ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

千葉の森で見たもの キョンとシダとヤマビルと

【グロ閲覧注意】と,まず申し上げときます。動物の死体写真あり。

 

 

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 すみません,千葉の森をナメてました。


 千葉県。茨城よりも平坦で高い山もなく,開発され尽くしてどこにも人が住んでいる。私が歩きたくなるような自然など何もない。行ったこともないままそんなイメージを持ってました。


 2015年夏。生物屋さんの集まりで千葉の森に行くとやら。東大の施設があって,そこの宿泊所を利用して演習林を歩けるとのこと。いい機会,と参加しました。でも何か珍しいものが見られるとかはあまり期待はしてなかったんです。

 

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 え,こちらが東大の先生?という若く可愛らしい女性がまず演習林内を案内してくれます。お散歩気分でひと歩き,と思っていたらマイクロバスに乗って照葉樹林内の林道を長時間ドライブ。ここは本当に千葉か?

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 ヘルメット着用が入山の条件です。

 

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 突如山中に現れる事務所。ほんとに現役の事務所。明治の昔から使っているんでしょうか。こういうところはさすが東大。

 

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 この事務所は巨大なセンペルセコイアを背負ってました。

 

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 杉の品種ごとにタテ一列に並べて植えたら,性質の違いで縦じま模様ができたとか。面白いなあ。

 

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 まるで「もののけ姫」のシシ神の森のような深い森でした。しかも茨城では低地にしかない照葉樹が山を覆っています,それこそ鬱蒼と。ただし樹齢の大きな木は少ないようでした。

 

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 行く前からさんざん脅かされたのがこれ,ヤマビル。茨城にいません。

 

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 7月の雨の多いころに下見に来た今回の世話役が一歩林内に踏み込んだとたん,そこらの落ち葉の下から一斉に這い出して襲ってきたそうです。鎌首をもたげて,ものすごい数で。音もなく忍び寄り,服の隙間から皮膚に取り付いて吸血する。丸々と膨らむまで吸血して離れる。気づくのは噛まれた痕からだらだらと出血して服が赤く染まるから。ああ,卒倒しそうだ。その季節には,東大の宿泊所の人が駐車場の草むしりをしていても襲われるそうです。

 

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 若い奴に取り付かせてみました。くくく。

 

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 長靴に取り付かれましたが,忌避スプレー「ヒル下がりのジョニー」の効果で登って来れません。いや本当にあるんだってば,そういうの。

 

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 ヒルだらけの原因はこれ。「キョン」です。ヤマビルのおもな宿主はシカ。指の隙間にちょうどヤマビルが取り付きやすい場所があるとか。いま日本中でシカが大増殖して里に下りるようになり,それまで深山のみに暮らしていたヤマビルも低地にまで生息地を広げました。東京都の多摩地区の田畑でも普通に人が襲われるようになり,場所によっては危なくて子供が外で遊べないとか。幸いにして茨城には野生のシカがいないのでヤマビルも見かけることはありません。しかし千葉にはシカがいて,さらに「行川アイランド」というレジャー施設で飼っていた台湾ジカ「キョン」が事故か故意か逃げ出して住み着き,これにイノシシも加わって,千葉の山は大型草食哺乳類の大繁殖地になっているのです。

 

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 千葉の気候の良さも手伝って,こいつらの繁殖率がすさまじい。この東大の事業所は専門の罠猟師さんを雇って毎年500頭駆除しているのですが,さっぱり減る様子もなく植林地に被害を出しています。本気でオオカミを導入しないと,日本の森が危ない。ちなみに,わざわざ遠くから来て,罠に捕まっている動物を逃がして歩く人がいるそうです。たぶん私,こういう人間とは動物以上に会話が成立しない。

 

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 山を歩いて数時間後に戻ったら,動物班の参加者たちがいい仕事してました。


 さて千葉の森。私は植物班としておもにシダの採集と分類をしたのですが,まあ地味です。とにかく見たものをご紹介します。以下モリアオガエルの手前までは飛ばして結構ですよ。

 

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 ハコネシダ。

 

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 ナチシダ。漢字で那智羊歯でしょうか。いかにも南方系。

 

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 マツザカシダ。シダの写真,退屈じゃない?

 

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 ミツデウラボシ。茨城にもあるし。

 

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 ヘラシダ。とにかく温暖なこの森はシダが豊富です。茨城の森との対比が面白いのですが,いかんせん玄人向きのネタですね。あとちょっとだけお付き合いください。

 

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     オサシダ。

 

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 クジャクシダ。

 

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 トウゲシバ。まるで肋骨ががばっと開いたような胞子葉。トウゲシバは茨城にもあるのですが小さく元気のない姿で,胞子葉もあまりつけません。

 

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 ウラジロ。正月飾りに使うアレですが,胞子のうが気色悪いです。

 

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 これだけシダがあるからには当然こいつも。シダ植物の有性世代「前葉体」です。

 

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 顕花植物もざっと。ウバメガシ。

 

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 アカガシ。

 

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 ひたち海浜公園にもあった,ウメガサソウ。

 

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   ヒメヤシャブシ

 

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 カクレミノ。

 

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 ヤブニッケイ

 

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 イズセンリョウ。

 

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 コミヤマスミレ。

 

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 イヌビワ。

 

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 バリバリノキ。初めて見ました。もうバリバリです。

 

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 クサアジサイ

 

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 カンアオイ! ギフチョウの食草として憧れの植物でした。野生のは初めて見たかもしれない。持ち帰りたかったなあ。

 

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 マルミノヤマゴボウ。しばらく記録が絶えていたのだそうですが,この森で再発見されました。ヤマゴボウの仲間にこんなきれいで希少なものがあることを知りませんでした。

 

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 ヒメコマツ,いわゆる盆栽の五葉松。この森のは希少な遺存分布だそうです。

 

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 珍しいものじゃないけど,ヒカリモ。

 

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 オニグルミのリスに食べられたやつ。宿泊所の敷地内に一本生えていて,毎朝リスが朝飯を食べに来ます。

 

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 ヒメハルゼミ⁉ 茨城では天然記念物!

 

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 宿泊所の上に立派なお寺があって,その本堂前の泉水にモリアオガエルの卵のうがありました。不思議なことに茨城には分布していないんです。カエルごときで千葉に負けるとは。

 

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  上陸間もない幼体。

 

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 成体。

 

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 千葉の森。かの大山倍達が一方の眉を剃り落して修行に籠ったのもこの森だとか。

 

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   東京大学さん,ありがとうございました。

 

 

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