冬虫夏草ツクツクボウシタケの多産する森、通称 ツクツク森 に行ってまいりました。年に一度の状況確認です。天地をどよもすセミの声、湯を泳ぐが如き熱気と湿気、毒霧のようにまとわりつく小バエども。ヤマビルがいないことをせめてもの地の利と割り切って突入する夏の聖なる森です。
いつもなら「殺しの天使」ドクツルタケとかの怪しく禍々しい森の精たちの出迎えがあるのですが、今年のように高温少雨の夏はキノコの出足が遅れます。さて冬虫夏草はどうだろう。
ありました。さっそく愛用のコンパクトデジタルカメラ、リコー WG-80 で記録…… するのですが、モニターに写る画像が何かおかしい。曇りガラス越しというか、紗が掛かったようなというか、いまいち視界がぼやけます。
掘り出してまた記録。やっぱり画面が霧を透すようですっきりしません。
試しに太陽に向けてみたら…… わあ何だこりゃ。乱反射で大変なことになってます。昨年新調したばかりのカメラなのにー。
ツクツクボウシタケの方は順調に発生していて、啓蒙配布用に数を揃えることができました。キノコ観察会で参加者にお配りすると喜ばれます。でもとにかく問題はカメラです。
右は先代 WG-40 、左のオレンジ色が今の WG-80 。中身は同じものです。リコー社は型番を更新させたものを毎年新型と称して売ってますが、性能に違いはありません。先代は実に7年間、荒っぽい使用にも耐えてよく働いてくれました。少なくとも1年で壊れるようなお間抜けではないはずです。どうした、頑張ってくれ。
この森で毎年見かける美しく繊細なキノコ、キツネノハナガサが萌え出てました。レンズを向けてみます。あああ視界があ。
こりゃダメだ。
特に太陽光のハイライトが入るともう写真になりません。これは由々しきこと、ううむと唸ることしばし。常に携帯し、私の日常を記録し続ける我が身の一部です。携帯電話は持たなくても平気、でもカメラが傍らにないと刀のない武士みたいでタマシイ抜かれた気分です。そのカメラが不調とは。
帰宅後、仔細に観察します。これは再現写真ですが、レンズの前にある保護フィルター、その内面が曇っておりました。フィルターを外せば拭くこともできますが、特殊なドライバーでしか開けられないようになっています。いやそもそも、この完全防水カメラの内部が結露するなんてあり得るのだろうか。
とにかく内部を乾燥させましょう。まずはバッテリーと記録ディスクを外そうと扉を開けて
バッテリーを取り出したら
ぼとぼとぼと。何が起きたのかわかりませんでした。バッテリーと共に多量(としか言えない量の)水がこぼれ落ちました。ええええぇ?
どこから来たのかわかりません。いつの間にかカメラ内部に水が浸入していたんです。しばらく水中撮影はしていないし、本当に理由がわかりませんけどカメラ内部が竜宮城。なのにモニター画面が消失することもバッテリーが火を吹くこともなく黙々と写真を撮り続けた WG-80 。日本の科学スゲー。リコーの技術スゲー。
フィルター内部が結露するのも当然の成り行きでした。内部には水蒸気が行き渡っていたことでしょう。本当によくも火を吹いたりしなかったものです。外せるものをすべて外し、開口部をすべて全開にして風通しの良い日なたに置いて、どうやら水けは抜けました。ああ危なかった。
思えば入手して早や一年半。先代は「権三ゴンゾーさん」と名付けて大切にされていたのに、少し扱いがぞんざいだったかも知れません。同じ容姿、同じ性能という新鮮さの無さがいけなかったのかも。こうなったらこの現行機も「権三さん」にしてしまおう。二代目権三さん。南極観測船「しらせ」もそんなネーミングでしたね。道具は人に使われて魂を宿す。名があれば愛着も深まります。
権三さんの名誉のために、昨年撮ったキツネノハナガサです。暗い森でブラさずに手持ち撮影が素早くできる、このカメラの強みがよく出ています。
ようやく天から雨が降るようになりました。水戸のキノコはこれから。この一件、森から出直しを命じられたようにも思えます、撮り直せと。いいでしょう、ツクツク森にはもう一度行くつもりです。そもそもが私のフィールドの内でも屈指の聖なる森、こんなことでケチをつけてはなりません。改めて権三さんに頑張ってもらいましょう。
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