あえて休日に早起きしたのは,この冬初めて霜柱が立った寒い朝でありました。
今年は我が王国のキンカンが豊作で,そろそろ色付いてきました。放って置けば鳥どものいいエサ場になってしまうことは既知の通り,防鳥ネットを展開せねば。
そう決心して庭に出てみると,キンカンからわっと緑色の小鳥の大群が飛び出しました。うわあ,もう来ている。
鳥はメジロでした。鋭いくちばしでキンカンを一突き,穴をあけて汁をすすります。もちろん実は台無し。腹立たしいことに一突きしたら別の実へ,次から次へと穴を開けていくので少数でも被害は甚大です。それがお誘いあわせのうえ団体でご来場。メジロってこんな大きな群れになるんだ,ああ腹立たしい。
人が来ても少し場所を移すだけで視界外に逃げないのがまた腹立たしい。ハナミズキの枝に隠れて,今度は数羽ずつで庭の隅の,ああなんてことだ私が愛するウメモドキに飛来するではありませんか。
昨日までたわわに実って冬の日差しに輝いていた深紅の珠が,次々とこの悪鬼の斬撃にぼろぼろ落果していきます。やめろ,やめてくれ。
突かれた実はもちろん,その周囲のものも枝から振り落とされます。せわしなく動き回る緑の小鬼どもはまた奢侈はなはだしい放蕩者でもあって,自分が落とした実には見向きもしません。駈け寄れば逃げますが,私の手の届かない枝先に待機してすぐ戻ってきます。ぐぬぬぬ,散弾銃はないのか。
鳥は可愛がらねばいけませんか。私は,白鳥が飛来する池や珍しいカモが越冬する田んぼの探鳥地で,専横に振る舞い一般人に指図する野鳥の会の人間に何度か不快な言動をされました。その経験から鳥を見る人,引いては鳥そのものが好きではありません。いえ,そんな経験は脇においても,とにかく鳥が好きになれないんです。
その理由の一つがこの眼。小さく愛らしいと言われるメジロでさえのこの眼。うろこに囲まれて一切の感情を宿さぬこの目が,私には不気味で仕方ありません。読者の皆さまはご存じのように,私は昆虫や植物に感情移入して擬人化した表現をいたします。怒り喜び悲しみやがて迷う。昆虫の複眼にすら感情を読み取ります。ダンゴムシにも迷う心があると実験で証明した人がいて,サボテンに語りかけた時の電位変化を記録した人もいて,人以外の生物の喜怒哀楽,私だけのオカルト的感覚ではないと思う。でもそんな私でも,この鳥の眼の不気味さ,無感情さは受け入れ難い。たぶん,2億年前の我らのご先祖が恐竜にこの眼で巣穴を覗きこまれたその恐怖を憶えているのだと思います。
そう,鳥類は恐竜の一族,その生き残りです。獣脚類というティラノサウルスとかヴェロキラプトルとかの凶悪なヤツらを含むグループの一員なんです。鳥の祖先は雑食だという説もありますが根は同じ。今でも多くの陸上生態系の食物連鎖の最上位にいるのは鳥類です。最新の研究では,鳥と恐竜を明確に分けることはできないという。こんな生き物と仲良くするなんてわしにはできんぞう。
…… あくまで個人的見解です。要するに愛する赤い実や好物のキンカンを横取りする害獣にアタマにきてるだけなんで,まあ放っておいてください。鳥類愛護は大事です。
で,キンカンにネットを掛ける間に
ウメモドキはあらかた全滅しました,わずか一日で。…… 毎年赤い実が無くなるのはもっと時間を掛けてじわじわと起こる自然の摂理みたいに思っていたのですが,そうか一日で滅んでいたのか。…… おのれえええええ。
実の消えたウメモドキの枝では,例のルビーロウカイガラムシが目立つようになっていました。赤い隠れ蓑の陰で安全に越冬するはずが,カイガラムシにもとばっちりになってしまいましたね。もちろん駆除です。
以前記事にした,遥かインドからやってきた害虫です。温暖化で水戸でも越冬できるようになりました。天敵の寄生蜂には越冬できない温度のようで,この絶妙な温度帯…… トワイライトゾーンとでも呼びましょうか,これを利用して我が王国で木を弱らせるほどに繁殖します。これも情けは無用です。
バリヤー展開完了。これで少なくともヒヨドリやムクドリは防げるでしょう。メジロなら中に入り込むことができそうですが,あの毛玉みたいな生き物にそこまでの勇気があるものでしょうか。また鳥と知恵比べの冬が来ました。
↓ 過去記事です,ご覧くださいませ。
続・オオスカシバとクチナシの受難 カイガラムシでロウソクを作る - ジノ。
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