突然,椀掛けわんがけ,パンニングをやりたくなった。ええ,そりゃもう突然に。
椀掛け/パンニングというのは,砂金採りのイメージで出てくるアレです。丸いお椀に泥をすくってガッシュガッシュ回すと砂金が採れるっていう。正確には,遠心力を利用して軽い粒を弾き飛ばし,重いつまり比重の大きい鉱物を残すという,遥か昔から砂金や砂鉄を採るのに使われた技術です。
道具はこんだけ。長靴以外百円ショップで全部そろいます。今回は都合で一部ホームセンターを利用しましたが,いずれにせよ特別な道具は一切要りません。「椀」は植木鉢の水受け皿で十分。
水戸市内の丘陵地帯の小川に繰り出します。まあどんな川でも良いのですが,気分として汚い川は避けたいですね。で,底の砂泥をすくってガッシュガッシュやると……
黒い鉱物が溜まります。
びっくり。この川砂鉄だらけだった。
拡大してみます。長い柱状のはたぶん角閃石。真っ黒い粒が砂鉄つまり磁鉄鉱。あと輝石なんかもあるんでしょうが専門外なのでお許しを。とにかく金属を含んだ有色鉱物がごっそり取れました。みな粒が大きいのは,この辺りで深成岩が風化されてできたばかりの粒だから。これと比べると,ずっと川や海流に流されて削られた海岸の砂鉄は粒が細かいです。
比較。今回の砂鉄その他。おお立派な角閃石。
同倍率の海岸の砂鉄。ね? 小さいでしょ。
砂鉄ひと粒。かろうじて磁鉄鉱の結晶っぽく見えます。
場所を変えてガッシュガッシュしたら,あれ何だこれ。…… ざくろ石じゃないか!
そう,1月の誕生石のガーネットです。宝石になるものはごく希少ですが,ざくろ石そのものは花崗岩に含まれていて,茨城県内で普通に見られます。茨城は古い時代の深成岩が多くて特に筑波山周辺は良質な花崗岩産地。ペグマタイトと呼ばれるゆっくり冷え固まった部分では大きな粒のものが採れます。旧真壁町の「山の尾」はそのスジでは有名なざくろ石の産地でした。センチ級の美しい結晶が採れたのですが,マニアの人に荒らされて見る影もないとか。欲得が絡むと「自然を楽しむ」から「荒らす」に変わってしまうのです。この点は久慈川の砂金あたりをネタにいずれ。
自然を金銭に換えようとしてはいけない。知識をもって楽しむ。それだけで世界の見え方がどんどん深くなります。同じものが何倍もの情報量で迫ってくる。そうなれば,自分の住むごく狭い世界でも森羅万象魑魅魍魎,退屈することはありません。近所の小川でも,海岸の砂浜でも。
東京駅八重洲地下街から地上に出る階段。大きなざくろ石がガンガンと。…… 世界は発見に満ち満ちています。
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