朝鮮五味子と書きます。毎年この季節になると,濡れて散り敷いたカラマツの落ち葉の香りとともに,あのルビーのようにきらめく赤い実を思い出します。
2000年代の前半,薬草集めに精を出していた時期がありました。特に「実もの」にこだわって,マタタビとかナツメとかトウネズミモチとかガマズミとか,身近で手に入るものを片っ端からアルコール漬けにしてました。ドクウツギも漬けたものがありましたが,これは危険なので廃棄してます。
そして最後に薬草図鑑で目を付けたのがチョウセンゴミシでした。
五味子とは甘味,酸味,辛味,苦味,塩味の五つの味がある実という意味で,漢方で使われる生薬です。かつては朝鮮半島から輸入されていたのでこの名がありますが,のちに日本にも産することが判明しました。北方・寒地の山にあるつる植物の実です。茨城にはありません。
図鑑にある美しい赤い実が欲しくなり,ネットで産地を調べますがなかなかズバリという記述に出会いません。どうやら関東でも北のほうにはあるらしいと,2005年の9月に赤城山に出かけました。空振りでしたが,初めての赤城山はそれなりのモノが見られて愉快な経験になりました。
これに味を占めて,その年の11月に今度は長野県まで遠征しました。これも人生初の八ヶ岳を(車で)越えてみたり,あちこち駆け回りました。
うわさに聞く八ヶ岳の白樺林やカラマツの黄葉を堪能しましたが,やはり目的の実は見つかりません。もはや夕刻,諦めつつ入った暗い林の中でとうとう見つけた時は天地に感謝したものです。もっと何年も探すことを覚悟していたもので。
暗がりの中でしたがこれだけ採れました。日に干してカラカラに乾燥させてから漬けこみました。
期待以上に美しい実でした。
出来た薬酒はあまり私の体質に合わなかったようで特に効果はなかったのですが,またあの赤い実を長野の森で見たくて,翌年,翌翌年にも長野に詣でました。
信州の秋のあの透き通った美しさは茨城には無いものです。本当にここなら童話のような物語が生まれそうな。ちょっとでいいから住んでみたいと思います。
移動中に見つけたクロマメノキ。これも茨城にはありません。美味しゅうございました。
とうとう群生地を見つけました。高地で見るという心理効果もあるのか,この鈴なりの姿が別世界の光景に見えます。信州ならではの絶景と言わせていただきます。
大袋たっぷり二つ分。
途中の空き地で干してみたり。
この十年ですっかり出不精になっていることを,この記事を書きながら痛感しました。このまま人生を守りに入ってしまうのだろうか。いえいえ,まだやりたいことがいっぱいあります。そのために体も鍛えているし,何より好奇心を失ってはいません。この世の美しいものを見尽さねば死ぬに死ねないのです。
遠くへ! もっと遠くへ! 風の吹き尽すその果てへ。