ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

澄んだ水と風の町 /勝山市で過ごした一日

 

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 巡検2日目。昨日に続き,福井県勝山市です。


 人口は二万二千人ちょっと。母体となった勝山町は繊維業で栄えましたが,今は恐竜の産地として有名です。著名な出身者に天龍源一郎三屋裕子花菱アチャコ …… ってなに,この幅の広さ


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 質素な市庁舎というのも好感です。


 高い建物もなく,道を走る車も少ない。空の広い土地が好きで,渋滞大嫌いの私にはとても印象の良い街です。市街を貫くのは九頭竜川クトウルーと読めるってだけで私は大喜び。今回,この川は巡検の観察地になってないのが残念です。うわさに聞く暴れ川の河原には何があったろうなあ。


 夏の日本海側は暑いぞと脅されていたのですが,思ったほどではありません。むしろ湿度が低いぶん快適で過ごしやすい。関東で南風が吹く時のむせ返るような暑さがいかに異常かを実感します。


 今日の第1ストップ(観察地)は,市内北谷奥の恐竜発掘現場。一般車通行止めの,このためだけに作られた林道をバスで行きます。恐竜博物館の人が付いているのでゲートもフリーパス。

 

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 道々のカーブミラーがこれ。地元,気合入ってます。

 

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 やがて巨大な崖が現れます。これすべて恐竜を含む地層。


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 ジオパークだ。茨城のは取り消しになったぞ


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 手前が天然記念物指定のすでに掘削された崖。その向こう側が掘削中の崖。


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 一番手前の沢沿いで,中生代のワニの骨が見つかったのが最初でした。ここに「手取層」があるのは知れていたのですが,当時は道もなくここまでは沢を2キロ遡るしかなかったそうです。そこから始まった発掘で,ついにイグアノドンの仲間フクイサウルスが見つかったのが1989年。そして状況は加速します。


 水が削った谷の底から古代が蘇ったというニュースに人々は盛り上がり,地元の自治体から次々と予算が降りて,道が作られ重機が入り,トントン拍子にこの状況となりました。飛びついた,と言っては失礼ですが,これが地域振興に使えると判断した首長さん,それを説得した関係者の皆さん,慧眼けいがん恐れ入ります。私らから見ればうらやましい限りです。だっておらが町の裏山から恐竜が出るんだよ。すげえええ。


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 およそ1億年前,パンゲアが南北に分かれたその北側のローラシア大陸の一部,ここは大河のほとりでした。ご近所の川を想像しないでください。今の日本国内とは根本的にスケールの違うナイル川とかアマゾン川みたいなの。この大河のほとりでは,多くの恐竜が生まれ,食い,育ち,そして死ぬという日々の生活を営んでいました。死んだ者の骨の多くはその場で朽ち果てましたが,ごく一部が大河の洪水の際に流され泥に埋まりました。中にはまだ遺体の状態のまま埋まり,ほぼ全身の骨格が残ったものもあります。これらが時の試練の果てにいまここにある訳で,いや地球の営みってすごいなあと。


 で,そばまで行ってみるとこれがまたすごい場所で,化石だらけなんです。貝化石と植物化石がびっしり。その中から恐竜の骨を探すわけで,じっさいに未発表のものがたくさんあるとか。おまけに恐竜の足跡までありました。前に他所で見たものは崖のくぼみで,言われればそうかという程度。ここのは爪までわかるはっきりしたもの。…… でもごめんなさい,いずれも写真ありません。ここから先は撮らないでくださいって言われたもので。一般人が入れない場所まで見せてもらえたので,文句は言いません。


 ちなみに発掘作業は大学生の,ほとんどボランティアと言っていいバイトさんたちがやっています。それと恐竜博物館でも発掘ツアーを組んでいるので,それに参加すればここの岩を叩けます。けっこう評判だそうです。


 日本随一の化石産地を堪能して,次のストップは「伏石ぶくいし」の観察。何だ伏石って。


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 これが伏石(のデカいヤツ)。勝山市の北方と東方は古い火山列で,最高点は千七百メートルを超えます。火山といいこの高さといい,本当にうらやましい。古い火山なので崩壊が激しく,「岩屑なだれ」という山体崩壊の土砂が各所を覆っています。とんでもなく大きな岩塊も含んでいて,そういう岩のことを地元では伏石と呼ぶそうな。戦後に多くが撤去されて農地が作られましたが,これは神社の境内で神の依り代と考えられたので残されました。デカい。こんなのが山の上から転がってきたんか。


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 この田んぼも伏石を撤去して実ってます。自然の驚異と,ヒトの営為と。


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 そこから登ったこの高原温泉で昼食。澄んだ涼風が吹きわたります。市内にこんないいところあるんだ。


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 同行者が伏石の上でおっさんずラブ。お邪魔しないように。

 

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 お花もいろいろ。オトギリソウ。


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 ヤマジノホトトギス


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 ゲンノショウコ


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 立ち入り禁止の一角を染める白い花は…… 外来の有害植物ワルナスビでしたー。こんな所にもはびこりよって。


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 地学の先生の集まりですが湿原で植物観察も。


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 モウセンゴケ


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 ヌマトラノオ


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 エゾミソハギ


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 キリギリスだー。

 

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 次のストップ。一般人が見ればただの崖でしょうが,地学のひとには違う見え方をするようで。これは岩屑なだれの先端がクトウルーいや九頭竜川に浸食されてできたもの。堆積物の断面が見られるから貴重だと。さすがに私にはわからん。


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 市内に戻って…… そうかまだ勝山市内だった…… 織物業記念保存施設ゆめおーれ。


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 美人がお出迎え。市役所の方だとか。


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 復元された機械がグルグルと。動画も撮りました。疲れた時に連続再生で見続けようと思います。


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 福井は羽二重餅で有名だそうですが,「羽二重」の意味を知ってましたか。絹糸を織るとき,タテ糸を二重にして肌触りを良くしたものを指すんだって。チコちゃんにも教えてあげよう。


 最後に勝山市内を歩きます。観光ではなく,市内にも見ものがあるんです。


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 車のほとんど来ないメインストリート。町並みが古いアルバムのよう。


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 水戸も昔はこんなだったんだろうな。

 


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 この高いシャッターの中にはお祭りの山車があるらしい。


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 どこからどう見ても昔の医院の建物。ちゃんと残っているんだ。


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 いえ街並み散策が目的じゃなく。


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 街が九頭竜川に向かって傾斜しています。


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 街中にこんな崖。河岸段丘の崖なんです。これは七里壁と呼ばれるもの。


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 街中に水が湧いて


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 それが段丘下の澄んだ流れになってます。


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 市街地の真ん中にサワガニが平和に暮らす,そんな町。


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 民家から流れに降りるこんな石段も大好きです。そういえば同じ北陸の金沢も段丘や流れが街中にありました。いい町だったけど,私には賑やかすぎるかな。都会の水が合わないんです。


 今日はこのあと山越えで石川県に入り,白峰温泉というところに宿をとります。いろいろ面白いものが見られた1日でした。勝山市,初めて来ましたが「住みたい町」リスト入りです。いつか再訪して,九頭竜川の川辺で1日過ごしてみたいなあ。


 ふと思います。自分がこの静かで空気の澄んだ小さな町に生まれ育っていたなら,どんな人生があったろうかと。それはそれで,穏やかないい人生になっていたろうと思うのです。

 

 

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