シリーズ 冬に生きる …… なんて、NH〇の紀行番組じゃないってば。
クロナガアリとヒガンバナ、冬に生きる生物を二つ記事にしました。天敵もライバルもいない季節を選んで生活する、その知恵と覚悟。凍てついた空気の中、争わず、襲われず、巻き込まれず。過酷だけど穏やかであることを貴ぶ。実際に人にもそういうのがいます。一つの賢い生き方であろうかと。
さて、冬に生きるとなると、実はもう一つ取り上げたい生物がありました。前の2種が冬に行うのはあくまでも栄養生活でしたが、なんと繁殖行動をするものがいるのです。いやネコじゃなくて。
そいつはとても小さく目立たない生き物で、私はこれまで偶然に出会ったことがあるばかり。意識して探したことはありません。今日はそれにトライしようと思うのです。で勇んで来ましたいつものフィールド。
水戸は今朝も氷点下。耐寒重武装で林に分け入ります。アウター3枚重ねでおお体形が変わった。まずは目にしたものをご紹介。
ホオノキの実を拾った。
ジャノヒゲの実。冬に美しく熟します。
ワルナスビの実が可愛い。有毒、有刺、大繁殖の外道ですが、これはこれで日本の山野で必死に生きてます。
スカシダワラ。何度かご紹介した大型の蛾クスサンの繭。もうカラです。
これも同類の蛾ヤママユの、繭の名もヤママユ。天蚕てんさんともいい、この繭から絹糸が取れます。
ザゼンソウ。以前記事にしましたね。よく考えるとこれも冬に開花つまり繁殖行動をしていますが、今回のネタではありません。
センニンソウが緑の葉で春を待ってます。
以前にここで冬虫夏草の一種ガヤドリタケを見ているのですが、今年は見つけられなかった。
さてそろそろ目的物を。それは木の幹にいるはず。
ニイニイゼミの抜け殻 …… お前じゃないぞ夏の忘れ物。
なかなか見つかりません。他の方のブログではそいつは手すりや柵の上にいるというのでそこばかりを見ていたのですが果たせず。それでは木の幹、しかしどの種類の木かわからない。たぶん凹凸があって隠れやすいクヌギあたりかな。文字通り手探りで探します。
そしてたまたま目にしたアカシデの木に何かが。
いました! これが今日のターゲット、フユシャクのメスです。
フユシャクというのは、蛾の一群シャクトリガの中のいくつかの種を指す俗称です。日本に35種。共通しているのは冬に羽化して成虫になること。成虫は食物を摂取せず、冬のさ中ただ繁殖行動のみを行い、産卵して生を終えること。メス成虫は翅が退化していて飛べず、オスの訪い婚でペアが成立すること。
オスは夜行性で飛んで灯火に集まったりするので採集は容易ですが、メスを特に昼間見つけることは困難です。あえて挑戦して大成功。なめらかなアカシデの幹の、陽が当たっているところの、ちょうど目の高さ。見つけて撮ってと言わんばかり。我ながらフィールド運の強さに驚きます。
体長8ミリほど。気づく人とていない小さな小さな生き物です。交尾して、すぐ産卵して、このメスの一生は終わります。きっと何の不満も後悔もないでしょう。ただ一所懸命生きただけ。
つなげること。続くこと。遺伝子のアルゴリズムがただ求め続けるもの。生命の真理。ヒトがこの単純原理から外れてしまったのはいつのことだったのだろう。
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