ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

川はじめ石はじめ

 

 ひとり森の一軒家に暮らし、多くの人が待つ職場に通う。


 思い描く理想の職業生活はそんなものでした。実際に仕事では数百人を前にすることもありましたが、ジョブ・モードに切り替えているのでむしろ楽しんで仕事をしておりました。でも私生活はとにかく静かに過ごしたい。自然の音しか聞こえない森で、ただ心を澄ましてとりとめのないことを考えていたい。冬空にたたずむ一本のぶなの木のように。もちろん現実は町場暮らしで家庭生活があって家族とのやりとりがありましたから静かとはいかず、ただ書斎にバリヤーを張って籠ることで心の平穏を保ちました。家に「仲間」とやらが出入りする私と対極のライフスタイルの方々を、私はもう尊敬すらいたします。

 


 こんな奴ですから、新年も年神さまをお迎えして近所の神社に詣でて、それ以外は日常でいいんじゃないかと思っています。テレビも年末年始のかまびすしいバラエティ番組は見るに堪えず、関東キー局で最も平常心テレ東をつけっぱなしにして。


 そんな私の家ですが、年末は家人の指図で新年準備、元日は十数人が集う賑やかな新年会です。たぶん私以外の全員が楽しみにしているうえに家人がコミュ力高いわ気が利くわお世話大好きだわで歓待するので、喧噪の中私は心を無にしてただ座っています。忍法死んだふりとも申します。死んだふりなのにそれだけで消耗してます。


 以上前置きでした。元日の晩、ストレスからくるめまい、いわゆるメニエール病が久しぶりに出ました。翌二日、キラキラな目でつくばに買い物に行こうという家人を他の家族を同行させて送り出し、私はひとりフィールドに出ます。フィールドに避難するというのが正しい。頼む息継ぎさせてくれ。

 


 ぷはーっとここは久慈川、超・渇水期にしか歩けない「中洲まで川の真ん中歩き」です。ああ楽しい。良く晴れて、風もそれほど冷たくはありません。

 


 久慈川の水は化学的生物学的に決してきれいではないのだけど、とにかく澄んでるだけで気分がよろしい。

 


 メノウが堆積するのは久慈川でもごく限られた河原で、そういう場所は石の動かなかった今年は採り尽されてます。穴場狙いのつもりで来ましたが、この中洲は以前に来た時も何も拾えなかった場所なんだよなあ。まあおかしな期待はしないように、と歩くと小さな珪化木のカケラがありました。

 


 中洲に上陸して…… ひええ、石を掻いた跡がある。もう誰かが入っているう。いつどこから入ったんだろう。ここは流れが速く、しかもずっと増水してたのに。こんな感じで、最近の久慈川は隈なく人跡が付けられてます。そういえば年末の頃、さる河原でメノウを探す人を遠目に見かけたのですが、これがただ者じゃなかった。学歴高そうな初老の紳士なのですが、ウエーダーと呼ばれる胸までの胴長を着けて、その手にはカッチャという長柄の先に小さな三角の刃が付いた鍬くわを持っておられました。砂金採りの人のいでたちです。そういえば久慈川で砂金採りをするお医者さんのグループがあったけど、そういうスジの方だったかも知れません。かなわんなあ。

 


 それでも小さな玉髄のかけらを1個。持ち帰るほどではないけど。

 


 まあ、フィールドを歩くことが目的だったのでこれで善しとします。

 

 

 これで終わるつもりでしたが、冬枯れの河原を見るうちにふと支流の山田川の河原が思い浮かびました。21 年の 12 月に行って記事にして以来現場を見ていません。自分のフィールドの現況確認は、ナチュラリストの重要な職務です。

 


 あああ、少雨で大水が出なかった証左、河原が草ぼうぼう。水は深く、このアシやらセンダングサやらの密林を突破しなければ目的の河原に行けなくなってました。軽い気持ちで来たのがエラいことになってしまった。

 


 大ナタを車に置いてきたことを後悔することしきり、大汗かいて全身に枯れ葉と草の実を引っ付けて、ようやく石河原に到着です。ぜーはーぜーはー。草の繁茂と増水と、そもそもマイナーな場所なのでたぶん夏以降どなたも入ってません。さっそくメノウのひとかけ。

 


 その後次々と。決して上物とは言えない玉髄ばかりですが、それすら拾えない今の久慈川本流と比べれば楽しい楽しい。

 


 黒い火山岩や堆積岩の多い本流と違って白い河原。山田川流域は花崗岩の露頭が多いのです。

 


 持ち帰りはこの仏頭構造の一部らしい1個だけにします。

 


 このあと富岡橋の様子を見て帰ったのですが、帰路ふと、めまいが消えていることに気付きました。久慈川の空気を吸ったのが良かったか、汗をかいたのが奏功したか。何にせよ私にはこういう生活が必要なんだなあ。つい先日もお勤めの誘いがあったのを断りました。これからも許される限りこうして生きて行こう。そんな新年です。

 

 

 

 

↓ 前回の山田川

久慈川真ん中へん。

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