3月 20 日・26 日の記事でご紹介したメノウの、その探索行レポです。
3月も半ばの頃、呼ばれました。久しぶり、沢に拾いに来いと。
この呼ばれるという感覚をご理解いただくのは至難であります。ただ単なる内的欲求か、本当にオカルト的なものか。いずれにせよ、ご託宣には従います。これまでも私の奇跡的なフィールド運を支えてきたものですから。それになにより、うふふうふふうふふふふ

長靴を新調したのだ。前から欲しかったアトム・グリーンマスター。ウェットスーツみたいな素材で、軽くて、フィット感があって、なによりかっこいい。ホームセンターの長靴より二、三千円高いのだけど、かっこいい私をフィールドで支えるのはキミしかいない、うふふうふうふ。さあ新長靴よデビュー戦だぞ。
私の言う「メノウ拾いの沢」は茨城県北部、久慈川東岸の溶岩と火山角礫岩が積み重なった地域に散在しています。広大な岩塊のどこにメノウの脈があるか。知られた場所はだいたい採り尽されています。新たな鉱脈を探してあちこちをさ迷い歩く、これぞ冒険。ジジイだけど、冒険に年齢制限はないのです。

茨城県の自慢そのいち、道路総延長北海道に次いで全国2位。どこまでも道が整備されてます。そもそも険しい山岳のない茨城には人の住まなかった土地などないのだ。風と共に突き進むのだ。

そして道と風の尽きるところ、こういう谷が私を待ってます。勇躍分け入ってお宝を探すのだ。…… とはいえ何も戦果のないことがほとんど。こうしてハズレを引きながら真理に近づく、こういう過程が楽しいのです。

そうしてたどり着いたのが先の記事でご紹介した谷でした。




幸運にもここはまさに鉱脈の真上、大きな玉髄が転がってました。現場の様子や持ち帰ったメノウの蛍光写真はもうお見せしたので、くどくどは申しません。

途中、沢を切るような小滝。固そうな岩の、この壁は溶岩の固まったものかもしれない。この地域で滝といえば袋田の滝、あの棚段になっている部分が溶岩です。固い溶岩と比較的もろい火山角礫岩が交互に重なったところを川が侵食してあの段々を造りました。

ちなみにこの滝の周辺にもメノウ脈があります。
この沢はこれで切り上げました。河岸を変えて探索を続けていると

おおおメノウ脈。落ち葉に隠れていました。

周囲からはカチ割られたかけら。ここは誰かが先に到達した露頭です。

わあい昇華したような仏頭。これはお持ち帰りです。

これで今日の運は使い切りました。あとはガツガツせずに行きましょう、というので古いメノウ鉱山跡へ行ったのです。

道に転がるズリ石にもブツが。まあ捨てられるくらいですからそれほどの質でもありません。この地の風景の一部ということで。

さて次のここは何度目か、私には既知の場所です。とても良い「気」が流れる谷。

水面の美しいことよ。

メノウがありました。

それは沢の合流点。私には未踏の沢です。遡上したかったのですが今日は大ナタの装備なし。落枝の束に阻まれて断念しました。

水底に白い鉱脈。「脈」は溶岩や火山角礫岩の中に一直線に入ります。

まるで切り通した掘割のような流れ。でも天然のものです。

「脈」に沿って沢が流れる場所でした。

その流れの中にサンショウウオのご遺体を見つけてびっくり。どうやらトウキョウサンショウウオのオスです。ちょうど産卵期、メスをめぐる戦いに敗れたか。本来水たまりなどの止水に集まるものなので、もともとこの流れの中で亡くなったわけではありません。この上流に廃棄された水田があります。そこが繁殖地か。

村は廃村になり、先祖が切り拓いた谷津田は湿原になり果てる。でこれはコゴミという山菜名で知られるクサソテツの、その胞子葉(非食用)です。この湿原に大繁殖している様子がわかります。かつて実った稲穂はなく、代わって生えたコゴミの新芽を採る人ももういません。

そしてまた新たな沢にたどり着く。今日は呼ばれるままに足が進みます。

ふと見まわした時、脳がピクリと反応しました。意識しないままに何かが見えている。何だろう。以前にヤンマタケを視野に捉えた時も、何が見えているのかわからないままに脳が反応した、あの時と同じ「生物屋の眼」です。さてこの視界内、何が見えてると思いますか。

これでした。こんなものにも反応するか。日陰でいじけた、貧相なこれはミツマタです。製紙原料として中国から移入され、茨城ではあちこちに野生化してます。元気なれば名の通り三叉分枝しながら丸い樹形になるのですが、これはどうやら年に数センチ、まっすぐに伸びるので精いっぱいのようです。必死に生きるその切なさよ。

この沢では礫を巻き込んで固化した玉髄と

赤いカーネリアンが収穫物。どちらも置いてきました。今日はもうおなか一杯です。

沢の石垣とコンクリの基盤、鋼管のトンネル。かつてここに人の生活があった名残りです。軽トラを 20 分も走らせれば人里に出られる場所ですが、それでも人は去っていく。

そして水は澄んでいく。

最後に、奥久慈に来るといつも寄る展望台からの眺めを。と言っても冬枯れの風景、遠くに栃木の山々。

那須のお山。

関東平野。

花粉で膨らんだ雄花が真っ赤なスギ林と、黄色いダンコウバイの花。春きざす3月のことでした。
↓ いろんなものに呼ばれます。
↓ 生物屋の眼。