ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

GO! GO! つくば道

 

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 以前の記事で、評論家の川本三郎さんの話を書きました。この老評論家には年に一度ふらーっと人知れず訪れて、何をするというでもなくぶらついて夕方帰途に就くという場所がいくつかあって、大子の町がその一つなのだと。


 私にもたくさんあります。と言ってもフィールドのことで、あの生物は今年も出てるかなあと気になって訪れるようなもの。理由があるし、やることもある。川本さんのように、本当にただ訪れてただ帰る、そんな場所があったかな。


 実はあるんです。本当にただ行けば満足する魂の故郷みたいな場所が。

 

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 それがここ、筑波山

 

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 厳密にはこれ。筑波山神社表参道、通称「つくば道」。

 

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 筑波山のふもとから神社まで一気に直登する道です。ひたすら一直線に240メートルの標高差を詰める道です。


 いつもふもとの神郡かんごおりという集落にある市営駐車場に車を止めて、ただ登って、下りるだけ。何があるというわけでもないのですが、不思議と心が和むのです。

 

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 これが神郡の街並み。つくば道はこの先北条の町が起点で、神郡は中継の宿場として栄えました。

 

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 では筑波山を目指しててくてくと。

 

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 百年前の看板。「花柳病」って何だか知ってる?どうぞググってくださいませ。今は静かなこの道の、かつての賑わいが伝わります。残念ながらこの看板の建物、今はありません。

 

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 最初はまだ緩い傾斜。

 

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 だんだん登りになり

 

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 地区の集会所みたいなの。

 

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 でも敷地内の大岩や石碑を見ると、もっと深い歴史がありそうです。

 

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 遥か先史時代から人々と共にあり、古代には歌垣が行われていたというお山です。どんないわれがあるのやら。

 

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 ずんずん登っていくのだ。不思議なことに、私がここで心を動かされるのは登るときだけ。下りには何の印象もありません。体への負荷と心の動き。きっと関連があります。

 

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 先の記事で、風景の三段階のお話をしました。①そこを歩きたい風景、②そこに住みたい風景、③そこで死にたい風景。…… ここはそう、登るたびに私が住みたくなる場所なんです。いえ、旅館やホテルなら上にいくらでもあります。そうではなく、この土地の住民として暮らしたいのです。

 

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 こんなお宅に。

 

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 こんなお宅も。

 

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 ここは筑波山の南斜面。家々はすべて南向き。家の背後は石垣で隣家に接します。

 

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  キャットウォークとしか言いようのない通路が縦横に走り、家々の間を澄んだ水が流れます。ああ、暮らしたい。

 

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 子供ならば本当に猫のように駆け回り、隠れたり現れたりできるでしょう。いつもここを登りながら、小学生が主役の物語を頭に描きます。

 

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 清冽な流れはすべて筑波山の湧き水です。

 

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 途中にある「一の鳥居」、別名「六丁目の鳥居」。じつはここにも市営の駐車場があります。でも車で来てはつまらない。

 

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 水仙の花が咲いてました。

 

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 墓地を見守る石仏。人の暮らしの傍らに立ち続けています。

 

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 マンホールのふた。そうかここは科学の町つくば市の一部であった。

 

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 家々の庭、至る所に夏みかんの木。筑波山の中腹は冬に「逆転層」ができやすく、あまり寒くなりません。柑橘類が実る桃源郷です。

 

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 こんなお宅もありました。

 

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 さらに登ると

 

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 分岐点に達します。右がつくば道の本道。

 

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 驚くべしつくば道、なんと県道なんです。茨城県道139号筑波山公園線。もっとも、指定は舗装された昭和40年代以降のことでしょう。大昔から何らかの形であった道だと思います。徳川家康が江戸の鬼門の護りとしてあがめ、家光が神社(当時はお寺)の堂舎を一新。その資材運搬路として北条の町から一直線に整備され、それがそのまま筑波山への参詣道となりました。舗装される以前はずっと石段だったとか。そのままにしておけばすごい観光資源になったろうけど、車が入れないと沿道の人々の生活が成り立たない。難しいものです。

 

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 で、右の本道を行くと

 

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 昔のままの建物とか

 

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 情緒たっぷりの旧郵便局

       

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  最後は昔のままの石段を経て

 

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            つくば道起点

 

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 筑波山神社に至ります。

 

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 ちなみに途中にあるホテルの裏階段。こういうの大好き。古い迷宮化した旅館なんかに泊まると、この手の場所を見つけては歩き回ります。

 

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 さて先ほどの分岐に戻り、左の道にも行ってみます。急坂です。

 

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 この道!

 

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 水道工事のアスファルトが興醒めだけど、いい道でしょう。

 

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 正岡子規の句碑「赤とんぼ筑波に雲もなかりけり」

 

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 春ならば緑のトンネルになります。

 

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 そして行き着くのは石段。

 

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 小学校です。もう廃校になってますけど。


 むかし、台湾の九份きゅうふんという所に行ったとき。そうあの「千と千尋の神隠し」の町のモデルという、石段を飲み込むような繁華街のある急坂の観光地ですが、あの石段の一番上には何があるのだろうとずっと登って行きました。どこまでもどこまでも登って行き着いた先にあったのは…… 小学校でした。台湾て、なんて素敵なところかと思いました。もちろん、ここ筑波にも同じ感慨を持ちます。

 

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 職員室と

 

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 教室棟

 

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 子供たちがいつでも屋上に出られるような学校であったことを願います。

 

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 立派な木製の体育館

 

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 きっと、廃校になったのは竣工からそう遠いことではなかったろうと思います。

 

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 振り返れば筑波山に見守られ

 

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 上からも下からもこんなキャットウォークが学校につながっています。筑波山じゅうの子供たちが通って来ていたんだろうなあ。いいなあ。私もこんな小学校に通いたかったなあ。

 

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      その子供たちは、毎日こんな風景を見ていました

 

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 ひたすら登りつつ、時を行き来しながら遥かな人々の暮らしを想い描く。つくば道、私には他に代えがたい夢幻郷です。

 

 

↓ 関連記事。川本三郎さんのこと。

茨城県北芸術祭5 最終回 大子からガルパン聖地を経て袋田の滝へ - ジノ。

 

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