ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

つながる ~ 玉川メノウとざくろ石

 

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 生まれ育った地元で暮らし,仕事を続けていると,新しくできた知り合いが旧知の人の係累であったり,昔の同級生が仕事相手として現れたりと,いろいろ冷や汗をかくことがあります。世の中つながっているというか,まあ,悪いことはできないなあと。

 


 さて。

 


 パンニングざくろを拾い出す,これはもう私の宿業となりつつあります。川を見るとガサ入れ,いやパンニングを試したくなります。そして採れた砂を持ち帰り,ピンセットで一個一個ざくろ石を拾い出す。どうやらその賭博的・宝探し的部分と,拾っている間は無心になれること,そのざくろ石が土地ごとに異なる個性を持つことへの知的興味,なんて楽しみがあって今のところ飽くことはありません。

 


 メノウ拾いはもう少し卑近なものと思います。ただひたすら拾う!集める! 男性諸氏なら理解していただけるであろうコレクションへのあくなき渇望,その衝動にただ突き動かされて拾いまくる。そんな原初的な動機ゆえ強く私の心に揺さぶりをかけてきます。最近ようやく久慈川本流のメノウについては強制が弱まり,拾ったモノを信者の皆さんのために河原に置いて来れるようになりました。替わって強くなったのが玉川メノウ。赤く美しい縞模様もさることながら,きちんと見通しを立て,作戦を練り,カンを働かせ,腕力を振るわねば手に入らないこのゲーム感覚に囚われてしまいました。なまじコツをつかんでそれなりに採れるようになったのでますますタチが悪いことになってしまった。

 


 というわけで,私の中でメノウ拾いざくろ石パンニングは同期しない,全く別の「趣味」であったはずなのです,ここまでは。

 

 

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 先日,玉川を歩いておりましたら川床に白色のメノウ脈を見つけました。ちょっと驚きました。つまりマグマ(熱水)が地層中をビキビキっと貫入したまさにその場所,ここが火山性の土地だったということになります。いえ一千万年まえは火山もあった茨城県です。そこらの時間的スパンで考えれば不思議ではない。ただこの玉川流域は地質図では堆積岩ばかりで,メノウや珪化木はもっと上流から流されて堆積したものです。ここで作られた…… こういうのを現地性というのですが,現地性のものではないと認識しておりました。だからメノウ脈というまさに生成現場があったことは私には驚きです。現場である証拠に,玉川メノウの特徴である赤い色がありません。赤い着色は流されたあとに地層中での化学反応によって成されるのです。玉川の無色メノウ=玉髄には現地性のものも含まれていたんですね。


 しかし。問題はソコではないのだ。玉川の玉髄に興味はないけどとりあえず記録に,と撮った上記の写真の,右上の部分をよくご覧ください。

 

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 これ。


 こ,これ,この色このカタチ,こ,こ,これはざくろではないかあ!


 家に帰って,この写真をモニターの大画面に映して初めて気付いたんです。まさかメノウとざくろ石がワンフレームに収まるなんて予想もしてなかったから現地では見落としていました。綾瀬はるかさんを写したら広瀬すずちゃんまで写ってた,というところでしょうか。すいません例えが無茶苦茶です。かなり混乱しています。私の中では決して一緒になるはずのないものが並んでVサインしてます。


 これに気付いたのが日曜の晩。すぐにでも現地に飛びたいところでしたが,年度初めで多忙を極めました。長い一週間だった。きょう土曜日,満を持して,パンニング皿を持って玉川へという新パターンに突入です。


 すぐあの場所は見つけました。赤い粒もあります。パン皿回す前にざくろ石が視認できるなんて初めてです。さっそくメノウの周囲の泥をパン皿に取って,くるくる回してみると……

 

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            どーん。

 

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 赤い,赤いぞ。なんなんだこの密度は。

 

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 ハッブル宇宙望遠鏡の写真で球状星団の中心部を拡大撮影したものがあって,無数の赤色巨星が画面いっぱいに光ってました。そんな感じでざくろ石がすごい密度です。何より,これまで見たどの産地のざくろ石より色が美しい。一個一個が夜空に輝くアンタレスガーネット・スターのようです。しかも多面体の結晶形がいくつも見えます。これはちょっと大変なことになったぞ。

 

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 砂鉄の含有量が多いようなので

 

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 磁石で選別。

 

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 ざくろ石の結晶のほかに,石英輝石・角閃石,緑色のかんらん石も見えます。これは大子の沢と同じ,玄武岩由来のものではあるまいか。さあピンセットでつまみだそう。

 

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 どおおおん。ああなんて色だ。阿武隈山地結晶片岩,大子の玄武岩,筑波の花崗岩,そのどこのざくろ石と比べても美しい。これぞガーネット。

 

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 しかも大きく端正な結晶が含まれてます。

 

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 他の鉱物もいろいろ。これはかんらん石の結晶かな。

 

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 輝石・角閃石に高温石英

 

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 真っ黒だけど形は高温石英。本当はなんだろう。


 すごいざくろ石産地を見つけてしまった。惜しむらくは永続性がないことで,たぶん石英脈が形成されたときにその周囲に局所的に結晶したものでしょう。周囲に同じものはなかったし,玉川本流の砂泥でパンニングしてもざくろ石は出ませんでした。いまだけ,ここだけの宝の山。これから川の水位が上がるので,しばらくは確認もできなくなりますけど。まずは神さまに感謝して,この収穫を喜びたいと思います。

 

 

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 で,せっかく玉川に来たので。

 

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 メノウ拾いに明け暮れた冬でしたが,それなりにわかるものがわかってきました。山を越しかけているというか,あと少しでもうひとつ上の領域に到達できそうな,そんな感覚です。ざくろ石も含め,誰かにこれを一つの 模倣子ミームとして継承させたい欲望に駆られています。

 

 

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 川底からカエルを掘り出してしまいました。おなかを卵でぱんぱんにしたトウキョウダルマガエルの雌です。これもまた命を継承させるその担い手。茨城の田んぼにカエルの恋の歌が満ちるまであと少しです。春なんだなあ。

 

 

 

 

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