熱風吹きすさぶ日曜日。カレンダー通りに休める仕事のはずなのにここんとこ土曜日休めた日がない。少し涼しい風に吹かれてみようかと,海に出ることを思い立ちました。スカシユリの咲き具合を見る,という名目つけて。
先週,海浜公園のスカシユリが咲き始めたのを見ているので,今日は北上して日立の海岸に出てみます。
まずは日立港,久慈浜くじはま海水浴場。
けっこうな人出です。みんな幸せそうだなあ。背後に巨大LNGタンク,火力発電所,原子力発電所があっても茨城県人には屁でもありません。
日立の海岸は基本的に20mほどの高さの崖です。砂浜を見下ろす崖の中ほどに。
今日見た唯一のスカシユリでした。早咲きの個体群のようです。
アマツバメが飛び回っては崖の一か所に集まります。
巣でもあるのかと思ったけど,単に止まりやすい場所ってことらしい。
日立には南北に20キロの海岸線があります。少し北上して水木みずき海水浴場。このあたりは常陸国風土記にも「密筑みつきの里」として記述され,美しい泉が湧き,ウニ・アワビ・魚や貝類の産地で,人々は豊かで幸せに暮らしていたのだとか。…… 冬暖かく夏涼しいこの土地で,太古の人たちの楽しい歌声が聞こえてきそうです。
看板下のプレートにあのお名前が。そうか環境大臣だったか。
これが水木の海水浴場。小さな小さな地元民の海水浴場だったのですが,最近は県外の方も見えるようです。
ちょうど引き潮に当たりました。沖のアラメの藻場が水面上に。ウニとかアワビとか,なるほどいっぱいいそうです。
陸は熱風ですが,海は沖に寒流があるせいで澄んだ涼風が吹きわたります。茨城の海沿いほど夏に快適な土地を私はほかに知りません。
ああ気持ちいい。
アオスジアゲハが塩分補給に来てました。いや冗談じゃなく本当に。
潮騒。海風。子供たちの歓声。気づいたら突堤の上でぼーっと小一時間も過ごしてしまいました。おっさんがこんないい場所に居座っては家族連れに迷惑。移動しましょう。
大好きだった河原子の海水浴場は堤防がかさ上げされてこのありさま。大震災で一番姿を変えた海岸です。車を降りる気になれなかった。さらに北上します。
ここはさらに北側の名もなき浜。人口18万の工業都市に,こんな誰もいない海岸があるんです。
繰り返します。人口18万の都市の海岸です。
滝だ。崖から海に落ちる滝だ。ここは知床か。
なーんて。よく見たら排水口。地図を見ても上に川はなし。どうやら事業所の浄化槽からの排水のようです。水は澄んでるけど栄養塩類は豊富のようで,藻だけじゃなく細菌のコロニーまで。
魚はたくさんいたんですけどね。
崖には野生化したガクアジサイが大繁茂。こんな見事な大群落,見たことありません。
崖の中腹に謎の廃墟。常陸国風土記にも出てくる,古くから栄えた土地です。いろんな時代のいろんな残滓ざんしが。
廃墟から海を臨んで。…… ここに建物を建てた気持ち,よくわかります。
崖の上にあった建物が崩落したようです。そうか海沿いにはこういう危険も。
我泣きぬれてカニとたわむる。はぐれたイワガニが。
大きなモクズガニが死んでました。普段川や田んぼに住んでいるこのカニは,年に一度海に下って産卵するというリスクを冒さないと繁殖できません。理不尽な運命を背負っているのは人間ばかりじゃないんです。
謎の家。崖と砂浜の間,ささやかな堤防に挟まれて。右はじの,堤防を乗り越える小さな石段のみが出入りする道です。どうしてこんなところに家を作ろうと思ったか。この家にはどんな生活があったのか。少なくとも私が知るこの20年ほど,ここに誰も住んでません。
とはいえこんな場所での生活にあこがれる気持ちも理解できます。実際に世捨て人の住まいのようなものがあちこちにあります。正直,私もこの辺りに隠れ家を作りたい。そこで毎日毎日潮騒を聞きながら…… いかんいかんいかん。
人口18万の都市の海岸。本当に私しかいません。
と思ったら,堤防の行き止まりにかっこいいお兄さんがいました。大型スクーターで乗り付けて,持参したビーチチェアに横たわり文庫本を読んでました。スマホじゃありません。文庫本です。大柄な筋肉質の体,ドレッドっぽい髪。漫画に出てくる不良のリーダーそのまんまのカッコよさ。手下には慕われるけどクールで無口,孤独を愛する孤高の漢おとこ。本当は何者なのか知りませんが,この場所の静けさを知っているのでしょう。お邪魔しないように。
半日,たっぷりと潮騒を聞いて。たっぷりと潮気を吸って。
ビーチグラス,たくさん拾ってしまいました。かたわらに置いて,今日の潮騒のよすがとしましょう。さあまた明日から仕事です。
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