ジノ。

愛と青空の日々,ときどき【虫】

高温石英で高校生を鵜飼いする

 

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 子分の高校生たちが集まる日でしたが,その準備をするはずだったイベントが中止になってしまいヒマそうにしてます。全員男子です。男ばかりでグダグダと,核戦争後のシェルターの中みたいな虚脱感,死んだような目をしてスマホ片手にただ時間の過ぎるのを待ってます。何とかせねば。

 

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 そこで取り置いていた日立・初崎海岸の砂を持ち出します。以前,貧乏人根性丸出しで大量に採ったのがあって,処理…… つまり高温石英やシーグラスをつまみだすのが終わってません。この高校生どもを使って一気にこの砂山を片付けよう。まるで鵜飼いのように手を汚さず仕事を片付けよう。わしってアタマいいー! ほれ高校生,お前らはじゃあ,働けい。

 

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 最初に高温石英やシーグラスを見せてほーらキレイだろうと誘い込んで,ピンセットとシャーレを渡します。バットに砂をぶちまけます。待て待て待て,よーし,レディ・ゴー!


 なんかすごく食いつきが良くて,目を輝かせたかと思うとわーっとバットに群がって砂山をほじくり始めます。こんな地味でせせこましい作業です,当然嫌がるかと思っていたのですごく意外でした。みるみるシャーレが銀や青の小粒に満たされていきます。へっへっへ,うまくいったぜ。見たかこの人心掌握術。

 

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 いつもは賑やかな高校生たちが,せっせと砂糖粒を運ぶアリのように休まず手を動かしています。ピンセットを持つのが嬉しいのかもしれないし,何より科学っぽい作業ですから。

 

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 私がざくろ石や高温石英の採取でやっているこの「砂粒つまみ」,コツがわかれば単純作業です。考えなくても手が動きます。頭を使いません。いわゆる無心とか頭が空っぽとかいう状態ですが,それでも人間の脳は摂取した栄養と酸素の4割を消費し続けています。何かは考えているんです。昨日のこと,明日のこと,今夜のごはん,家族,友人,夢。私はよく次のブログ記事のことなんかをぼーっと考えてます。こういう時にいいアイデアが浮かびます。トランス状態とまでは言いませんが,忘我の刻,本当に自由な思考ができる時間です。…… 高校生たちは何を考えているのだろう。

 

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 さて高校生らの手元にあるシャーレが透明な粒でいっぱいになってきました。しめしめこれで楽して高温石英とシーグラスをゲットだぜ,とほくそ笑んでいたら一人が


「これ持って帰っていいですか?」

「俺も」
「俺も」

 

 

 


  しまったああ!


 なんでこれを予測できなかったんだ。当然そう思うだろ。ピンセットでつまんだ瞬間から,それは自分のものなのだ。鵜飼いのウが獲った魚を全部自分の腹に納める権利を主張し始めた。なんて当たり前のことなんだろう。搾取されていたプロレタリアートが目覚めちゃった場面に出くわしてしまいました。

 

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 仕方なくガラスのサンプルびんを1本ずつ渡し好きにせよと。わーっという感じで石英やらガラスやらをびんに収めると,高校生たちは喜んで帰っていきました。あとにはいくらも残らなかった。鵜飼い大失敗。


 あはははは。自分の浅慮が恥ずかしい。人をヒトではなく自分の思い通りに働くウだと思っていたあたりが恥ずかしい。いい大学を出て最初から幹部待遇で組織に入った人は,きっと最初から最後まで働くヒトをそう見ているのでしょうね。私はそんな偉くないけど,年齢的に「下」の人が増えました。気をつけねば。


 ちなみに鵜飼いの鵜匠にとってウは「家族」の扱いだそうです。1羽1羽の健康状態まで把握し,獲った魚もアユだけは人間,それ以外の小魚はウの取り分とされてます。互いの信頼関係で成り立っているのです。


 さて高校生たち,今日のことは一つ思い出になったかな。文系の子も,理系でも物理選択の子なんかは,もう一生シャーレやピンセットを手にすることはないでしょう。石英やガラスをつまみながら考えたことを,手許に残った銀の粒を見るたびに思い出してくれれば私も存在意義があろうかというものです。皆に幸あれ。

 

 

 

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