続きます、新潟シリーズ。
二日目、今日こそはギフチョウを見なければなりません。降水確率50%、天気が崩れるまでの時間勝負と考えて、確実性の高い弥彦山を目指しました。幸い海沿いは雪も無く、弥彦山スカイラインを快調に駆け上がります。弥彦山の西側はすぐ日本海。青黒いほどに深みのある海が逆にそそり立って見えます。遠くにはくっきりと佐渡島。大きな島なんだなあと実感。日本海と佐渡、ともにゆっくり鑑賞したいところでしたが先を急ぎました。
弥彦山でギフチョウを見て、降りてきたときには海上の霞は濃く、佐渡島も…… 島の形は皆さんご存じのように、まるで二匹の海竜が背を見せたように山脈が並んでいる、その二重の山並みが朝方は重畳してくっきり見えていました。今はもう手前の山並みしか見えません。少し残念に思いながらも、そうか新潟は海を見れば天気の変化がわかるんだなと妙に納得したり。
そして茫洋と日本海と佐渡の海景を眺めていて、ふと奇妙なものに気付きました。なんだあれは。
これ。佐渡島の手前に、その山脈と同じ高さに見える白い山が現れています。しかもこちらに近づいてくるように見える。なにこれ、怖い怖い怖い。
地元で口にするのを禁忌とされる怪異か。侵略者の秘密兵器か。上陸を狙う巨大生物の隠れ蓑か。ああ、見てはいけないものを見てしまった…… と思ったのですが
ご心配なく。やがてその場で崩壊していき、それがただの雲だったと知れました。
日本海上に雲ができることは知ってます。暖かい海流の上を冷たい北西風が吹くとき、蒸発した水蒸気が凝結して雲になる。それが日本海岸に押し寄せて冬の豪雪、あるいはこれも日本有数の雷雲となる。知識としては知っていたのですが、まさかこんなでき方をするとは。
見ていると、あちこちに似たような不気味なものが湧いては潰れて行きます。山の上の高い位置からなのでよく見えます。
新潟の人はこんな光景を知っていたのかな。何かこんな雲の湧き方を表わす言葉があるかもしれません。もっと宣伝してもいい、少なくとも私にはこの地に来たからこそ見ることのできた怪景、絶景です。
やがて雲は増えていき、雲海となりました。
それがまるでアメーバのように大地を飲み込み…… こうして新潟の天気は代わっていくんですね。
帰路に見た海景。いつかここから、海に沈む夕陽とやらを見てみたい。
ちなみにこれは大河津分水路の河口。信濃川の膨大な雪解け水と土砂を日本海に逃がしています。この季節、新潟のどの川も黄土色の濁流になっていて、これもまた季節の風物か。
面白いものを見ることができました。茨城県でも冬の朝、朝日をバックに海面を白く覆う蒸気霧を気嵐(けあらし)と呼んで冬の風物としています。きっと日本全国、その土地ならではの気象現象ってのはあるものなんでしょうね。
↓ ごめんなさい、新潟シリーズまだ続きます。