ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

雨のツクツク森

 

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 一時涼しくなったのが,昨日は秋雨前線が北上して南風の猛暑日。今日も朝方は少し汗ばんだのですが土砂降りの雨が降ってきて,ああこれが前線通過かと思いました。そして雨が上がると寒いほどの北西風。季節が分秒で変わるのを面白く見てました。雲が切れていきます。


 空が天啓のように明るくなったのでフィールドに出かけてみます。心と時間に余裕ができて,また今の仕事の先が見えてきたので,人生を見返すように過去のフィールド再訪を続けてます。今日はツクツク森。そう以前の記事で「ツクツクボウシ冬虫夏草に片っ端から食べられてる森」と紹介した場所です。水戸市内なのですが記事を書いてから3年間行ってません。無事かどうか,祈るような気持ちで訪れました。

 

 

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 小さな鎮守の杜に続く獣道だったのが,すっかり整備されて裏参道になってました。森が皆伐されてないだけで良しとしましょう。さあ久しぶり,完全武装で森に潜ります。

 

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 夕刻のように暗く雨のしずくに満ち満ちた森です。今日の目的はまず冬虫夏草。複数種見つけられればいいなあとクモの巣を払って身を沈めて歩くと,これは確実な線でしたがツクツクボウシタケがありました。ああ滅んでなかったと,それだけで嬉しくなります。

 

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 ある生物が確実に見られる場所というのは自家薬籠中というか,指とか心臓とかと同じ「私」の一部なんです。それが失われれば身を切られる感覚があります。最近そういうことが増えました。

 

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 掘ってみました。哀れツクツクボウシの幼虫がキノコに食われた姿を現します。

 

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 落ち葉をのけたらすぐ横にもう一本成長しかけのがいました。

 

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 発生期から少し遅れたので数は少ないのですが,相変わらずここはツクツクボウシタケの森です。安堵しました。

 

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 今日はツクツクだけが目的ではないので,いつもより範囲を広げて歩きました。見つけたのがこれ,ガヤドリタケ。まだ成熟してませんが,ここでは初めて見ます。空中発生する冬虫夏草です。

 

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 林床が白く光って見えました。冬虫夏草じゃないけどコウモリタケです。マイタケに似てますが食べられません。針葉樹の森によくあるキノコです。そうここは針葉樹が優先する森。不思議なのは,普通針葉樹の森は生物相が貧弱です。でもここはいろいろな,ここだけのものが見られます。自然は教科書通りじゃない。

 

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 さらに深く,孤独な深海潜航艇のように森の底に潜ります。すると出会ったのが廃道。実はこの道,国土地理院の地図にはしっかり書き込んであるのですが実際にはもう20年以上使われず,荒れ放題です。最近の地理院の地図は,山中の道に関しては本当に当てになりません。

 

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 足元に赤い実をつけた小さな草本がありました。実がなければテイカカズラの実生と思い込んで見過ごしていたでしょう。ツルアリドオシです。

 

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 暗い森の底で人知れず雨に濡れる美しい…… でもヘソが二つある変な実。アカネ科の植物ですが,二つ一組の花が花後に合着して一つの実を作ります。なんでそんなひと手間多いことをするのか,ご本人に聞いてみたい気がします。いや昔からこうだしーとか答えそう。

 

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 木が倒れ,そこに日が射すことで植物が繁茂する「ギャップ」です。道は完全に遮断されました。…… 足元に動く影が。

 

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 マムシでした。ヒトに驚き,草むらに逃げ込んだところで退路に窮し,ガラガラヘビみたいに尾を震わせて威嚇してます。小さくて臆病なヘビです。子供のころから馴染み過ぎてさっぱり怖くないのが自分でも問題だとは思ってます。いずれにせよ殺したりいじめたりする気はなし,怯えさせるのも本意ではありません。そのまま後退します。

 

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 道を外れ獣道を下っていくと沢に出ました。今朝の雨で濁ってます。パンニングしたくなったけどさすがにパン皿は持ってきてない。「映像研に手を出すな!」の浅草みどりみたいに日常品からサバイバル用品まで一切合切ザックに入れて持ち歩くの,私には同類として理解できます。だってこういう時ああっアレを持ってきてればって本当に悔しいもの。

 

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 特に樹の下闇の濃いところ,藪の深い所にその名もヤブランが貧相に咲いていました。

 

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 根は麦門冬ばくもんどうという生薬なのですが,それにしてもよくこんな場所に根付いたものです。花は虫媒花,でもこんなところのこんな花に訪れてくれる虫などいるのだろうか。

 

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 …… ヤブランにすれば余計なお世話ですね。彼らは何百万年もこうやって生を繋いできました。ヒトより長い時間を生き抜いてきました。心配には及ばないのでしょう。

 

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 遠くで昼のチャイムが鳴ってます。ですが雲が濃くなっているのでしょう,森の底はいよいよ暗くなってきました。視界が危うくなってきたので今日はここまで。ツクツクボウシタケの森はまるで箱舟のように,今も多くの生き物を育んでいます。

 

 

 

 

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