど,いい色だなあ。

 

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 ケーブルカー! 乗り物好きにはたまりません。大正年間から運行されてます。片道590円は十分にリーズナブル。

 

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 構造上必ずすれ違いがあるのが楽しい。

 

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 帰路,八郷盆地から振り返った筑波山。平野に屹立する筑波山はどの方向からも望見できるのですが,周辺に暮らす人々はみなオレのところから見える姿がサイコーだと申します。見る方向で姿を変える山です。私は水戸からの筑波山より,この東側,石岡側から見たとんがった姿が一番かっこいいと思います。航空祭のとき百里基地から見えるのも,そういえばこの角度だったなあ。

 

 

 

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筑波山で垂直分布を体感する

 

 今回はけっこう専門的なお話です。適当にお付き合いください。


 生物屋の皆さんと一緒に筑波山に登ってきました。目的は「垂直分布を体感する」。


 植物は歩くことができません。そして植物は特定の環境に体を特化させてます。気温,降水量,ふだんの湿り気,土質,肥沃度,日照などなど。ある植物がそこに生えているのは単なる偶然ではなく,そこの環境が体に合っていたから。無数にバラまかれた種のうち,たまたまそいつが「自分の場所」にたどり着けたから。幸運な,その意味では運命と言ってもいい試練の果てにそれはそこで花を咲かせているのです。庭でお花や野菜を育ててらっしゃる方,その難しさをお判りいただけるでしょうか。


 えーと,つまり。


 山を登るとき,標高が上がると少なくとも気温が下がる。すると植物の種類も変わる。低地から高山にかけての植物分布のこのような変化のことを「垂直分布」と言います。最近の高校理科では「生物基礎」で扱われています。

 

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 高山のない茨城県ではなかなか体感できるものではないのですが,唯一,関東平野に転がる巨大なハンレイ岩のかたまり筑波山では,最下層の「丘陵帯」から次の「山地帯」への変化が観察できます。


 まあ生物のことですから,図のようにきっちり線が引かれているわけではありません。筑波山では標高550メートルくらいから冷温帯の樹木が混じり始め,700メートルくらいでほぼ置き換わるそうです。さてどこまで体感できるかな。

 

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 今日は筑波山神社を出発して「白雲橋」コースを登りつつ観察を行い,山頂に至ります。いちばん筑波山の自然を満喫できるルートです。写真は神社境内のマルバクスクスノキの変種で,かの牧野富太郎先生が種の記載に使った由緒ある木。ただし茨城県内のクスノキは多くが植栽です。

 

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 同じく境内のスダジイの木。典型的な暖温帯の木。標高が上がるとすぐ姿を消します。

 

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 登り始めてしばらくは樫かしの森。平地種のシラカシ(右)とやや山地性のウラジロガシウラジロガシは日本薬局方にも載っている尿路結石の薬です。

 

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 林床には水から上がって間もないカエルの子どもがぴょんぴょんと。これはヤマアカガエル

 

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 ベニシダは暖温帯のシダ。

 

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 タブノキは海岸近くに生える暖温帯の木で,こんな内陸の山中には珍しい。万葉集にも出てくる日本人には馴染みの木です。

 

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 参加者の皆さんが集まっているのは,ここにカゴノキがあるから。暖温帯の木ですが県内では珍しい。というか,県内にある十数本のカゴノキはすべてその所在が把握されていて,生物屋さんの間ではあそこのカゴノキと言えば通じてしまうという。生物屋恐るべし。

 

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 カゴノキのこの扱いには,わかりやすく見つけやすいという理由もあります。この木肌をシカの子の模様に例えて「鹿子の木」だって。

 

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 標高が上がるにつれて樹種が変化します。現れたのがアカガシ。材の色が赤いので赤樫。赤い木刀はこの木の材を使ってます。山地性の樫です。

 

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 アカガシの森を征く。この日下界(つくば市)は 35。全員汗だく。一銭にもならないことになぜここまで。生物屋ってのは本当に(以下略)。

 

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 アカガシの純林。私のような森を住処とする者の目には,たまらなく美しい風景です。

 

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 他の植物にも変化が現れます。これは山地性の桜,カスミザクラ

 

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 シキミの実。猛毒。よくお墓に植えられたのは土葬の遺体を動物に掘り返されないため。

 

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 そして標高550メートルを越えたあたりで冷温帯の木が混じり始めます。右手前がアカガシ,奥左右の白い2本がブナ。日本の冷温帯の代名詞と言っていい木です。

 

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 途中の茶屋跡で休憩。参加者の一人がヤブに入ってごそごそしてると思ったらミョウガを採って現れました。本当に生物屋ってのは(以下略)。

 

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 付きまとってくる虫がいて,アブかと思ってよく見たらアオバセセリ! 美しいセセリチョウ,人の汗を吸いに来たようです。こいつの引きが悪いのは,こちらが生物屋の集団だったこと。哀れこのあと✕✕されちゃいました。

 

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 登りは続きます。アカガシは山頂近くまであるのですが数は減り,替わってブナやミズナラが優占してきます。これはミズナラ。ブナと並んで日本の冷温帯を代表する木です。

 

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 垂直な岩をイワタバコが覆っていました。

 

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 オヤマボクチ

 

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 下界では花期の終わっているヤマユリも山頂近くではまだ元気です。コバギボウシに埋もれるように咲いてました。作った花束みたいですが野生の姿。こんなデカい花が普通に咲くんだもんなあ,日本て。

 

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 そして筑波山東峰,女体山の山頂。877メートル,関東平野一望。さすがに涼しくなりました。

 

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 ここから西峰「男体山」との鞍部「御幸ヶ原」まで下りていくのですが,その途中も貴重な植物が次々と現れます。これは県内では希少なヒイラギソウ。春に美しい花を見せてくれます。

 

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 シナノキ。仏教の聖木ボダイジュと同属で,アイヌが樹皮から布を作ることでも知られます。

 

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 実にはヘリコプターの翼みたいな苞葉ほうようが付いて,くるくる落下します。これはボダイジュも同じ。

 

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 朝は笠雲の中だった筑波山ですが,いまは青空の下。

 

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 参加者の帽子にボトリと,羽化直後のエゾゼミが落ちてきてひと騒ぎに。一般の集団と違うのがキャーとかいやーっとかムシ嫌いーとかじゃなくて,可愛いとか綺麗とか写真撮らせろとかの声が飛び交うことです。

 

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 最後は木に付けられました。冷温帯のセミで,東北では街中でも鳴いているとやら。筑波山では登る途中でアブラゼミやミンミンゼミから切り替わります。筑波山,実はセミでも垂直分布が体感できるのだ。

 

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 水源の巨ブナと

 

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 同じく巨スギ。たっぷり森に染まった一日になりました。主催者,参加者の皆さんありがとうございました。

 

 ただ,集団行動だったのでせっかく担ぎ上げたカメラも三脚も活用できませんでした。そこで実は二日後にまた筑波山に登ることになるのですが,それはまた次の記事で。

 

 

 

 

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