ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

書斎籠城と「私の部屋」

 

 我が城は三畳なりき
 狭にして褸なり
 狭なれど宇宙を想うに足り
 褸にして美神は舞い来たれり


 20 年前に家を建てたとき、とにかく家族第一に知恵を巡らせました。部屋数、台所の配置、階段の位置、収納。資金はぜんぶ私持ちで、家そのものは家人の望むままに。ただ一つ、三畳の書斎を加えるのが条件でした。贅沢な、と思われるかもしれませんが、多分に発達障害のケがある私にはこうしたパーソナル・スペースが絶対に必要だったのです。おかげさまでそれなりに心穏やかな日々を送ることができました。狭いがゆえに手の届く範囲にすべての物があります。私の人生や思考、来し方行く末を知りたければこの部屋にある物を精査すれば済んでしまいます。


 エジプトの 18 歳の青年の部屋を写した写真があります。写真家が世界各地の若者に声をかけ、天井に近い位置から広角レンズでその人の部屋のたたずまいを写した写真集の1ページです。部屋の主を中心に据えて高所から俯瞰することで、その人の人生やその国の社会制度まで写し取ろうという意欲的な企画。シナイ山のふもとに住むそのエジプト青年は、砂漠の民ベドウィンの民族衣装に身を包む以外はごく普通の中東の若者に見えます。でも知性溢れるその目・表情からは強い使命感がにじみます。実は彼は伝統医療の薬草を扱う医師なんです。その六畳ほどの部屋は彼の仕事場であり、寝起きする部屋です。壁の二面は薬草が詰まった小袋が棚にずらりと並び、マットの敷き詰められた床にあるのはちゃぶ台一つ、ノートパソコンが載ってます。自分の天命に何の疑問もありません。この部屋に人生を刻み、記憶を重ねていくことでしょう。ああこれぞマイ・ルーム。


 さて読者の皆さまにはそんな部屋、もしくはスペースがおありでしょうか。ここは自分のテリトリーと言える場所が。そんな「私の部屋」とは、その人の人生の大部分を象徴している場所です。寝て、くつろいで、働いて、何より夢を見る場所だから。言うなれば「プライベートの博物館」なんです。

 


 また前フリが長かった。今回はその書斎でのお話です。


 早起きの私は、家人がまだ寝ているので寝室のカーテンはそのままに、書斎に行ってブラインドを上げます。これがその朝に見る最初の空。

 


 ある朝それが真っ赤でした。低く垂れこめた雲が、見渡す限り一様に赤く光っています。どういう気象条件でそうなったのかわかりません。やがて普通の灰色の雲になりました。

 

 その日はよっぽど特異な天候だったのでしょう、夜には水戸では珍しく大雷雨になりました。雷鳴轟き、大豪雨は1時間に 50 ミリに達しました。何度か短い停電があったので部屋の明かりも消して

 


 「難破船の船長」モード発動。あああ楽しい。楽しいぞお。

 


 外では電光が走りまくって気分がアガることったら。書斎暮らしの楽しさ全開の一日でした。


 24 時間アタマの中で何かがダンスしている人間、それがワタシ。よく社会人をやりおおせたもんだと自分でも感心してます。そんなワタシを喜ばせる事態がまた一つ。家人がコロナの濃厚接触者になりました。


 友人と土曜日一日遊んだら、その友人が翌週コロナを発症したんです。家人にすぐ抗体検査をしろと言ったら、今の部署は自分一人で事業所全体の業務をこなしている、自分が連続して休むわけにはいかない、だから無症状のうちは検査しない、と。


 えーと。


 本人にも事業所にもいろいろとツッコみたいところですが、どうせ私の正論など聞いてはもらえないのでせめて家庭内隔離をしようということになりました。洗面所やダイニングは時間差で使い、寝室や居間は家人に明け渡して…… え?わしの方が出ていくの?

 


 おフトン持って向かった先はもちろんここ。この写真ではわかりづらいかな。

 


 こおだあ。作り付けの天板の下がボクの寝床さ これでも潜水艦のベッドよりは広いぞお。

 


 椅子を動かせば運動スペースも確保できます。

 


 おフトン広げればこう。おお、いい夢見られそう。床がほぼ隠れたけど。

 


 寝床から見上げた先に書棚。わざわざ天板の下に寝る理由がこれです。東日本大震災では台所では皿一つ割れなかったのに、書庫と書斎ではすべての本が棚板ごと落ちました。特に棚板が直撃したら無事では済まなかったと思う。だから天板さん、守ってね

 


 さあいよいよ避難生活の始まりです。…… わかってます。東日本でも、能登でも、ウクライナでも、ガザでも、命の危険に怯えながらこんな状況で寝起きした、あるいはしていることを。あくまでもこれは妄想です。妄想だから楽しめると知った上でのこと。これまでも記事にしてきたように、常に楽しみつつも次の非常事態に備えているのです、私は。

 


 狭にして褸なれども、あらゆる次元のあらゆる状況に身を置き想い馳せることができる。それこそが私の部屋、私の書斎です。

 


 ちなみにこれを書いている時点では、家人にも私にもコロナ症状は出ておりません。夜はぐっすり寝ております。夜中にトイレ行くときも家人に気を遣わないで済むっていいなあ、うふふふ。

 

 

 

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