ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

畑のお茶屋さんが期待通りだった件

 

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 天気予報のウソつき―。三連休大荒れとか言って大して降らなかったじゃんー。


 とりあえず悪い方の予想を言っとかねばならないお立場もわかりますがね。


 さしたる予定はなく,といって今さら遠出する気にもなれず。で思いついたのが,ちょっと久慈川見てみようかなっと。ええ久しぶりのメノウです。


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 ここは常陸大宮市常陸太田市(紛らわしくてごめんなさい)の境。地理院の地図には名前のない橋です。洪水の時には沈下するタイプの通称「地獄橋」。あとで聞いたら,実際この橋では事故が多いとか。


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 増水してますが水はキレイ。

 

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 目指すはあの河原。ああ,思ったより狭い。まず見た目で落第です。


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 このカナムグラの藪を越えろって? カナムグラをご存じない地方の方もおられるので説明しますが,全草トゲに覆われたどうしようもないつる草です。葉から茎から花まで,ことごとくトゲだらけ。素肌を出していたら血まみれになります。ううむジャングルブーツに履き替えねば。でも絶対に戦果が期待できない。費用対効果というのを真剣に考えながら堤防を歩いていたら


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 なんだこれ。 …… 畑のお茶屋

 

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 手作りの看板。何の飾りもない百姓家。荒れ放題の庭。明らかに古民家カフェとかとは次元の違うダメな雰囲気。するぞするぞヤバい匂いがぷんぷんと。


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 サービスの内容まで手に取るように予想できる危険案件です。ああ入りたい,怖いもの見たさで。

 

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 200円とか300円とかならドブに捨ててもいいか。そうだこの卵かけご飯に惹かれて入店したってことにしよう。


 まず庭にいた70代と思しき百姓ジイさん,その頭上に「農業CAP」としか表現できない帽子を載せ,足には長靴,そのまま野良仕事のできる中途半端で汚ない服装,間違いなくこいつだと狙いをつけたジイさんにやってますかと尋ねてみます。はいどうぞと答えて家の方においお客さんだぞと声を掛けるジイさん。ほらやっぱり。

 

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 で入店しようとするのですが,そこにあるのはただの百姓家。ほんとに普通の百姓家で,店舗入口が他にありそうで玄関から入るのに躊躇します。でもやっぱり玄関から入るのです。


 ガラガラと引き戸を開けたその中も見事に想像通り,いやその斜め上を行きます。土間に所狭しと並べられたしなびた野菜と卵,農具に靴その他生活用品。壁には地元の観光ポスターとかが脈絡なく貼られたりして。モノが置かれてなくて上がれる場所はそこしかないという一点から,靴を脱いでいよいよ突入。


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 囲炉裏がありますが… すいませんバアさんと呼ばせていただきます… 出てきたバアさんが今は暑いので焚いてませんと言い訳します。うん,暑さはともかく,もう少しまわりを片づけてお客さんが囲めるようにするといいよ。


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 そして上がったところが客間。畳に安物のカーペット,普通のテーブル,汚い座布団,神棚,訳わからない個人旅行の土産品,壁ぎわに雑然と積み上げられた生活用品。ああ,父の親戚の百姓家の中そのままだ,40年前の。


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 なんだろうこの,知らない一般人の家に上がり込んでしまったような居心地の悪さは。

 

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 唯一,テーブルに置かれたこのミツバアケビはきれいでした。でもやはり雑然とした調度品が写り込んでしまいます。


 お茶らしいものを運んできたバアさんが,これまた手作り感満載のメニューを差し出します。卵かけご飯,というとまだご飯が炊けてないからできないと。


 そうきたか。

 

 


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 仕方が無いので琵琶ジュース200円と磯部餅200円を注文。するとバアさん,メニューと差し換えで目の前にドンと置いてきたのがなんと「いだてん」の脚本。さっき私が歩いていた土手で,去年の7月に今年の大河ドラマ「いだてん」のロケが行われたとか。よっぽど自慢なんだか,バアさん聞きもしないのにロケの様子を語り始めます。いやバアさん,あの大河ドラマもうポシャってますから。


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 お茶とともに持ってきたウエットティッシュを開けて愕然。カラカラに乾いてます。おいバアさん,これコンビニで弁当買うとサービスで付いてきたやつだろ?しかも何か月も前の。なんかもう,こちらのメーター振り切れるほどに攻めてきてます。予想越えどころじゃありません。


 まず運ばれてきたのが琵琶ジュース。うちで採れたものです,と。原料費かかってないのか。飲んでみると確かにビワの味がするのですがとにかく薄い。ビワのあの濃密な味を期待したのですが,なんかもうどうでもよくなってきた。


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 意外なサービスが来ました。これもうちのものですが,と立派なイチジク。素材そのものなのでとりあえずは安心かな。 …… 問題はそれに添えられたもの。


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 さや付きの果物ナイフ! 1970年代までは見かけたぞ。使い終わったらそのままさやに戻しちゃう,衛生観念も何もないやつ。汚れ具合からして,本当にその時代からこの家で使っているものです。これを使えって?


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 まだ終わらない。ナイフと共に置かれたこの広告。 「ん?」 なんて思いっきり間抜けな声を上げてしまいました。バアさんすかさず「皮を入れるのに」


 折り紙の箱! え?え?え? これお客に出すの? 新聞広告を四角く切って,丹念に折って,畳んで,そんなイタいものを出すの? 1970年代までしか許されないと思うぞ,その行為。


 次から次へと繰り出される荒業にかなりダメージが蓄積してきました。逃げ出したい欲求がふつふつと沸き上がりますが,とにかくメインディッシュと対戦しなければ。


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 ついに来ました磯辺餅。保存してあった自家製の餅を無造作に焼き,醤油を垂らし,また無造作に海苔を巻いたもの。噛むと固い皮がバリバリと砕け,口の中に貼り付きます。我が家で焼く餅だってもう少し柔らかいぞ。本当に,何十年も前に田舎の家で出されたものそのままです。


 400円を払って,美味しかったですよー今度は卵かけご飯食べに来ますからねーと愛想よく脱出したのですが… 出がけに今度はジイさんのほうに捕まって「いだてん」のロケの話を聞かされたのですが… さてどうしよう。卵かけご飯,どんなのが出るか容易に想像が付きます。家族が使っていた茶碗,下手すると縁が欠けているようなのにご飯が盛られ,添えられた醤油瓶はこれまたこの家で何十年も使われたモノ,乾いた醤油がカピカピにこびりついていたり。本当に,一銭も元手をかけないサービスが提供されるでしょう。値段相応,アッパレと言っておきますが,…… 私はもういいや。

 


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 妙なパワーが身に付いたのは確かです。先ほどはあれほど躊躇したカナムグラの藪に,靴を履き替えてまで突入しちゃいました。河原に降り立って,しょぼいメノウ一つ拾って,この河原はオッケー。もう来ることはないでしょう。

 


 ジイさんバアさん,なんて呼び方してごめんね。こういうサービスを喜ぶ人は必ずいると思いますよ,どこかには。

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 イチジクは 美味しかったし。

 



 この世は驚きに満ち,明日という日もまた前人未到の秘境です。日々これ冒険。これだから人生は楽しい

 

 

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